第34話 お菓子の園

マジか……さすが異世界としか言いようがない…



俺達はまだ情報が受け入れられず呆然としている。


先に我を取り戻したのはパンドラだ。




「ゼノン様…………あの…ゼノン様………本当ですかゼノン様……………?」


「おい大丈夫か?テンパりすぎて何を言っているのか全くわからないぞ?」




目の前の光景が衝撃的すぎて語彙力が幼稚園児以下になってしまっている。




とりあえず語彙力がなくなったパンドラを放置して目の前にあった花を一輪摘んだ。


茎も硬く、丸い飴玉が実っているような感じだ。

チュッパチャップスを思い出すな。




[飴花]

飴玉のような実が生る。色によって味が変わり、甘くて美味しい。




見た目通りの名前だ。


俺は手に持っている飴花を口に放り込んでみた。



……甘いな。なんか市販で売っている飴と同じような味がする。それと、赤色はイチゴ味だったようだ。



ひとまず毒などは無いようで安心だな。

もしパンドラが誤って毒を食べてしまったら大変だからな。なんかそんな未来簡単に予想できるし。



「パンドラ、これ甘くて美味しいぞ。」



毒味が済んだところでパンドラに進めよう。

待てと言われている犬見たいにさっきからこっちを見ているからな。


すると残像が見えそうな速度で飴花を摘み、口に放り込んだ。


喉に詰めるなよ……?



「甘くて美味しいです!」



シンプル イズ ベストな返答だな。



パンドラが飴を堪能している間に他のお菓子を見ていくか。と思ってたらパンドラもついてきた。




「ゼノン様待ってください!!私もご一緒します!」


「いや、ゆっくりでいいぞ。まだ舐めてるだろ?」


「噛んだので大丈夫です!!」


「味わって食べなさい」



どんだけ食い意地はってんだ……

あの飴かなり固かったぞ……



俺は呆れながらパンドラと一緒にお菓子の園を見て回る もとい 食べて回ることにした。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ゼノン様!この木とてもフワフワしてます!!」



俺達は今、葉っぱ部分が綿菓子で出来ている木にかぶりついている。



[ワタガシの木]

綿菓子で出来た木。甘くて美味しく子供に大人気。




噛むたびに口の中で溶けるこの感じがたまらない。

祭りに行くと必ず買うであろうラインナップの一つだよな。


と思っていたら隣のパンドラが消えた。



「あーっ!こっちにも美味しそうなものがいっぱいありますよ!?」




気づけば目的のお菓子に向かって走り去っていた。



いやマジで子供か?

お菓子売り場でこんな光景見たことあるぞ。



綿菓子を堪能した俺はパンドラが向かった方向に歩いていく。


するとパンドラが笑顔で泉に手を入れ、水をすくうように何かを飲んでいた。



「ゼノン様!! これも甘くて美味しいです!!」



[練乳の泉]

天然の練乳が湧き出す不思議な泉。甘い割にはカロリーが低く、老若男女に広く愛されている。




「練乳をそのまま飲むのはやめなさい!!体壊すぞ!?」




笑顔でまた泉に手を突っ込もうとしているパンドラを拘束する。

練乳は何かにかけるから丁度いいが、そのまま飲むのはさすがに体壊すと思う。


拘束しているパンドラが派手に暴れ始めた。



「離してください!!もっと飲んでくださいとこの子達が語りかけてくるんです!!」


「そんなわけあるかバカ!!マジで体壊すから!?」




そのあと、暴れに暴れるパンドラをなんとかカバンに大量に練乳を詰めて帰るということで手を打った。



練乳から引き剥がすのがこんなに大変だとは……

さっきまで戦ってたGよりも手強かった……



引き離した当初は親の仇でも見るような目で見られたが、その辺に生えてた大きい飴花をあげたら機嫌が良くなった。チョロい。



しかし機嫌が良くなったと思ったらまた走って行ってしまった。


なんかさっきからパンドラ追いかけてばっかりだな。


そう思いながらパンドラを見ていると、さっきからずっとカバンの中に大量のお菓子を放り込んでいる。



どんだけ持って帰る気だよ。あいつが通った道だけ焼け野原見たいになってんぞ。



「イヤァァァァァァァァァァァァァァ!!」



そう思ってたらパンドラがいきなり悲鳴を上げながら尻もちをついた。


気になって見に行ってみると、そこには可愛らしい ミミズがいた。




[肥やしミミズ]

