第21話 テイマーのモンスター
ヤヨイに続いて、フランも圧倒的な力を見せつけた。
フランの魔法、ライトニングを食らって法力河童は焼け焦げて倒れている、これはもう動くことはないだろう。
パルマはマウスマンとともに驚いていた。
「法力河童だって、魔法を使っていたのに、それを飲み込んで一瞬で……」
「チュウゥゥ……」
マウスマンは立て続けに見た、自分の実力を明らかに越える、ヤヨイとフランに怯えて震えだした。
「なぁ今の魔法、光属性の初期魔法のライトニングだよな?」
パルマはフランに尋ねた。
「うん、そうだよ。 光属性の魔法だけは私も使えるようにしてるんだ」
パルマは驚きとともに大きくため息をはいた。
「ライトニングって普通はちょっと強めの光を当てて、軽く火傷させる程度の魔法だぞ……あんなライトニング見たことない……」
「えへへ、ほめられちゃった」
「すごいだろ、俺の仲間達は」
「すごいって言うか……オーガゴブリンを一撃で倒したってことが大袈裟じゃないことは分かったよ」
驚きを通り越して若干呆れているようにも見えてきた。
「何を無駄話してるんだ、次に行くぞ」
ヤヨイはすぐに、山の奥へ進もうとしたときだった。
ヤヨイの頭上の木の上に人影の様なものが見えた。
「待てヤヨイ、上に誰かいる」
猿だ、ノリスも抱えている。
俺らの戦いを上からずっと見ていたのか。
「浮いてる?」
頭上を見上げた、ヤヨイが不思議がっている。
よく見ると、猿は宙に浮いている。
よく見ると猿の足元にフワフワと漂っているものが見える、霧……いや雲なのか?
「あいつだ、ノリスをさらった奴だ!」
パルマも猿のモンスターを発見した。
頭に鉢金をつけ、動物の皮を剥ぎそのまま服として、身体に巻きつけた荒々しい風態のモンスターだ。
パルマの声を聞き、猿は足元に漂っている、雲の様なものに猿は乗って、その場を離れた。
「すごい! 雲に乗って移動してる!?」
フランが嬉しそうに声を上げた。
猿の乗る雲はかなりの速さで移動し、ノリスとともに山の頂上の方へ移動していった。
「なんだ今の、魔法か?」
ヤヨイはいなくなった猿の行方を追いながら乗っていた雲を気にした。
「そうだ、あの猿俺の前にもあの雲に乗って現れたんだ!」
「追いかけるぞ!」
とにかく上だ、罠かもしれないが、ノリスが心配だ、行くしかない。
俺達は猿のモンスターを追ってまた移動を開始した。
「フランが山を焼いてくれたおかげで、通りやすくなったな」
ライトニングでできた焦げた跡は山頂に向けてずっと伸びていた。
いままでは草木を分けて歩いていたけど、その必要がなくなって随分進みやすくなった。
パルマは進みながら悩んでいる様だ。
「どうしたパルマ、何かあったのか?」
「いや、改めてさっきのモンスターを見てなんかどっかの本で見たことあるような気がしてさ」
「うーん、言われてみたらレアモンスターだったような……」
普通のモンスターとはちょっと雰囲気が違う、なんだったっけな……
「あのモンスターは魔神猿だよ、Cクラスのレアモンスターだよ」
フランが答えた。
「そうだ、魔神猿だ! こんなところで見れるなんてちょっとラッキーだったのかもな」
パルマの機嫌が急に良くなった、パルマも俺に負けじとモンスターが好きだからレアモンスターと知って嬉しかったのかもな。
ただCクラスの相手だ、オーガゴブリンと同レベルと言っても油断はできない。
気をつけていかないとな。
「いたぞ……」
ヤヨイが見つけたらしい。
毎度毎度やけにあっさり見つかるな……
ノリスをさらっておびき出されたのにそれ以降がずいぶんと雑だ……
魔神猿は山の開けた場所で、別のモンスターと話をしている。
ノリスは話をしてるモンスター達の横でうずくまっているが、ここからだと安否まではわからない。
「まずはノリスの無事を確認しよう」
二匹のモンスターがいる横にノリスがいる、下手に見つかってノリスに危害を加えられるのはまずい……
慎重に様子を見るべきだ。
「なぁ、あいつら揉めてないか?」
揉めてる……?
ヤヨイが言うように、二匹のモンスターは荒い口調で話をしてるみたいだ。
「もういいだろ! 俺は言われたことはやったはずだ、これ以上は何も言われる筋合いはない!」
魔神猿がもう一匹のモンスターから離れようとしている。
「そんな訳にいくか! 豚も河童もやられたんだぞ! お前にも相手してもらわないと困るんだよ!」
「知るか! ここまでやりたくない人さらいまでやったんだ、もう関係ないだろ!」
ずいぶん荒れてるな……仲違いしてるようだが、聞いた感じ魔神猿はノリスを無理やり攫わされたのか。
魔神猿と一緒にいるモンスターもあまりみたことのない奴だ。
「惨憎法師だ、あいつもレアなモンスターだ」
惨憎法師……聞いたことないモンスターだった。
魔神猿が、雲に乗り移動した。
「もうこれきりにさせてもらう、付き合いきれない」
魔神猿がこの場を離れようとしたときだった。
「いい加減にしろ」
惨憎法師が、魔神猿を睨み付けると、魔神猿は頭の鉢金を抑えて苦しみだした。
「グッ、貴様……」
魔神猿は雲から落ち、地面を転がり悶え苦しんでいる。
剛力豚と同じような状態だ、これまでのモンスターも惨憎法師が命令して、やらせてたのかもしれない。
「仲間割れしだしたな……なんなんだこいつら……」
「惨憎法師はテイマーのモンスターだ」
パルマはモンスター達のやり取りを見ながら不快そうな答える。
「モンスターがモンスターをテイムするのか……」
だから、山にいるはずのない法力河童がいたのか。
「さあ、この場で戦え、お前は俺のしもべになんだ、俺の命令に従うんだよ!」
惨憎法師が苦しむ魔神猿に命令する。
「ぐうぅ……断る! これ以上は死んでも、付き合ってたまるか!」
しかし、苦しみながら魔神猿は命令を拒否した。
「ぐぁぁぁぁぁ!」
魔神猿がさらに苦しみだした。
「使えない奴だ、それなら最も苦しんで死ねるように調整して殺してやる」
惨憎法師が魔神猿に向けて手をかざした。
「死ね……」
そのとき、惨憎法師が衝撃を受け吹き飛んでいった。
「グフゥッ……!」
惨憎法師は地面を転がり、気を失った。
マウスマンが惨憎法師の元いた場所で右腕を突き出し立っている。
「いいストレートだ、マウスマン!」
パルマが褒めながらマウスマンに近づいていく。
魔神猿が驚いた顔でパルマを見た。
「なぜ、俺を助けた?」
「助けた訳じゃない、テイムした仲間を大切にしない奴が許せなかっただけだ」
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