安和の日常 その6
安和は言う。
「人間ってさ。自分より劣ってる相手はバカにしていいと思ってる節あるけど、あれ、おかしいよね。
だって人間なんてセルゲイから見たらマジでクソザコナメクジだよ? 他人をバカにして吠えてる人間とかって、セルゲイを前にしたらどうすんだろね。
バカにされても当然って思うのかな? 他人のことはバカにするけど自分はバカにされたくないとか、子供じゃん。てか、
って言ったらきっと、『バカにされた!』ってキレるんだろうな」
すると
「そうだね。<クソザコナメクジ>とか言われたら当然キレると思うよ?」
と。
「ぐ……」
自分が不適切な言葉を使ったことを思い知らされ安和が顔を引きつらせてるところに、悠里が続ける。
「だからお父さんもセルゲイも人間をバカにしないんだよ。バカにされていい気がする人間っていないから。
よくアニメとかで『罵倒されて喜ぶ』みたいなキャラ出てきたりするけど、あれも実際には相手によるんじゃないかな。自分が嫌ってる相手にバカにされたら普通にキレると思う」
と応える。すると安和も身を乗り出して。
「あ~、それ分かる。だいたい、アニメとか漫画のはファンタジーじゃん? あれをホントだと考えるのがヤバいよね」
「うん。でも僕達がこんな風に思えるのって、結局、お父さんやお母さんのおかげだよ。そういうことをちゃんと教えてくれるから」
「そうだね……だから余計に思うんだよ。ネットとかで他人をバカにしてる人達って親とこういうこと話し合ってこなかったんだろうなってさ」
「だろうね。話し合ってたらあんなことしないと思う。僕達がもし、ネットで誰かを攻撃して、それで相手が自殺とかしちゃったら、お父さんもお母さんもどれだけショックを受けるか……それを考えたらできないよ」
「うんうん。できないできない」
二人がそうやって話し合っていることは、ミハエルもアオも知らない。
けれど、二人の様子を見ていたら、攻撃的な気配を放っていなかったら、問題ないことは分かっている。
ミハエルもアオも、子供達を自分の思う<型>にはめて思う通りに操ろうとは思っていない。だから<過干渉>はしない。
ただ、穏当な他人との関わり方を理解してほしいだけだった。
だから他人を自分のストレス解消に利用しなくてもいいようにしている。
そして万が一、何かに憤ったなら、まずはその気持ちを自分達で受け止めるようにしている。
何に憤っているのかを知り、それについてどう解決していけばいいのかを子供達と話し合う。
もちろんそれで何もかもが都合よく解決するわけじゃないけれど、でも他人に被害が及ばないようにはしてこれた。
人間よりははるかに強く、知能も高く、生物として優れているダンピールが人間に敵対すればどれだけの被害が出るか、その実例を知っているからこそ、
『優れているからといって驕っていいわけじゃない』
ことも知ってもらってきたのだった。
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