綺麗な土に生息する。肥やしミミズを普通の土に放すと良質な土に変えてくれるらしい。




あっ、このミミズすごくいいやつじゃん。

何匹か捕まえて家の庭に放そう。



肥やしミミズを7匹ほど捕まえてカバンに直した。


その際パンドラはかなり渋ったが、より美味しい野菜を収穫できるようになるという事を伝えて渋々了承してくれた。




そのあともパンドラに振り回されながら数々のお菓子を収納していった。





[チョコツリー]

チョコで出来た木。長い年月をかけて成長したチョコツリーは味の深みが増す。




[グ実]

グミのような実。弾力があり、様々な味がある。




[オードブルフラワー]

茎はポッキー、葉はポテトチップス、花弁はドーナツで出来た花。一輪で3食楽しめるお得な花。




[クリームカズラ]

甘い匂いで動物をおびき寄せ、中に入ってるクリームで魅了する。カスタードカズラ、カラメルカズラもいるらしい。





どれも甘くて美味しいお菓子ばかりだ。

家帰ったら簡易的なこの場所を作るために庭に植えて行くか。パンドラが喜ぶだろう。



これだけあればケーキも作れそうだ。これからいろいろな試行錯誤を加えて行こうかな。



それとお菓子を食べてレベルも上がっていた。




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名前 : ゼノン

種族 : 魔王 レベル : 69


【体力】: 18760 (+800) 【MP】 : 8350 (+750)

【攻撃力】: 4910 (+425)

【防御力】: 4710 (+430)

【素早さ】: 5650 (+310)

【運】 : 250


【ユニークスキル】: 【悪食】【能力吸収】【鑑定】

【成長促進】【自己再生】


【称号】: 【新米魔王】【卵に負けし者】

【ユニークキラー】

【ドライアドに認められし者】

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お菓子食べてるだけで強くなれるって理想的だよな。逆にこんなことで強くなっていいのかと一生懸命頑張っている人達に申し訳なく思うな。





しかしお菓子を集めることに夢中になりすぎて、もう夜になりそうになってしまっていた。



ネアを探していたはずが思わぬ寄り道をくらってしまったな。



ひとまず今日は帰って明日また探しに来ようとパンドラに伝えたらとんでもない回答が返ってきた。



「私、今日からここに住みます」


「何言ってんだお前」



真剣な表情して何言ってんだこいつ。お菓子食いすぎてついに脳まで甘ったるくなったのか?

絶対本来の目的忘れてるわ……



その時、ちょっとしたイタズラを思いついた。




じゃあ、俺だけ帰るとするか。


カバンから魔法の扉を取り出し、ドアノブに手を回しながらパンドラに話しかけた。



「今日からここに住むのか?」


「はい!!」


「夜は虫が大量に出てくるが大丈夫なんだな?」


「えっ……」




顔が蒼白になった。




「しかもここはお菓子だらけだからな。いっぱい寄ってくると思うぞ。」




パンドラは泣きそうになった。




「まぁ、要らない心配だったな。じゃあ今日からここが君の家だ。うじゃうじゃ湧いてくるが頑張れよ? じゃあまた明日な。」


「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!お家に帰りますぅぅぅぅ……私も一緒に帰りますぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」




すると、泣きながら腰に縋り付いてきた。




うん……ちょっとやり過ぎたかな?

いや、これぐらいがちょうどいいか。


ここの魔物は強いから、1人にすると危険だしな。



あっ、そういえば火山に向かうための材料が取れる『マグマラット』も見つけてねぇ。



明日もやることがいっぱいだな、と思いながら俺達は魔王城に帰ってきた。



ドアを開けると魔王城に着くってほんと便利だよね。



パンドラと今日の出来事を振り返りながらフィリアが寝ているであろう玉座の間の扉を開けた。




……一瞬俺の目がおかしくなったのかと思った。




木にもたれかかりながら熟睡しているフィリア。

それともう1人、がフィリアの足元で眠っていた。


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