Cleaning Old People

狐火

プロローグ


二千五十年、日本は老年人口率が五十%を超える超高齢社会となった。

そんな中、経済的な負担から若者が相次いで老人を殺すという『老いぼれ清算』が横行し、日本の情勢は先進国内でもっとも劣悪となった。そんな状態でありながら国を指揮する者は自分の利益を重視する年老いた者ばかりで、若者の反発はより一層激しくなった。そんな状況で、もはや日本のどこにも安全という文字は見当たらなくなった。数十年前の「日本は世界で一番優しくて衛生的な国」という定評は今や誰からも忘れ去られた。


 そんな状況から脱却するために国は様々な政策を行った。しかしどの政策も国民にとって不利益な面が顕著であり、己の欲望に忠実で、目先の事しか考えない国民には当然受け入れてもらえるはずもなくすべて失敗に終わる。


 そこで国は、解決すべき数ある問題の中から「殺人が『横行』している」ことだけに焦点を当てた。これ以上の人口減少を防ぐためである。しかし若者が少ないこの国では、国民へ金銭的な支援もできるはずもなく、それどころか減税することすら出来ない。よって経済的な負担を減らし、国民を金の縛りから解放させ殺意の根源を消すことはできない。


 だとしたら殺人の「横行」を防ぐ方法はただ一つである。


 それは殺人を一度だけ「合法」にすることである。

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