第41話 水を求めて……

俺は再び灼夏の火山にやってきた。


先程までだったら釜の中のような熱気を感じていたが、今はサウナ程度の熱さしか感じない。



「これがスキルの効果か。有るか無いかだとこんなにも違うんだな」




改めてマグマラットに心から感謝した。

このスキルがなかったら俺は数分の内に焼かれて死ぬだろう。



「とりあえずこの場所から移動するか」



パンドラから借りたカバンの中に魔法の扉をしまい、燃え盛る大地の上を歩き始めた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




歩き始めて数分、未だに景色は変わらない。


辺りを見回しても見事に岩や溶岩。草木一つ生えていない。さらに魔物にすら会わない。


そして時間が経つにつれて気づいたことがある。



水だ。




水が絶対に足りない。

魔王城からも持ってきているがこのままでは足りなくなるだろう。


無くなれば取りに帰ればいい話だが、それだと効率が悪くなる。


そして水場の近所には必ず魔物が生活しているはずだ。もしかしたらバルカンも水の近くにいるかもしれない。


そこで場所を探すにはうってつけのスキルを発動させる。




「【ガイド】 水がありそうな場所」




するとガイドに反応があり、矢印が現れる。


とにかく今はこの矢印に沿って移動するのが得策だ。



しかし移動しようとした瞬間、突然目の前にあった岩が動き出した。




[溶岩魔人]

溶岩が固まってできた岩が意思を持った魔物。非常に固く、寄り集まれば大きくなる。





しばらくすると、散らばっていた岩や砂利が集まって一つの姿を形作った。姿は2メートルほどのゴーレムみたいだ。



さて…どうするか…

きっと岩だからファイアも風刃も効かないだろう。


そこでふと あることを思い出した。



(俺のステータスの攻撃力って5000超えてたよな?それってどれくらいの威力になるんだ?)



拳を握りしめ、ありったけの力を込める。

そしてそのまま溶岩魔人に殴りかかる。



そして……




ドガァァァァァァァァァァン!!





振り切った拳は溶岩魔人を粉々に砕き切った。





「……………えええええええええええええ!?」




まさか拳で破壊できるとは思わなかった。

それよりも自分が予想以上に成長していたことの方が衝撃的だった。


距離を詰めるために飛びかかったつもりだったが、少し離れていたはずの距離が一瞬でゼロになっている。


そして、俺自身岩を殴ったはずなのに怪我ひとつしていない。



改めて攻撃力、防御力、素早さが5000オーバーというのはとてつもないことだと思い知った。


まぁ、そりゃそうか。前魔王よりも強くなってるらしいんだからな。



そしてふと思いつく。


この岩、魔物扱いならば食べられるのでは? と。


あいにく今は何を食べても咎められることはない。

絶好のチャンスだ。



俺は溶岩魔人だった岩の破片を口に放り込んだ。




…………奥歯が折れた…




そりゃ岩を食べたんだ。当たり前だと思う。

そして全然美味しくない。岩です!と全面主張してくるような味だ。



少しすると口に違和感を覚えたので何事かと思ったら

折れたはずの歯が生えてきた。




「えっ!? キモっ!?」




いきなりサメみたいに歯が生えてきたのだ。 人間の歯は折れたら二度と生えてこないから、急速に歯が生えてくるのは初めての体験だ。




「そうか!自己再生か!」




エンペラーローチから自己再生のスキルを得ていたことを思い出したが、まさかここまで優秀なスキルだとは思わなかった。


お陰でこれからもいつも通りご飯を食べられる。

それと、やはり滅多なことはしないでおこうと心に誓った。



そんなことを思っていると、レベルが上がっていることに気づいた。





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名前 : ゼノン

種族 : 魔王 レベル : 82


【体力】: 20400 (+600) 【MP】 : 10090 (+600)

【攻撃力】: 5920 (+300)

【防御力】: 6120 (+700)

【素早さ】: 6600 (+300)

【運】 : 250


【ユニークスキル】: 【悪食】【能力吸収】【鑑定】

【成長促進】【自己再生】


【称号】: 【新米魔王】【卵に負けし者】

【ユニークキラー】

【ドライアドに認められし者】

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ついに防御力が6000を超えた!

そして程よく5レベル以上上がるようになってきた。


そしてスキルも覚えていた。




【硬質化】

体を硬くすることができる。部分的にも可。




さすが岩を食べただけはある。

硬くなれるなら強力な攻撃をくらってもダメージを減らすことができそうだ。



今回はなかなか良いスキルだった。

そう思っていると突然俺が立っている地面の横に穴・が開いた。



「はっ?」



何事かと思っていると、どんどん地面に穴が開いてゆく。


急いで上を確認してみると、空から大量の岩が雨のように降ってきた。




……はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?




こんなのどう避けろってんだよ!?



とにかく隠れそうな場所を探して全力で走り始めた。


それでも避けれるはずもなく、降ってくる岩に当たりまくる。




「痛い痛い痛い!!隠れる場所も無いし、防ぐ方法も………そうだ、硬質化だ!」




そうだ! 今覚えたばかりじゃないか!


俺は硬質化を使った。すると全身に薄い膜が覆われたような、そんな感じがした。



上から高速で岩が降ってくるのだ。少しは痛いがさきほどより痛むことはなかった。



これはなかなかの良スキルだな。



気持ち的にも落ち着いた俺は、水があるであろう方向に走っていると、山の麓に洞窟を見つけたので、しばらく雨宿りすることにした。



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