『終』第25話【求めていた『最高の青春』】
この物語は主人公、
彼には最初から
そんな彼が最期に見たかったものとは……
「二人ともごめん!」
草むらの上で陸と結香を前にして、正座をしながら謝る文人と茜。
「もう~人騒がせなんだから。ほら!新しい制服が汚れるから早く立って、立って」
結香の優しさもあり文人と茜は立ち上がった。
「そういえば茜。あれはどういうことだったんだよ?突然電話掛かってきて『文人が~!』って言ってるかと思ったら突然電話切って。そのあと全く電話は繋がらないし、メッセージも返さないしさぁ……」
「いや~あれはだって文人が悪いんだよ。顔色が変わったと思ったら突然スマホ取り上げて電源切っちゃうし……」
「なっ!バカッ……!」
「あっ……」
文人の突っ込みに思わず手で口を隠す茜。
「ほう……。文人……わざわざ茜のスマホを取り上げて電源を切ったって……?そう言えばお前のスマホの電源を入ってなかったのもおかしい話だよな……?」
「――相馬、落ち着いて、ね?」
「わざわざそんなことして!こんな人の居ないところで、今まで二人で何してたんだよ!?」
「いやー陸、何もしてないよ?文人と一緒に居たからって……あんなことしたり、こんなことしたり……何もあるわけないじゃん!」
「あんなことに……こんなこと!??」
「茜~例えそうだったとしてもね、そんなあからさまに言うことじゃないからね。相馬……聞かなかったことにしてさっさと帰ろ!」
「文人どういうことだ!お前……ついに……茜に手を出したって言うんか!?」
冷静さを欠いた陸は文人の体を掴んで詰め寄った。
「やっちゃったかも!?」
文人は『ニヤッ』と笑いながら言った。
(どうせ俺のしたことは消えるんだ……。それなら俺だって最期ぐらいは噓つかずに死にたいよ)
「はぁ!?文人!言って言い冗談と悪い冗談があるんだぞ~!」
文人は陸に体を揺らされながら思っていた。
(陸……俺がいなくなっても茜を……頼むぞ……)
「こらこら!そんな大沢の体を揺らしても何も出てこないんだから!てかもうこんな時間!良い時間になってきたしそろそろ帰らないと!」
結香が帰ろうと、文人と陸を離れかそうとしていた。
そんな様子を見ていた茜は
「ねぇ……みんな。
……欲張りかも知れないけど、やっぱり私はみんなとこんな感じで……陸と結香とそして……文人と。
ずっと楽しく一緒に笑っていたい!」
三人の姿を見つめて話す茜。
「当たり前だろ。
クラスもみんな一緒になったんだし。
俺たちは何も変わらない……
いや、何も変えさせやしない」
陸が張り積めた声で返す。
「私も茜や相馬と同じ気持ち。これからもこの4人で一緒に居たい!」
結香も茜の方を見つめながら言った。
「文人は……?」
茜が文人のほうを見つめていう。
「……俺は。俺も……やっぱりこの四人が心地良い!最高!!」
文人が柄にもなく拳を突き上げて言った。そんな文人の行動に一同驚きを隠せず一瞬静まりかえった。
「……えっ」
(何この空気……?やっちゃった?俺またやっちゃった??)
「やっぱり今日の文人おかしいよね……明日雪でも降るんじゃない?ねぇみんなそう思わない?」
「まぁいいんじゃない。文人が明るくなれば俺たちももっと賑やかになるんだし」
「そうね。ウジウジしたのが減ったほうがねぇ。それに大沢が元気だったら誰かさんも元気だろうし……」
結香は茜の方を見ながら言った。
「えっ!?結香~!それ誰のこと言ってるんかな?
