第65話 準備は大切に

アイのお陰で魔王城3階部分は見違えるほどに綺麗になった。やはりといったべきか、先代達が残していったアイテムがかなり見つかった。


しかしかなりの量があったので確認は後日していこうと思う。本音をいうと疲れたんだよ。2部屋分は確認してみたがよくわからないものばかりだった。


よくわからないものを延々と確認して回る。ある意味一種の修行のような行動に俺の精神は限界だ。


というわけで後日に決定だ。誰が何と言おうと後日にする。まだいろいろやらなきゃいけないことがあるからな。



オロチの世話とか、極冬の冷地に行くための準備とか、黙ってたら後々怖いから炎竜王にお付き合い報告とか……最後が一番嫌だな…







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








まずはオロチの世話だ。

魔物の肉を持って地下室へ降りていく。



「グアァァァァァ♪♪♪ 」


俺に気づいたのか喜びながら俺に近づいてくる。かなりのスピードで……


だが今までの俺ではない。今までならダンプカーが突っ込んできたのかと思うぐらいの衝撃に吹き飛ばされたりしていたが、進化した俺は一味違うぜ。


突進してくるオロチをそのまま受け止め、4つの頭を順番に撫でてやる。



「よ〜しよしよしよし、可愛いな〜〜」


「グアァァァァァ♪♪♪ 」



やはりペットは癒されるな。でかくて恐竜みたいだが自分のペットとなると話は違う。どんな見た目でも自分を慕ってくれていれば可愛く見えるのだ。それが親バカという生き様だよ。ここテスト出るよ。


「さて……始めるか」


俺が持ってきた肉を夢中になって食べている間に俺はブラシで甲羅を綺麗に磨いてやる。


亀は定期的に甲羅を綺麗にしてやらなければならないと聞いたことがあるから、オロチもそうなのかな〜と思い急遽ブラシをパンドラに作ってもらったのだ。


俺は水をかけながら甲羅をゴシゴシ擦ってやる。

えっ、水はどうやってかけているのかって?

ディメンションに水を溜めて、少しずつ放出していくのだ。最近になってスキルの使い方がわかるようになってきたな。



一言も喋らなくなったが、気持ちよさそうな顔しているからやはり正解だったのだろう。


「どうだ〜〜、痒い場所ないか〜〜」


「グアァァ♪♪」



こんな掃除なら全然苦にならないな。気持ちよさそうにしていたら永遠に磨けそうだ。


「グアァァァァァ」


「ん?もういいって?」



オロチの顔の1つが俺の前にやってきて何か合図をした。だからそこで磨くのを止めると立ち上がって水の中に潜っていった。


何とも気まぐれな奴だな、と思っていたら何かを咥えて再び上がってきた。そして俺の前に置く。



[オクトクラーケン]

タコのようなイカ。足が一本ごと味が変わっており、タコの味もするしイカの味もする。強靭な握力で捕まると危険。




タコ?いやイカ?タコみたいに見えるが、頭はとんがっているし足も10本あるからイカなんだろう。でも知ってた?イカも本当は足の数8本なんだって。残りの2本は腕で、それを使って獲物を捕獲するんだって。


まぁ、今はどっちでもいいか。



「これを俺にくれるのか?」


「グアァァ♪♪」


「そうか!いい子だな〜〜お前は」


「グアァァァァァァ♪♪♪」



目一杯顔を撫でてやる。とてもいい子に育って父さん嬉しいよ。まるで我が子の成長のようだ。


オクトクラーケンをディメンションに収納して、少しオロチとかけっこをして遊んだらしてから俺はその場を後にした。








さて次は……極冬の冷地に行くための素材を見つけて加工しないとな。



俺達は一度極冬の冷地に向かうために扉の前まで向かったんだ。そしてその扉を開けたところまではよかった。


開けたらどうなったと思う?



開けた瞬間ブリザードが襲ってきて景色を見る余裕なんてなかった。俺が先頭だったから全員無事だったけど、俺体の半分凍ったからね。死んだかと思ったよ。


だからこそ準備はしっかりとしていかなければいけない。灼夏の火山で懲りたはずだと思っていたがまさかまた同じ扉開けトラップに引っかかるとは……



だから素材を揃えるために一度火山に行かないといけない。そして前回置いた扉の場所はバルカン出身の里の中というわけで………


ドラグノフさん、レーネさん報告イベントは不可避なわけだ。



「どうしよう……丸焼きにされる俺の未来しか見えねぇ……」



本気で俺を殺しに襲いかかってくる炎竜王のドラグノフさんの姿がはっきりと目に浮かぶ。その度に俺のSAN値はゴリゴリ削られていく。



「でも挨拶しなかったらしなかったで俺は殺されると思うんだよな〜………」



そう、どちらに転んでもドラグノフさんから全力で逃げるイベントは不可避だ。



「報告しないのは流石に印象に悪い。多分本気で殺されると思う。だから報告して重症死ぬ一歩手前コースで勘弁してもらうか」


「さっきから何物騒なこと言ってんだよ」



いつのまにか俺の後ろに陣取ってた炎竜王の御息女 バルカン。



「いや、俺お義父さまに殺されると思うんだよね」


「お義父さんって……///// まだ気が早いだろ/////」


「おい見逃すな。最後の一言を無視するな。」



せめて否定してくれ。「殺されはしないだろ」って娘の口から言ってくれ。さっきから不安で不安で仕方ないんだよ。



「なら今から行くか?」


「いや、心の準備と遺書を残させてくれ」


「大丈夫に決まってるだろ!?親父が殺しに来ることなんてない!!……………………多分」


「おい最後の一言なんて言った?『多分』って聞こえたぞ。言ったな?言ったよな?」


「言ってねぇよ!?」


「いや言ったね。俺の魔王イヤーは聞き逃さなかったぞ。ちょっと遺書残してくる」


「やめろバカ!!」



その後引きずられながら北の扉の前までやってきた。

駄々をこねて引きずられながら移動する子供の気持ちが今わかった気がする。



「開けるぞ?」


「おう。覚悟は決めた」



俺なら大丈夫だ。俺なら大丈夫だ。俺なら大丈夫だ。

よし、気持ちは作った!!




そしてバルカンに扉を開けてもらうと……






「よく来たな」





扉の前でドラゴンフォルムのドラグノフさんがスタンバってた。




速攻閉めた。



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