第58話 軽く修羅場った


魔王城に帰るまでに起こった出来事をかいつまんで話していこうと思う。







地獄の鬼ごっこが終わった後、壁に刺さったドラグノフさんを無視してレーネさんがバルカンの昔の話をしてくれた。


真っ赤な顔して止めに入ってきたが、全力で阻止して最後まで無事に聞き終えたよ。

途中からしれっとした顔して 渋いおっさんが近くで聞いていたから誰だろうと思っていると……




「なんだ?お前は娘の父親の顔も分からんのか?」




まさかの炎竜王だった。




いや、人の姿にはなれるんだろうなと思っていたけどこんな雰囲気変わるの?めっちゃダンディーじゃん。めっちゃ若いじゃん。



そのあとドラグノフさんからもバルカンの可愛いところを耳にタコが出来るぐらい説明された。



バルカンはレーネさんに取り押さえられていたが、何とか抜け出してバルカンによってドラグノフさんは思いっきり殴られた。



娘の反抗期に割と真剣にドラグノフさんは落ち込んだ。










「お前一人じゃ心配だからアタシも魔王城で働いてやるよ!」





突然バルカンが言い出した。






俺としては嬉しい限りだが、その言葉を皮切りに再び激昂したドラグノフさんが俺に襲いかかってきたが、レーネさんの一撃によって再び沈んだ。母は強し。








そのあと俺達は全員で外に出た。



呪いが解かれて自由に動けるようになったので、炎竜王は300年ぶりに外に出たらしい。


そしたらどこから聞きつけたのか、里の住人が一斉に群がってきてものすごく感謝され、あれよあれよと宴会が始まり、気づけば夜になっていた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「あら〜〜、もう行っちゃうの?せっかくだから一緒の部屋で寝ていけばいいのに……」


「何!?させんぞゼノン!!儂の娘に手を出そうなど100年、いや1万年早いわ!!」


「うるせーんだよ!?親父もお袋も/////!!」




相変わらず中の良い家族だ。俺は父親には目の敵にされているけどな。



するとドラグノフさんが俺に話しかけてきた。



「ゼノンよ……娘はやらんが改めて礼を言う。お前のお陰で儂はまた家族や村人達の笑顔を見ることができた、ありがとう。娘はやらんが。」



なんとも憎めない良きお父さんのようだ。この笑顔を見ると本当に救えてよかったと思う。少々娘愛が強すぎるがな。



「代わりと言っちゃなんだが、おぬしが困った時は儂らを頼れ。必ず力になると約束しよう」




炎竜王は笑顔でそう告げた。

俺としてはとんでもなくありがたい申し出だ。

だからこそ俺も同じ条件でなければフェアではないと思う。一方的では前魔王と同じになるからな。



「わかった。だが、あんたらも困ったら俺を頼ってくれ。魔王として力を貸すよ」


「ふっ、若造が言ってくれる」



俺達は互いに握手をした。

雨降って地固まる。男の友情というやつだ。



「バルカンよ……、この変態魔王に何かされたら急いで帰ってきて相談するんだぞ?」



前言撤回。誰が変態魔王だこの野郎。



文句を言いたいところではあったが我慢してディメンションからカバンを取り出し、そのカバンから魔法の扉を取り出した。……なんかややこしいな。



そして扉に手をかけ、挨拶をした。



「じゃあな。またバルカンや仲間達と一緒に遊びに来るよ」


「いや、バルカンだけでいい。お前の顔はもうお腹いっぱいだ」



こいつ………!!最後まで親バカなやつだな……!

と思ってたらレーネさんに殴られてた。いい気味だ。




「じゃあ、親父!お袋!改めて行ってくるよ!」


「ええ。気をつけるのよ〜〜」


「魔王よ、娘に何かしたらタダじゃ済まさんからな」





最後まで明るい家族だ。そして俺達は扉を開け、魔王城に帰ってきた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「おかえりっす!!」


「ぐふっ!」



扉を開けたらネアが走ってきて、3秒で腹にタックルをくらった。だからなんで気づくんだよ。



「相変わらずチンチクリンだなお前は」


「げっ……その声はバルカンっすか……」




するとネアがバルカンに気づいたが、ものすごく複雑そうな顔をした。



「また急に走り出して……あっ、ゼノン様おかえりなさ………」



パタパタとパンドラとフィリアも奥からやってきたがバルカンを見て固まった。そして……



「チッ……」




綺麗な舌打ちをした。




「相変わらず失礼なやつだなお前は」


「お久しぶりですね、ゴリラ。野生に帰りすぎて我が家への帰り道がわからなかったのですか? あっ、家は森の中でしたね。申し訳ございません」


「オッケー、先に喧嘩売ってきたのはお前だからな………!」



帰ってきて早々喧嘩が勃発しそうだよ。出会ってすぐ挑発できるって仲いいのか悪いのかどっちなんだ?

とりあえず今喧嘩はよしてもらおうか。



「コラ、二人とも久しぶりに会ったんだから喧嘩しない。パンドラといきなりふっかけないこと」


「はい……」


「おう、悪かったよ………」



するとその場にいたパンドラ、フィリア、ネアが目を見開きながらバルカンを見た。



「えっ……あのバルカンが………」


「謝った…………?」


「…………………!」



えっ?謝ったことがそんなにすごいの?

なんか三者三様の驚き方してるけど。



「そりゃ……ゼノンに迷惑かけれねぇからよ…/////」




その瞬間3人に雷に打たれたような衝撃が走った。



そして何故か俺が睨まれた。なんでだ?



「ゼノン様、バルカンにいたしたのですか?」



すげぇ、笑ってるはずなのにここまで怖い笑顔なんてなかなか見れないぜ?震えが止まらねぇよ。



「いや……特に何も……」



するとここでバルカンが親譲りの爆弾投下術を使ってきた。




「あんなこと(頭撫でられ、家族を救ってくれた)されたらもうゼノンしか見れねぇよ……/////」




いや多分その言い方は絶対誤解されるから。

ほら見てみろ、みんなの後ろに般若が見えるぜ。

今日が俺の命日なのかな?




「一緒に風呂にも入ったしな……/////」



「ファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」





さらに爆弾を投下。

そしてパンドラが発狂。





あっ、これ俺死んだな。





今絶対その一言いらなかったろ!?

パンドラが発狂しだしたじゃねーか!?

そしてあの優しいフィリアとネアでさえ戦闘態勢に入ってるからな。




「ではゼノン様、今からお風呂に入りましょうか?」


「そうっすね」


「うん」





おい、とんでもないこと言い出したぞ。




「いや、俺は………」


「まさか入らないとは言いませんよね?そこのゴリラと一緒に入って私達とは入らないなんて。部下贔屓はいけませんよ?」




人の笑顔に恐怖を感じるなんて初めてだ。

そして外堀をゴリゴリ埋められている気がする。

3人のプレッシャーで吐きそうだ。



「では、行きましょうか?」




そのあと有無を言わさずフィリアに植物で拘束されて3人に引きずられながら、俺はお風呂場に向かった。









………改めて思うけど、俺って魔王だよね?









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る