第13話 絆が深まりました

変なしこりは残ってしまったが、フランとセリルも仲間になって、ようやく少し落ち着いた。


「すごい傷だ……元に戻るのか?」


ドラゴンの吐いた炎に焼かれた俺の腕を見てヤヨイが言う。

腕は赤黒く爛れて痛みも感じない、細胞が壊死しちゃったのかもしれない。


「必死で2人を守りに行っちゃったせいで後先考えてなかったな……」


フランが俺の腕に触れた。


「上手くいくかわからないけどやってみるね」


そう言うとフランは目を閉じて深く息を吸い込んだ。


俺の腕の周りに魔法陣ができる。

セリルの雷の時と同じようにハッキリとした魔法陣が表示される。


「お願い、元に戻って」


フランの言葉と同時に魔法陣から光のシャワーが漏れ出し、俺の腕に吸い込まれていく。


「やった! 私もできた!」

セリスに続いてフランも魔法が成功したのが嬉しいみたいだ。


優しい光に包まれたまま、しばらくすると腕が痺れてき始める。


「痛てっ……いてててて、なんだこれ、急に激痛が」


「痛覚が戻ってきたんだよ、回復してるの、そのまま動かないで」


そういうことか……フランの言う事はわかるけど、どんどん痛みが強くなる……


「うーっ、ぐぐぐ……痛てぇ……」


「耐えろロジカ、自分のためだ」


「もう少しだよ、お兄ちゃんがんばれ!」


頭の奥にまで響くような痛みがしばらく続いたが、徐々に腕が肌色に戻っていき、痛みも和らいできた。


「はい、治ったよ」


地獄の苦しみだった……

お陰で確かに見た目は元どおりだ……恐る恐る指を動かす。


「おっ、動いた」


よかった、もう腕が使えなくなるのかと思った……


「よかったね、腕が治って」


フランはニコッと笑った。


その笑顔だけで痛みや疲れも吹っ飛んでしまうような可愛い笑顔だった。


「お姉ちゃんも直してあげるね」


ヤヨイの怪我してる足に手を差し伸べてヤヨイの足も回復させた。


「すごいな、痛みが消えた……」


ヤヨイは足をかばう事なく立ち上がった。


「そうだ、この子も助けた方がいいのかな?」


フランはドラゴンを眺めて近寄った。

セリルの雷で黒焦げで流石に息絶えているだろう、いくら魔力が上がっても蘇生はできないはずだ……


「やめとけ」


ヤヨイがフランを止める。


「なんで? かわいそうだよ」


「私達とモンスターじゃ生きてる世界が違うんだ、万が一回復したらまた襲われるだけだぞ」


普通のテイマーになりたかった俺としてはヤヨイの言う事は複雑な部分はあるけど、今このドラゴンを回復させるべきではないと言うのは同感だ。


「そっか……ごめんね」

フランがドラゴンを優しく撫でると、それを見てたセリルは引いていた。


「フランよく触れるね……私この子、大きいトカゲみたいで苦手」


双子なのに好みは大分違うんだな……


「ところで、フランとセリルはお互い別々の魔法を使うんだな」


「「うん!」」

この2人、息も合わせずによく声が揃う、双子だから波長があうのかな。


セリルが手を挙げて話し出す。

「私は攻撃魔法担当なの!」


今度は負けじとフランも手を上げる。

「私は回復魔法!」


「セリル、攻撃魔法を家の中で使ったらダメだぞ、家が壊れちゃうからな」


「うん! それで怒られてる人いっぱい見てきたから、やららいよ」


ソウルガンドにはヤンチャな奴がいっぱいいたんだろうな……


「おいロジカ、見つけたぞ!」


ヤヨイが魔導石を掴んでる。

ドラゴンから取ったみたいだ。


レアアイテムらしいのに今回も手に入ったのか、これは運がいい。


「「あー、魔導石だ!」」


フラン、セリルが驚いた。


「魔導石のこと知ってるのか?」


俺が2人に尋ねた。


「うん、凄い魔力が込められた石だよね、ソウルガンドでも集めてるんだよ」


「今回のクエストもドラゴンが魔導石をドロップすることがあるからってことで受けに来たんだけど、ヅィリィさん忘れて帰っちゃったね」


ソウルガンドでも魔導石を集めてる。

やっぱり凄い石だからみんな欲しいんだな、前の魔導石をヤヨイに斬られなくてよかった……


◆◇◆


クエストの目的も達成して、俺達は帰ることになった。


途中でセリルとフランは寝てしまったからおぶって帰ることにした。


「こうしてるとおんぶして歩いてると家族みたいだな、俺ら夫婦だと思われちゃうかもな」


「ロジカは周りからそう思われたいのか?」


「え……まぁ嫌ではないかな」


「なんだ嫌ではないって、消去法か」


「ハハハ、そういう意味じゃないよ」


「フフ」


はじめに比べてヤヨイは随分心を開いてくれたような気がする。

でも、ヤヨイのことってほとんど知らないんだよな。


「なあヤヨイ、嫌なら答えなくていいんだけどさ、さっき気にしてたヤマトっていうのは何者なんだ?」


俺がヤマトという名前を出すと、ヤヨイは少し反応をした。

しばらく、俺の目を見て、口を開く。


「ヤマトは……私の師匠のような人だ」


師匠……って言ってもヤヨイは俺がテイムするまではお世辞にも強いとは言えなかったような。


「剣術を習ってたのか?」


「いや、私は見ているだけだった、私の住む国は古風な国で女は強くなることを拒まれ、逆に男は強さが全てだった」


「極端な国なんだな」


「ヤマトはその国で一番強く、誰に対しても優しかった」


ヤヨイはヤマトのことが好きだったのかな……


「なのに……」


「ヤマトに何かあったのか?」


「昔は争いごとが嫌いだったヤマトが急に取り憑かれたように荒っぽくなって、モンスターやそれだけでなく、人を傷つけ出すようになったのだ」


「そんな……どうして……?」


「わからない、そうなってからすぐにヤマトは国から半分追放されるように出て行った、私はヤマトの数少ない情報から、クエストを受けていたと知ったから、この街のクエストを受けに来たんだ」


「……そういうことだったのか」


探してたヤマトの名前が急に出てきたから、ヤヨイはあんな反応だったのか……

ヅィリィもそのヤマトって奴と何かがありそうだった……


「俺も協力するよ、ヤマトを見つけるの」


「ロジカが、何故だ?」


「ヤヨイは大切な……仲間だから」


ヤヨイは少し間をおいてから微笑んだ。


「ありがとうロジカ。ロジカは少しヤマトに似ているな」


《絆が深まりました》


ん? 聞いたことのない言葉が聞こえてきた。

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