ぼっちの俺は学園一の美少女がゲーマーだと知ってしまいなんか知らんけど友達になろうと言われました

蒼井青葉

プロローグ

 どうもこんにちはみなさん、俺の名前は五月輝さつきひかるです。今日も俺は窓側最後尾の席でひとり寂しく外を眺めています。ここ、神宮寺学園はそこそこ進学校なので意外と自由です。クラスメイトのみなさんは本を読んだりゲームしたりと楽しんでいらっしゃるご様子で。


 俺は不幸を呼び寄せる体質みたいです。高校の入学式では突然歩道に出てきた猫をかわそうとして自転車をガードレールにぶつけて骨折、入院してたため、学校に戻った時にはすでにグループらしきものが出来上がってしまっており、見事ぼっちになりました。そして二年生の始業式、その日は路地裏を自転車で通り抜けようとしたら、運の悪いことにバットを持った不良三人ほどに絡まれてカツアゲされてしまいました。もちろん始業式の日から遅刻。そのせいでまたぼっち。


 「死にてえぇぇぇぇぇ!!」


 って何度も思った。けれどもう俺はあきらめた。


 そして今に至るという訳だ。


 今は5月の半ば。もうそろそろ暑くなってくる時期だ。ちなみに今は昼休みです。


 「あっちー。なんか飲み物買ってくるか」


 俺は教室を出て、一階の自販機がある場所へと向かった。昼休みということもあり、人は多い。俺は人込みをすり抜けて一階へと辿り着いた。


 ここの廊下を真っ直ぐ進んで突き当たりを曲がると自販機がある。昇降口から外を見ると、外で遊ぶ人、部活の昼練をしている人、ベンチでおしゃべりに興じている人など様々だった。


 俺は目的の自販機で冷たいミネラルウォーターを買ってまた教室へ向かった。取り出し口からミネラルウォーターを出した時、俺の手にほのかな冷たさが伝わってきて心地よかった。


 俺が再び廊下を真っ直ぐ戻って突き当たりの階段を上ろうとしたその時だった。


 「いてっ!」


 「きゃっ!」


 どうやら曲がり角で誰かとぶつかってしまったらしい。俺たちはそのまま床に倒れこんでしまった。


 「あ、ごめんなさい。俺が気を付けていれば・・・って」


 「あ、ごめんなさい。私、急いでて・・・って、あああ!」


 俺がふと前を見ると、そこには学園一と名高い美少女、葉月紗愛はづきさらの姿があった。けれど彼女は俺の方を一瞬だけ見て謝罪した後、すぐに床に視線を落として叫んだので俺も床に目を向けると


 「これ、シュウィッチじゃんか」


 そこには最新の携帯ゲーム機が転がっていた。ん、これ、彼女のものなのか?


 ってことは・・・


 「もしかして、葉月さんって、結構ゲームとかやるの・・・?」


 「あー!!!!見たわね!許さない、絶対許さないんだから!」


 俺の言葉に葉月さんは顔を真っ赤にして叫んだ。


 「ど、どうかしたの・・・?」


 「あなた今ぜったい、『あの葉月紗愛がゲーマーだったんだwww』とか思ったでしょ!」


 「いや、そんな失礼なこと思わなかったけど・・・」


 そんな失礼なことを思うのはネット廃人だけだと思いますけど・・・


 「と、とにかくこのことは絶対秘密にして!私のブランドイメージが損なわれて学園一の座が奪われたら生きていけないから」


 そんなにトップを狙う女子がこの学園にいましたっけ?多分あなたに勝てる人なかなかいないと思いますが。


 彼女、葉月紗愛は腰あたりまである長く艶やかな黒髪を顔の両サイドから垂らし、まつげは長く、目は大きい。文句なしの美少女である。家も金持ちらしく、まさにお嬢様という感じだ。オーラが他の女子生徒と違っており、とても男子諸君が近づける存在ではない。


 「は、はぁ・・・」


 俺が気のない返事を返すと


 「何、私が屋上から飛び降り自殺してもいいってこと?そうなったら私のお父さんが黙ってないと思うけど」


 「いやそこまでなんかよ。っていうか何で俺が脅されてるんだ?おかしいだろ」


 「っく!・・・しょうがないわね。ほんっとうに嫌なのだけれど、じゃあこうしましょう」


 そこで葉月さんは言葉を区切って息を継いで、再び話し始めた。


 「この私が友達になってあげるわ!」


 「え!?」


 いったいどうなったらそういう話になるんだろうか?俺は思わずバカみたいな声を出してしまった。


 「だ・か・ら!この私が特別に友達になってあげるって言ってるの!あなた、友達いなさそうだし」


 この人さらっと失礼なことを言ってますけど・・・・・


 さすがに傷つくんだが。しかも態度がデカイ。


 「ああ、確かに俺は友達がいませんよ。けど、本当にいいのか?俺なんかが友達になって」


 「何か勘違いしてるようね。私は知り合いはいても友達がいないのよ。私がもっと気安く接してと言っても誰も聞いてくれないのよ。それに・・・」


 「それに?」


 葉月さんは少し顔を赤くしながら話を続けた。可愛い。


 「ゲームの話、できる友達が欲しかったのよ」


 ああ。なるほどな。女子はあまりこういうゲームはやらないみたいだしな。男子は何かしらこういうゲームはやったことがあるしな。


 「OK、わかった。ほんっとうにいいんだな?俺の友達になってくれるんだな?」


 「しつこいわね。そう言ってるじゃない。ただし、あくまで友達よ!もし告白とか変なことしようものならお父さんに言いつけるから!あと、ゲームの話も秘密にしなさい」


「わかってる。よろしくな」


 そう言って俺は右手を差し出した。


 「何、その手は?」


 「ん?握手だが。友達になるなら普通だろ?」


 「・・・・・あんたなんかの手、さわりたくなかったけど」


 「ん?なんか言ったか?いやならさっきのやつバラしても」


 「あー!!わかりましたよ!やればいいんでしょ、やれば」


 嫌々ながらも葉月さんは俺の手を握ってきた。いててて!強ぇんだが!


 「その代わり、会うのは誰もいないところでよ。あとあんまり馴れ馴れしくしないで」


 「ああ、わかってるさ」


 なかなかの性格してますから君。そんなんだから友達できないんじゃありません?


 こうして訳のわからない経緯を経て俺は初の友達(残念)をゲットしたのだった。

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