子は鎹
というわけで、さくらもエンディミオンもお互いに自身の責任を承知した上で
今の関係を続けているわけだけれど、しかしだからと言って何もかもをしっかりと割り切れるほど人間(吸血鬼やダンピールも含めて)というのは単純でもない。
彼のことは今でももちろん愛しているし大切には想っているけれど、まったく会話がなかったことについては、正直、寂しい気持ちもある。
「ただの我儘なのは分かっているんですけど……」
愚痴を聞いてくれたアオに感謝しつつ、さくらは寂しそうに笑った。
それに対し、アオは、
「私もミハエルと話ができないとなったら、たぶん、耐えられない気がする。だから、さくらの気持ちも理解したい。
ただ同時に、エンディミオンの性格を考えると、ここで本人を責めると、十中八九間違いなく機嫌を損ねるよなあ」
腕を組みながらうんうんと頷きつつ応える。
「そうですね。私もそれが分かってるから彼に直接は言えないんです。彼が花の世話に集中してるのを邪魔もしたくないし……」
「うむ。その気遣いは大事だと想う。ここで一方的に被害者面すると関係が拗れる元だ。
こういう場合、ヘタに二人きりで話をしようとするよりも、間に入ってくれる人が必要なのかもしれんという気はする」
「確かに。でも、それについては
そのさくらの言葉に、アオはニッと笑みを浮かべて、
「なら、心配は要らないな」
悪戯っぽくさくらを見た。
アオは知っていた。エンディミオンは子供達には非常に寛大だ。甘いと言ってもいい。自分が辛い幼少期を過ごしたことから、恵莉花や
子供達こそがさくらとエンディミオンの間を取り持っているというのが分かる。
これこそが、
『子は
というものなのだろうと思った。
しかし同時に、
「ただ、<子は鎹>とは言うものの、ただこれも、よく聞く話ではあるものの、よく言われることではあるものの、過信すると思わぬしっぺ返しを食うのだろうな」
とも口にする。
するとさくらも。
「はい。それは私も気を付けています。それに頼ってしまって努力を怠ると、かえって関係を拗れさせるんでしょうね」
「おう。まさにそれだ。親の尻拭いを子供にさせるというのは、本来は恥ずべきことなんだろう。
私も気を付けないといけないと思ってる。
子供は、親の道具じゃない。いいように利用して親が手を抜くために存在するわけじゃない。そんなことをしていたら容易く子供から見捨てられることもある。
ゆめゆめそれを忘れないようにと思うよ」
「まったく同感です」
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