でも本当にみんな……これからもよろしくね!」
茜は満面の笑みでみんなに言った。
(この茜の笑顔は俺一人で守れるものじゃない……みんなとだから守れるんだ。明日からの俺……頼むぞ。例えこの世からいなくなるまで……だとしても。茜を悲しませるんじゃないぞ……)
文人が茜と交わした二つの約束。
その一つはもう一つの約束を守る為に守ることは出来なかった。
一つ目の約束を犠牲にまでして守った二つ目の約束。
この日は守ることは出来ていたが、明日以降のこれまでの文人が守れるかは定かではない。
だが……。
大沢文人は一日で出来ることを精一杯やった。
卒業式から入学式に戻り、自分の中での答えを導き出し、その相手に想いを伝えた。
彼の青春はあと数時間で終わりを迎える。
そんな彼が求めた最高の青春とは。
「そう言えば文人。定期無かったらどうやって帰るつもりだったの?」
「あっ……」
陸と結香は歩みを進める中、その場に立ち止まりスマホを取り出す文人。
そこには母親の洋子からメッセージが入っていた。
『茜ちゃんと陸くんのお母さんに会ったわよ。
みんなと一緒に帰るなら先に言ってよね。
私は、ばあちゃんも帰ってくるし先に家に帰ってるから。
あんまり遅くならないようにね』
「茜……電車賃貸してもらえないかな?」
文人は隣で気にかけて待ってくれていた茜に言った。
「うん?また冗談でも言ってるの?」
茜は表情を変えず軽いトーンで返した。
「いや、本当に言ってます」
「バーカ!」
そう言って文人を置いて歩くペースを上げ、陸と結香のもとに向かう茜。
(だよね……。
最期は体を動かして家まで歩いて帰れってことなのかな……。
でも最期なはずなのに不思議だなぁ。
茜の前でいっぱい泣いたせいなのか……
茜をいっぱい抱き締めたおかげなのか……
みんながいるからなのか……
分からないけど。
今の俺は死ぬのが怖くない……!)
そう思っていた文人の方へ茜が振り返った。
「文人……!ちゃんと取りなよ!今日だけなんだから……」
茜は文人に目掛けて五百円玉を放り投げた。
「……えっ!?」
驚きながらも、とっさに両手を伸ばし五百円玉を掴みとる文人。
「茜~!ありがとう!!……いままで……本当に……」
(本当に最期の最期まで俺って……。
でも………)
後ろ姿の茜に対して、精一杯の気持ちを込めてお礼を言う文人。
「べーーーー!!!
もう……。
文人は本当に手が掛かるんだから……」
文人の目にはこう映っていた。
自分の方へ振り返り、少し前屈みになりながら『あっかんべー』をしている。
そんな茜の姿は、駅へ向かう夜道の中で、唯一街頭に照らされており、まるでスポットライトを浴びてる自分だけのアイドルを観ているような……。
「おーいー!文人ー!茜ー!」
「電車間に合わなくなるわよ~!」
「ほら!二人とも呼んでるよ!『ぼさっ』としてないで早く行くよ!!文人!!!」
茜は笑顔で文人に駆け寄り、文人の手を力強く掴み、陸たちの待つ方向へと引っ張っていった。
茜が文人を引っ張る。これが出逢った頃から今まで築いてきた二人の関係を物語っていた。
幼い頃、二人が交わした約束を再認識した二人。
月夜に照らされる二つの輝きは、そんな二人の首もとで、それぞれ
二人の笑顔の輝きに負けないくらいに。
交わした約束を大事にし続ける限り、二人は幸せであり続けるだろう。
大事にし続ける限り。
文人は笑顔の茜に連れられ、みんなの輪の中へ飛び込んで行く。
その際にこう思った。
人生で最期に見たかった光景……
これが……
これこそが……
俺が……
求めていた『最高の青春』だったのだと。
皆さん最期まで――最後まで――読んで頂きありがとうございました。
ご覧のようにこのお話しで【最高の青春を求めて】は完結となります。
最高の青春を求めての文人は……。
ちなみにではありますがこの作品の最初のタイトルはご存知ですか?
書き始めた当初のタイトルは【元カノを見返す為にタイムリープした!】でした!
活動報告を遡って頂くと分かるかもですが……
この時のタイトルから読んで下さっている方はいらっしゃるのでしょうか……?
さすがにいらっしゃらないとは思いますが、最近読み初めて頂いた方も、ここまで読んで下さったのはとても感謝しております!
本当にありがとうございます。
今後についてですが……
皆さんはこの作品の終わり方に納得をして頂けたでしょうか?
次回作を書くにあたって、どのような作品を描こうかなど色々と迷う部分はあるのですが……
それだけではなく、文章の向上など、この先も手を付けないといけない部分が多々あると私自身考えております。
その為、この作品が完結しての総合的に思ったことや直して欲しいところなどあれば、どしどしとご意見を頂けたら有難いです。
今回で一つの作品は終わりました。
ですが、彼らの人生や物語は終わることはありません。
最後になりますが、次回作のタイトルが【最低の彼を求めて】に決まりました!
次回作もこの作品と同じように連載作品を予定しておりますので、続けて読んで頂けたら嬉しく思います。
これからもアニ野祭ナリハルをよろしくお願い致します。
最高の青春を求めて アニ野祭 ナリハル @121058162810575352019
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