第19話 ノリス捜索開始
ノリスがモンスターに連れ去られてしまった……?
一瞬の出来事でノリスの隣にいたはずのパルマは事態を受け入れきれずにいる。
「パルマ、ノリスをさらって行った奴はどっちへ行った?」
「ノリス……俺は……」
「パルマ! しっかりしろ、ノリスはどっちへ連れてかれた?」
「えっ……、あ、あっちだ猿みたいな奴が……急に来て」
パルマはしどろもどろになりながら奥に山のある方向を指さした。
「ナイナ!」
「はい」
「あの方向でモンスターの情報を聞いたことはあるか?」
「特別聞いたことはないですけど、奥にある山の中ならモンスターがいてもおかしくはないと思います」
情報が薄いな……
でも、何もしない訳には行かないし、山の方へ向かってみるか。
◆◇◆
あてもないまま、ノリスを探しに拠点を離れることになった。
ナイナだけにして拠点を狙われたらまずい、セリルに拠点に残って貰った。
ヤヨイとフランそしてパルマを連れてのノリス捜索が始まった。
とにかく何も情報がない、相手の足跡も殆ど残っていないから、かなり器用なモンスターであることは間違いなさそうだ。
「クソッ! 俺がいたのに、ノリスを守ってやれないなんて……」
パルマは放心状態ではなくなったが、今度は自分を責め出していた。
「パルマとか言ったな、反省できることなら振り返るのも必要だが、先の事は突然なんだ、切り替えてこれから見つける事に集中しろ」
「一緒にみんなで見つけよ! ひろーいかくれんぼだよ!」
「ああ、すまない、悪いな気を使って貰って……」
やり切れない気持ちを抑えてはいるが、ヤヨイとフランのフォローで少し落ち着いたみたいだ。
「パルマ、ノリスをさらっていった奴がどうだったかとか、少しでも思い出せないか?」
俺の質問にパルマは頭を抱えた。
「猿……俺らと同じくらいの大きさの猿だったのは覚えてるんだ」
「で、そいつはどこへ行った?」
「今向かってる山の方にノリスを抱えて走って行って……いや……走っていったのか? ダメだ、わからない……」
「おにぃちゃん、今さっきのことなのに、なんでそんなにぼんやりとしか覚えてないの?」
確かにフランの言う通りだ……広いところから現れたモンスターが隣にいたはずのノリスをいきなりさらっていくほど大胆な事をしてるのに、パルマはこんなに曖昧な記憶しかないのは何故だ……?
パルマはまっすぐな奴だけど、抜けてはない。
相手のモンスターが何らかの能力を持ってるやつなのかもしれないな。
周囲を見回しながら歩いているが何も見つからず、結局山の入口まで来てしまった。
「ここまでの間、何も手がかりはなかったな……」
ヤヨイはため息をついた。
途方も無い捜索だ、広い荒野を山を目指して歩いてはきたが、ここまでの間で見きれてないところだって沢山ある、山に入ってもいる保証もない……
「どうする、このまま山を探すか?」
パルマは山を眺めた。
ナイナが言うにはここにモンスターがいる可能性はあるけど、ノリスがいるとは限らない、どうする……
「ねぇねぇロジカおにぃちゃん、あそこのモンスターがこっちを見てるよ」
ほんとだ、あれはDクラスのモンスターの剛力豚じゃないか?
二足歩行の拳法着のような服を着た筋肉質な豚だ、見たことのない熊手のような武器を持ってるけど、恐らく剛力豚で間違い無いだろう。
パルマは猿のモンスターって言っていたから、ノリスをさらった奴とは違うだろうが、ナイナの言う通りこの山にはモンスターがいたみたいだ。
「ようやく来たか」
剛力豚は俺らを見て勝気な顔で近寄って来た。
俺らを待っていたのか?
ってことはノリスを知っている……?
「ノリスはどこだ!? 」
パルマが真っ先にモンスターに詰め寄った。
「素直に教えるわけが無いだろ、俺はお前を倒すようにしか言われてないんだ」
こいつ猿のモンスターと関係があるってことか、こいつを倒せば何か聞けるかもしれない。
「望むところだ、やってやるよ」
パルマは手を上にかざした。
どこからか、ドタドタとこちらに向かってくる音がする。
「チュー!!」
ハチマキをした、二足歩行のボクサーの様な格好をしたネズミがやってきてパルマの前に立ち、剛力豚にファイティングポーズをとった。
こいつがパルマがテイムしたマウスマンか。
「迷惑をかけたんだ、こいつは俺が倒す」
パルマはこのマウスマンで剛力豚と戦うつもりのようだ。
「チュッ、チュッチュッ」
マウスマンはシャドーボクシングをしている、やる気十分みたいだ。
「かわいー、あのネズミさん飼えないかな?」
フランはマウスマンに一瞬で心を奪われていた。
「ふざけた、モンスターだ……ロジカ、あのネズミ強いのか?」
「強さで言えば普通のマウスマンはEクラスのモンスターなんだけど、育てればある程度は強くなるからパルマがどれくらい育ててるかによるかな」
「ふぅん」
聞いてきた割にヤヨイは興味がなさそうだ。
「テイマーか、こんな雑魚モンスターで俺に勝とうなんて舐められたもんだ」
剛力豚は熊手のような武器を両手で構えた。
その瞬間だった、マウスマンは一気に剛力豚との間合いを詰め、ボディにフックを入れた。
重い音がした、並みの人間なら今の一撃でダウン間違いなしだ。
「グフッ、こいつ!」
剛力豚は持っていた武器を横に振るが、マウスマンは身を屈め、回避し立ち上がる反動を利用し、顎にアッパーを決めた。
剛力豚がよろけた。
「どうだ! 俺のマウスマンは鍛えてるんだ、そこら辺の奴とは違うぞ!」
「思ったよりやるな、グフフ、面白そうだ」
結構強いなパルマのマウスマン、これはいい勝負になりそうだ。
剛力豚とマウスマンが睨み合い出した。
この勝負長くなりそうだ……
周りも息を飲んで緊迫する戦いを見つめる中、ヤヨイがズカズカと剛力豚に近付いていった。
「ん? なんだキサマ、まずはキサマからやられたいのか!?」
「バカバカしい……」
ヤヨイが小声で呟いた……
「ガッ……」
居合斬りだ。
ヤヨイが目に見えない速度で一撃を決めた。
剛力豚の前身に刀傷が入り、持っていた熊手もろとも崩れるように倒れた。
パルマとマウスマンがあんぐりと口を開けて驚いている。
「時間の無駄だ、早く探しに行くぞ」
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