第43話 進化

【レベルが最大に達しました。進化しますか?】

はい / いいえ






思わぬアナウンスに思わずぽけっとした。





……………………進化?




レベルMAXになれば何かあるんだろうと思っていたら、まさかの進化。


これはアレか? ポケ○ンみたいな感じか?



進化という響きは非常に興味をそそられるが、同時に不安も彷彿させる。


仮に進化を選んで、今の姿からかけ離れた姿になったらどうしようという不安がよぎる。


しかしとても魅力的な選択だ。もし成功すれば俺はさらに魔王としての高みへ到達するだろう。




「よし! こういう時は………みんなに相談しよう」




やはり一人で考えるよりみんなの意見聞いた方がいいよな!!俺、みんなの魔王だし!!



そうと決まればカバンから扉を出し、一度魔王城に戻って来た。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




魔王城に帰ってきたと思ったら、俺は腹部に衝撃が走った。


見るとネアが腰に抱きついていた。



「お帰りなさいっす!!」


「ああ、ただいま。俺が帰って来るということをどうやって気づいたんだ?」



そう、扉を開けた途端突撃してきたのだ。まさかずっと待っててくれたのか?




「帰ってくる気配がしたっす!!」




なんとも妙ちきりんな答えが返ってきた。



犬かお前は!?

まぁ、帰ってきたことを喜んで寄ってきてくれるのは嬉しいがな。



するとパンドラとフィリアも続いてやってきた。



「無事に帰ってこられて何よりです。おかえりなさいませ」


「おかえり〜〜〜〜」


「ああ、ただいま」




俺が挨拶を返したところでフィリアが俺に聞いてくる。



「どう〜〜、バルカン見つかった〜〜〜?」



そこで俺は本題を切り出すことにした。




「いや、まだ見つけていない………そしてここからが本題なんだが、どうやら俺はさらに強くなるため進化ができるようになったらしい」


「進化……ですか?」


「あぁ。そこでみんなの意見を聞いてみようかなと」




ポカンとしている。


それはそうだ。いきなり進化ができるようになった!

って帰ってくるんだ。俺が言われる側なら「はっ?」と言うだろう。



「強くなるんならいいんじゃないっすか?」




初めに切り出したのはネアだ。

俺も強くなるんならいいと思うんだが……




「俺もそう思うが、もし今の姿から変わってしまったらなんかな……」




問題はここなんだ。

ここの不安さえ拭うことができたらすぐに進化を選択できるのに……



と思っていたら想定外の言葉が返ってきた。




「姿が変わってもゼノン様はゼノン様じゃないっすか?」


「うん〜〜、姿が変わっても〜〜、私はゼノン様好きだよ〜〜〜〜?」


「えぇ。たとえ姿が変わられようとも私達が支えるゼノン様は貴方一人です。」





まさかの回答に俺は年甲斐もなく泣きそうになった。


出会って間もないが、俺は部下には恵まれたんだなとしみじみ思う。



そうだよな……魔王の俺がうじうじ悩んでいても仕方がない。ここまで言ってくれたんだ……期待に応えようではないか!!




「ありがとな……決心がついたよ」




俺は脳内で「はい」を選択する。



すると体が一瞬光ったかと思った次の瞬間、地獄のような痛みに襲われた。



「ガッ……」


「「「ゼノン様!?」」」



それはまるで体の内側から作り変えられるような、内部をぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような感覚に襲われる。




「ガアァァァァァァァァァァァァァァ!!」



「ゼノン様大丈夫ですか!?しっかりしてください!?」




何か聞こえるがそれどころではない。

叫んでいないと死んでしまいそうな激痛。皮膚が裂け体から、口から血が溢れ出てくる。



やがてゼノンの周りを黒い繭が取り囲む。



パンドラ達配下は繭を必死に叩くがまるで反応がない。先程まで聞こえてきた悲鳴も聞こえなくなってしまった。



最悪の言葉が脳裏によぎる………



認めたくはないが涙がこぼれ落ちてしまう。

自分達が認めてしまったが為に最愛の主人は死んでしまったのではないか?


