第9話 洞窟にやってきました
「はぁ……」
どうしてヤヨイといるとこうなるんだ。
集会所で黒服を着た4人組の1人ヅィリィを突き飛ばしてから逃げるようにクエストに向かった。
「なんだロジカさっきから、ため息ばかりついて」
「ヤヨイがいきなり突き飛ばしたりするからだろ、なんであんなことしたんだ?」
「突き飛ばしたつもりはない。 受付に向かうのに邪魔だったから退いてもらおうとしたら吹っ飛んでいったんだ」
「周りを巻き込むほど吹っ飛ばしたんだぞ……ちょっと悪意があったろ……?」
「私だって驚いてる、知らないうちに強くなってたんだ」
そういえばヤヨイは俺がテイムすると強くなることを実感してるわけじゃなかったか……。
最初にスライムに苦戦してたのにその後すぐオーガゴブリンを倒せたんだから気づいてもよさそうな者なんだけどな……
ヤヨイ鈍感そうだし、変に自信があるから実力だと思っちゃったのか。
しばらく歩いているとゴツゴツした岩に囲まれた洞窟についた。
「ここが今回のクエストの場所……」
洞窟の奥は薄暗く先が見えない。
今回のクエストはDクラスのクエストらしい、普通ならクエストを受けるのが2回目で受けさせてもらえるようなクラスではないが、オーガゴブリンを倒した実力を認められてのDクラスだそうだ。
でもこんな暗いところで強いモンスターがゾロゾロいたらマズイよな……
いきなり襲われたらヤヨイは大丈夫でも俺は一巻の終わりだ。
少し様子を探った方がいいか。
「ってちょっと待て! ヤヨイ!」
何も気にせずにヤヨイは洞窟の中に入って行った。
「ここが目的地なんだろ? 早く進むぞ」
「灯りも持ってないんだ、こんな暗い洞窟でどうやって」
「心配性だなロジカは、なんとかなるだろ、きっと」
ズカズカと暗い中を進んでいくヤヨイを止められず洞窟な入ってしまった。
外から見た通り、いきなり真っ暗だ……
入口の光が辛うじて指しているけど、もっと奥に行ったら何も見えないだろう。
「あっ……」
前にいるヤヨイの声がした。
と同時にヤヨイに服を掴まれる。
「崖だ……」
「バカ! 俺を掴むな! 一緒に落ち、うわぁぁぁぁぁぁ」
◆◇◆
顔に冷たい雫のようなものがあたった。
暗い……
確か俺はヤヨイに引っ張られて一緒に崖から落ちて、どれくらいかわからないけど気を失ってたのか。
「ヤヨイ、大丈夫か?」
暗くて何も見えないが、近くにはいるはずだ……
「ロジカ、無事だったか、私も大丈夫だ」
よかった、ヤヨイも無事そうだ。
隣にでもいるのか、何も見えない岩場を伝いヤヨイを手で探していると、暖かくて柔らかい感触がした。
「おい、どこを触ってる」
「えっ!? そ、そんなつもりは……」
どこに触れたんだ、俺は……なんかそう言われると意識してしまう。
「まあいい、無事でよかった」
「無茶をするからだ、ヤヨイはいつも無謀なことが多い」
「そんなことはない、つもりなんだが……」
顔は見えないが珍しく声が落ち込んでおる、こんな状況だ、流石にヤヨイも堪えたのだろう。
「問題はここをどうするかだよな……」
暗闇の中で、しかもDクラスのモンスターがいる洞窟。
ただで帰れるような場所じゃないだろう……
「よし、とりあえず進むか!」
「ヤヨイ、そういう所だぞ! 思いつきで動こうとしたからこうなったんだ、まずは落ち着いて考えよう」
「こいつの言う通りだ、いきなり動くのは感心しないな」
「う……そうなのか……」
なんか今、変な声がひとつ混じってなかったか……?
つい最近聞いたことがあるような……まさか?
「その声はヅィリィ……か……?」
「ヅィリィって集会所で私が飛ばした……まさかお前も崖から落ちたのか?」
「よく俺だとわかったな……そして貴様、俺を舐めてるだろ……崖から落ちるようなバカな真似をするか……自分からここへ向かってきたんだ」
「他の仲間は?」
「遅いから置いてきた……それだけだ」
なんか胡散臭いな……
「貴様ら……俺を信用してないな……」
ヅィリィがそう言うと暗闇の中からぼんやりと魔法陣が浮かび上がってきた。
魔法陣の中から光る球体が浮かび上がり、あたりを照らし出した。
「光……太陽みたいだ」
「洞窟が、明るくなった」
ヅィリィの力で洞窟全体が明るく照らされた。
すごい魔力だ、この男の力は本物だ。
「貴様らと同じクエストだったとは偶然だったな、洞窟を照らす術もなくよくDクラスを受けれたものだ」
「俺はイマイチでもな、ヤヨイの強さは間違いない、Dクラスくらいクリアできる」
「そんな手負いの仲間で大丈夫なのか?」
手負いの仲間……?
ヤヨイに目をやると、座り込んだまま手で右足首を抑えてる。
「ヤヨイ、怪我してるのか?」
「大丈夫、ちょっと挫いただけだ……」
挫いただけって、さっき暗闇の中進んで行こうとしてたじゃないか……
「集会所の礼をここでしてやってもいいが、そんなことしなくてもどの路貴様らはここのモンスターにやられるだろうな」
言い返す言葉が無かった……
周りには人間の骨があちこちに散らばっていて、この洞窟内での壮絶さがマジマジと伝わってくる。
「せいぜい後悔して、死んでいくといい……」
ヅィリィが進もうとしてすぐだった。
「いたいた、ヅィリィさーん!」
洞窟の中上の方から声がする。
見上げるとヅィリィに説教されていたフランとセリルと呼ばれてた女の子達がかなり上の方から覗いている。
「急に崖から落ちたからビックリしたけど無事で良かったです! すぐそっち行きます!」
元気な声だった。 フランとセリルは覗き込むのをやめ、こちらに向かい洞窟を進みだした。
「お前やっぱり崖から落ちてたんじゃないか」
ヤヨイの辛辣な一言にヅィリィは振り向かずプルプルと震えていた。
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