第70話 閑話 バルカンとイチャイチャ
「行くぞ!」
「よし来い!」
俺達は今、だだっ広い草原のど真ん中で戦闘を繰り広げている。
デートのはずなのになんでこうなったかというと、遡ること1時間……
「バルカンよ、今日何かやりたいことでもあるか?」
「うーん…ずっと考えてるんだけどなー……」
「灼夏の火山まで行くか?」
「それは心の準備をさせてくれ/////家族に見つかっちまうだろ/////」
ウブだな〜〜。うんうん、わかるよその気持ち。彼氏や彼女が初めて出来た時、親に紹介するの少し躊躇うもんね。俺は経験したことないけど。
でもバルカンの父は『娘大好きバイオレンスドラゴン』なんだよな……
やばっ、忘れてた。どうしよう、やっぱり挨拶に行かなきゃダメだよね?てことはバイオレンスドラゴンに報告するってことだよね?
俺生きて帰ってこれるかなぁ……
俺が別の問題に頭を抱えている時、バルカンが何かを思いついたように話しかけてきた。
「そうだ!アタシに稽古をつけてくれ!」
「稽古?」
「ああ。アタシはあの呪いに対して何も出来なかった。自分の弱さを痛感した……。だからこそアタシより強いゼノンに戦いを教わりたい!」
う〜ん……、稽古をつけるのはいいんだが俺偉そうに武術を教えられるほど知識無いんだよね。
ほとんど直感と自分の能力だけで戦ってきたしな……
「頼む……!」
だがバルカンは本気だからな。魔王として彼氏としてその期待を無下には出来ない。
「わかった。だが俺も専門的な知識はないから組み手なんてどうだ?俺達が初めて出会った時みたいな感じだ」
「ああ!ありがとう!組み手か…、いいな!」
そして現在俺達は今組み手をしているというわけだ。
「目線で何処に攻撃しようとしてるのかバレバレだぞ。ほら、背中がガラ空きだ。」
「うわっ!クソ!」
「動きが鈍くなってきたぞ。そろそろ休憩するか?」
「まだだこのやろう!」
結構くらいついてくるな。だがさっきからずっと動いているから疲れて元のポテンシャルが出ていない。
「よし、一度休憩しよう。疲れた体じゃいつもの動きは出来ないだろ?」
「ああ、わかったよ」
その場に座り、ディメンションから水筒を取り出しバルカンに水を渡す。
「ありがとな、今日は稽古に付き合ってくれて」
「別にいいが他にしたいことなかったのか?」
「ああ、これといって特に思いつかなかった。昔から戦うことばかり考えてたからな」
うーん、ならますます楽しんでほしいところなんだけどな……
あっ、そうだ。
「よし、バルカン。気分転換に今から空を散歩しようぜ」
「はぁ?急にどうしたんだよ?しかもアタシちょっとしか飛べねぇぜ?」
「大丈夫。俺が抱えて飛んでやる。あれから練習して自力で飛べるようになったんだよ」
そう、帰ってきてから俺は暇な時間に空を飛ぶ練習をしていたのだよ。地面にダイブした回数は数え切れないが、そのおかげで黒紋印に頼らなくても飛べるようになった。
「抱えて?どうやって?」
「それはお前…初めて会った時に地下から脱出する際にした抱え方だろ」
「ばっ……//////!お前アレまだ許したわけじゃねーからな!お前が無理矢理……/////!」
「はいはい、言い訳は後でたっぷり聞くからとりあえず出発しようぜ」
「ちょっ……!離せーーーー/////!」
嫌がるバルカンを強制的にお姫様抱っこし、俺は上空に飛び上がる。
「さあ、ぶらぶら致しましょうかお姫様」
「誰がお姫様だ/////!お前っ/////またこんな……/////」
怒るか照れるかはっきりしてほしい。俺から見たらただ喜んでるようにしか見れないんだよな。振りほどこうと思えば簡単に振り解けるよう力そんなに入れてないし。
それでもバルカンは俺の手の中にいる。
ということは満更でもないということだ。
やばい、照れるな/////
「何ニヤニヤしてんだよ」
「いや、別にもう恋人同士なんだから恥ずかしがる必要なんてないなと思って」
「なっ……/////」
「それにそんなに力入れてないのに抵抗しないってことは、この態勢が気に入ってるのかなと思っただけだよ」
「……………/////!」
顔が茹でダコのように真っ赤になってしまった。
これは図星だったかな?
そうだったら俺は嬉しいな。距離が縮まったということだろう。
「降ろせーーーーーー/////!!」
「ちょっ!?本気で暴れんな!?落ちたらどうするんだ!?」
「うるせー/////!お前が変なこと言うから……/////!」
ぎゃーぎゃー暴れるバルカンをそれでもなんとか抱えながら俺はまだ飛んでいる。
でも少し大人しくしてもらわなければな。
そこでふと思ったことがある。
バルカンにストレートに愛を伝えたらどんな反応するんだろうか?
バルカンはこう見えてかなりのウブだからな。
「なぁ…バルカン」
「あぁ?改まって何だよ」
「愛してるよ」
「…………/////!」
本日2回目の真っ赤っかタイムだ。
さあ、何て返ってくるかな?
俺の予想では『死ね!』か『てめぇ!』だと思うんだが。
するとバルカンが口を開いて……
「アっ……アタシもだよ………/////」
俺は完全に不意を突かれた。
あまりの可愛さに意識が飛んでいきそうになった。
「あぶねっ!おい今手を離しそうになっただろ!アタシ落ちそうだったぞ!?」
「俺も不意を突かれて意識飛びかけたわ!何だそれ!反則だろ!?」
「知るか!お前だって急に言ってきたじゃねーか/////!」
落ちそうになったことでバルカンは俺の首に手を回してガッチリ引っ付いている。
その光景はまるで映画のワンシーンのようだ。
その態勢に気づいて2人ともまた顔を赤く染めるのだが、それはまだもう少し先のお話……
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