人魚の誤算(意味が分かると怖い話)

 両想いにならないと泡となって消えてしまうという契約を交わしてしまった人魚。それは、大好きな男性がいたからでした。その男性は人魚が住む海によく来ていたサーファーで、とても美しい男性でした。人魚はその人のことが好きになり、遠くから見守っていました。


「人間になりたいの」

 魔女に相談した人魚は特別な薬をもらいます。この薬を飲むと人間にはなれますが、声が出ず足も激痛が走るということでした。しかし、彼が彼女だけを想って両思いになれば、声は徐々に出るようになり、足の痛みもなくなると言われたのです。しかし、片思いのまま失恋すれば泡となって消えるという恐ろしい薬です。下半身が魚なのに、人間の足に変化させることはとても体に負担がかかるとのことでした。


 紫色の気味の悪い色合いの薬を一気に飲み干します。人魚は目当ての男性が毎朝来る場所で待っていました。足がついたとはいえ、まだうまく立てないし、声が出ない状態でしたが、男性は倒れている元人魚に気づきました。


「どうしたの?」

 元人魚は口を動かしますが声が出ません。

 男性は気の毒に思い、自分の家に連れて行きました。男性の家は大きな家でお金持ちの息子でした。一人くらい住まわせても構わないよ。と言って、男性は快く自宅に招き入れます。男性は元人魚をとても気に入り、優しくしてくれました。食べ物や着るものに困ることなく生活もできました。しかし、まだ声がでません。元人魚はそこでたくさんの同世代の女性と友達になりました。彼女たちは仲間だったのです。


★解説

 生活に困らず愛されているのにどうして人魚は声が出ないのでしょうか? 実は、その男性はたくさんの女性を豪邸に招いて共同生活を送らせていたのです。だから、両想いではあるけれど、一人だけを愛されていないということで泡にもならず声もでないという状態を保っているみたいなのです。

 愛する形は人それぞれなのかもしれないですね。


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