歓待

こうして僕達は、ルスタヴィへと向かい、ダヴイトとケテヴァンの娘が働いているというレストランへと到着し、夕食をいただくことになった。


「娘のアナスターシヤです」


ケテヴァンが紹介してくれた女性は、なるほど養子だということがすぐに分かる、見た目には全く似ていなくて、年齢的にも二人の実の子供だと言うには明らかに年齢がそれほど離れていない、三十前後という印象があった。


それでも、


「パパ、ママ、いらっしゃい。そちらが今日のお客様ね! 素敵、一目惚れしてしまいそう」


とても家族仲がいいのが分かる朗らかな様子で、僕達を歓待してくれた。


そのレストランの人気メニューだというハチャプリ(チーズたっぷりのパン)、シュクメルリ(鶏肉の煮込み)を中心にした料理を堪能する。そのレストランのシュクメルリはクリームソースをベースにしたものだったので、悠里ユーリ安和アンナにも食べやすかったらしく、二人は、ダヴィトとケテヴァンが驚くくらいにたくさん食べた。


もっとも、僕達にとってはどうということのない量だったけれど。何しろ吸血鬼とダンピールだから。だけど気に入ったみたいだった。


途中、料理を運んできたアナスターシヤがついつい両親と話し込んでしまって、


「アナスターシヤ! 仕事しなさい!」


ホールスタッフのリーダーの女性に叱られたりもしつつ、楽しい一時を過ごすことができた。


「ごちそうさま」


「ごちそうさまでした」


「ごちそうさまでした~」


「ごちそうさま~、おいしかった~」


セルゲイと僕と悠里と安和で挨拶する。


「美味しかった? 良かったです!」


アナスターシヤが笑顔になり、それを見るダヴィトとケテヴァンがとても優しい表情をしていた。


レストランを出て、今夜泊まるホテルへと向かうためにマイクロバスに乗る。そうして夜の街を走りながら、


「アナスターシヤはね。実の両親から虐待を受けていたの。だから施設に保護されていたのを、私とダヴィトが養子として迎えたのよ」


と話してくれる。さらに、


「私達の子供は、皆、そういう形で出逢ったの。実際に生んだのは私じゃなくても、まぎれもなく私達の子供。出逢った経緯は関係ない」


ケテヴァンは語る。これもまた、人間の姿。


<ヒグマのアナスタシア>は人間の兵器により大怪我をしてサーカスに迎えられるようになり、こちらのアナスターシヤは、実の両親に虐げられ、ダヴィトとケテヴァンの下に来ることになった。


本当に皮肉な話だよね。


それでも、どちらも穏やかな表情をしていたのだった。


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