恵莉花の日常 その10
家に帰れば、ミハエル達の家に行けば、輝くように朗らかな笑顔を見せる
ただ、
「おはよう! エリ!」
予鈴が完全に鳴り終わってから教室に入ってきた女子生徒が、
明るい色の髪が緩やかにウェーブし、見る者が見れば『だらしない』と感じるような着崩した制服に身を包んだ、女子生徒だった。
「おはよう、チカ」
恵莉花が少しだけホッとしたような表情になって応える。中学の頃からの彼女の友人の一人、
他の<友達>を自称していた者達は次々と距離を取るようにしていったというのに、千華だけがそれまでと変わらず恵莉花に接してくれた。
恵莉花と親しくしていると、他の生徒達は訝しがるような視線を向け、避けようとするのに、千華はそれを気にしてる風でもなかった。
と言うのも、彼女自身が、元々、他の生徒から距離を置かれていたからだろう。
恵莉花や千華が通う高校は、進学校とまでは言われないにせよ、千華のような恰好をする生徒はあまりいない学校だった。恵莉花にしつこく迫った
けれど、千華のそれは、明らかに<ギャル>と言われるもので、入学当初から浮いた存在でもあった。
学力そのものは決して低くないものの、とにかく悪目立ちするタイプと言うか。
それでも恵莉花は千華の本質を知っていたこともあり、気にすることなく普通に接していた。
千華自身は、自分を抑えつけようとする大人や周囲の同調圧力に反発してそういう恰好をしているだけで、どちらかと言うと根っこの部分はむしろ生真面目なタイプだった。
生真面目であるがゆえに、道理を捻じ曲げてでも、
『みんな同じ』
であることを押し付けてくる者達が我慢ならなかったらしい。
そういう、『真面目で頑固な』一面が、<彼氏>との衝突を生み、ケンカになっては、
「絶交よ! 今度こそ別れる!」
「それはこっちのセリフだ! あばよ、バカ女!!」
などとやりあっては復縁することを繰り返しているらしい。
千華の彼氏である<
だから千華にとっては、他の生徒達の態度の方が『おかしい』のだろう。
「エリはエリじゃん。こんないい奴のどこが気に入らないんだよ。どいつもこいつも頭おかしいんじゃね?」
とさえ彼女は言う。
その物言いはさすがにどうかと思うものの、恵莉花もチカの表裏のなさはとても好きなのだった。
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