決して長い間一緒にいたわけではないが、今までの思い出が走馬灯のように一気に蘇る。




もう会えないのではないか、と…………





誰もが諦めきれず必死にもがいていたその時…ゼノンを覆う繭に亀裂が入った。




その瞬間、わずかながらに希望が宿る。




どんどん亀裂が入っていき、黒い繭は砕け散った。


その時黒い光が同時に輝き、パンドラ、フィリア、ネアはあまりの眩しさに目を瞑った。




しばらくすると黒い光が薄れ、そこに現れたのは……






3人が愛する主人が……魔王としてより高みへ登った主人が……そこに存在していた。






「えっと……ただいま、お前ら」





まるで生き返った死人を見るかのような目を向け…



「「「ゼノン様〜〜〜〜〜〜!!」」」



一斉に抱きつく為に飛びかかった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「「「ゼノン様〜〜〜〜〜〜!!」」」




俺にいきなり飛びついてきたときは何事かと思った。



まぁ、そりゃそうだよね……目の前でいきなり全身から血が吹き出したらそうなるよね……


いや、マジでキツかった。今まで生きてきた中で一番キツかった。骨折なんて目じゃないよほんと……



とにかく今俺に抱きついている涙でぐしゃぐしゃになった3人をどうにかしないとな。


俺は順番に頭を撫でながら落ち着かせるよう声をかけた。



「すまないな……迷惑をかけた…」


「はい………本当に死んでしまうんじゃないかと…」




パンドラが泣きながら返事を返してくれた。




「………………」




フィリアは話さないが俺に引っ付いたままべそをかいている。



「よがっだ……じんだがとおもっだっす……!」




ネアはがん泣きしている。

あっ、コラ!俺の服で鼻をかむな!!




この様子から見て、かなり心配をかけてしまったようだ。



今はみんなの気がすむまでこのままでいよう。俺が今できることはそれぐらいだ。





…………………しばらくして………………




「落ち着いたか?」


「「「はい/っす」」」



みんなが落ち着いたところで一番気になることを調べていこうと思う。


そう、俺の体がどうなったかだ。



するとそのことに気づいたパンドラが鏡を持ってきてくれた。



そこには進化前とあまり変わらない俺の姿が映っている。



しかし進化前の姿と決定的に違う点がある。

それは一対の禍々しい羽が生えているということだ。


さらに右手の甲から肘付近まで、黒い風が吹き荒れているような刺青が形どられている。


いまいちこの刺青が何を意味するのかわからないが、自分が生まれ変わったような、体中のエネルギーが躍動し 確実に強くなったと実感できる。




-----ーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 : ゼノン

種族 : 魔王 レベル : 1


【体力】: 33100 (+10000) 【MP】 : 41690 (+10000)

【攻撃力】: 12770 (+5000)

【防御力】: 12970 (+5000)

【素早さ】: 13450 (+5000)

【運】 : 350(+100)


【ユニークスキル】: 【悪食】【能力吸収】【鑑定】【成長促進】【自己再生】【魔力回復】 【無詠唱】【黒紋印】



【称号】: 【中級魔王】【卵に負けし者】

【ユニークキラー】【ドライアドに認められし者】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ステータスが全て1万を超えた。そして誤差だか【運】も100上がっていた。

さらにユニークスキルも2つ覚えている。




ユニークスキル:【無詠唱】

覚えているスキルを頭の中で想像するだけで発動することができる。




よく見かけるスキルいただきました!!

無駄な時間が減るからありがたい。




ユニークスキル:【黒紋印】

手の紋様を武器に変換することができる。武器に変換していない状態では、素手の攻撃の威力が上がる。




ここで手の刺青の効果が判明した。

試しに剣を想像してみると刺青が動き手のひらの上に集まると、闇を凝縮したような一振りの剣が握られた。


ちなみに解除しようとすると元の刺青になり手に戻ってきた。



これはありがたい。おかげでよりステータスを活かせる戦闘の幅が増える。



ついでに称号が【新米魔王】から【中級魔王】になっていた。ってことはまだ上があるってことか?



俺は期待に弾む気持ちと高揚する心を内に抑え込みながら、今の自分にできることを確認していった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る