ミハエルの日常 その9
世間一般から見ればどれほど<普通>とは思えなくても、ミハエル達は幸せだった。
そして、アオや子供達に労わってもらえて安らげたミハエルは、しばらく休憩した後、再び、
「いってきます」
と家を出た。
今度は、
さすがに高校生が対象だけあって、小学生達を見守る時ほどは念入りではないものの、小学生の姿もちらほら見えるし、中学生はさすがに下校時間が近いので姿も多い。
加えて不審者の目撃情報もあるので、油断はできない。
実際、刃物を手に子供に近付こうとした者の足を払って転ばせたことも二度ばかりある。
一度は若い男性だったが、もう一度は中年の女性だった。
しかも、男性の方はそれ以降、見掛けることはなかったものの、女性の方は僅か数日後に再び刃物をもって現れたため、ミハエルは警察に通報し、それを受けて駆けつけた警官が女性に職務質問。
しかし職務質問を拒み激昂、さらには手にしていたぺティナイフで警官に切りかかろうとしたために銃刀法違反と職務執行妨害の現行犯で逮捕され、精神疾患の可能性が高いとして不起訴処分とはなったものの同時に再犯の可能性が非常に高いとみられたことで措置入院の判断が下され、数ヶ月が経った現在も入院中、退院の見通しは立っていないという。
その女性は初犯であったために、もし起訴に至ったとしても執行猶予の判決が出る可能性が高く、むしろ措置入院の判断が下ったことで監視下に置かれる結果となった。
一方の男性の方も、自身の行いを省みて態度を改めるならそれでよし。けれど万が一、同じことをしようとすれば女性の時と同じく警察に通報する準備は整っている。
なにしろ、転ばせた後で慌てて逃げる男性の後をつけ、現住所も確認済みだから。
アパートに一人住まいらしいその男性は、あれ以降、部屋に閉じこもったまま、近所のコンビニに買い物に出る姿が何度か確認された以外は、一切、外出もしていないようだ。
ミハエルは、それについても悲しんだ。
それ以前に、こんなことにはならせないのに……
どういう経緯があるのだとしても、赤の他人に憤りをぶつける以前に、自分に向けさせるから。
なにしろ、
だったら、ダンピールとして感じるであろうこの世の理不尽は、そもそもミハエルとアオが二人を迎える決断をしたから。それがなければ、二人はこの世に生を受けていない。
その事実がある限り、ミハエルとアオに責任があるのは揺るがない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます