窮屈

何だかんだと十二時間を要して首都アンカラに到着。そこでまた互助組織が運営するホテルで自動車を返却して宿泊。


ただ、トルコはWebに対して制限が強い国でもあり、通信内容を政府が監視もしてたりする。だからイタリアの互助組織のサーバーを経由してアオに繋げた。


世界にはまだまだこういう国も少なくない。


「別に信教の自由に口出しするつもりないけど、窮屈だし好きじゃない」


ただ通り過ぎるだけだったのに、安和アンナがトルコについての正直な印象を口にした。


「だね。話を聞いてるだけでも私には無理だなって感じるよ」


アオもしみじみと言った。確かに、彼女のように大らかな女性にはムスリムの価値観は相性が悪いだろうな。だからあまり深くは関わらないようにしてるし、公の場で宗教について語ることも彼女はしない。余計なトラブルを招く原因になるから。


今回はこれ以上、ムスリムの国に滞在する予定はないけど、いずれはそういう部分を肌で感じてもらう必要もあるだろうから、数年のうちにはそちらにも赴くことになると思う。


でも、今のところは、エセンボーア国際空港からターキッシュ・エアラインズでイタリアはミラノに向かう。まあ、イタリアはイタリアでいろいろ日本の常識だと困惑するようなことがあるし、実は治安も必ずしもいいとは言えない部分もあるけど、窮屈さはそれほどないんじゃないかな。


「フランスの<変態>もたいがいオシャレだけど、イタリアはもっと<オシャレな変態>が出そうな気がする」


「あはは、そうかもね」


安和が言うとおり、フランスでは、自身の局所を花束に紛れ込ませて『シルブプレ』と言いながら見せ付けてくるという<変質者>に遭遇したりしたからね。幸い、今回の旅ではここまでそこまでのには出くわしてないけど、先進国ほどその種の変質者は多い気がする。発展が遅れ気味のところでは余裕がないのか、もっと直接的な性犯罪者が多い印象なんだ。幸い、そちらもここまで出くわしてはいないけど。




日付が変わって明け方から三時間ばかり睡眠を取って、僕達はいよいよ空港に向かい、搭乗手続きを行った。その際、<置き引き>が僕達の荷物を狙ったけど、<魅了チャーム>を使って犯人の行動を操り、事なきを得た。


「マジ、ムカつく。なんでそんなことしようとするんだろうね」


安和が不機嫌そうに口にした。


「確かに。そうやって他人を害そうとすれば結局は自分に返ってくるのにね」


僕も応えながら、『どうして?』ということを考える。だからこそ、悠里ユーリや安和がそんなことをしなくても済むようにしなくちゃって思うんだ。


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