俺、異世界から戻って来たよね?

灯火

第1話

「くそー、暇だなー」

少年は丸いテーブルの横にある木の椅子に座りながらため息をした。

「ほらほら陸斗さん、指名依頼来ましたよ」

「なんで俺がやらなきゃいけないのー」

「なんで、と申されましても」

今年で16歳になりこの人族最強の剣士であり戦争の英雄であり千の武器を扱うことで千剣王センケンオウと二つ名で呼ばれた赤羽陸斗はたったいま指名依頼を放棄しようとしていた。

「あなた一応英雄でしょ」

「一応とはなんだ!」

「なんどでも言いますよ、一応」

「くっそー!、確かに日頃の行いからしたら一応の部類に入るな」

三年前にこのディルード王国の勇者召喚の手違いでこの異世界に来て理不尽に国の為に戦えと言われて反発して王城から飛び出して一人で異世界を放浪しながら魔獣を倒してお金をもらい生計を維持してのんびり過ごしていたら、各種族との戦争が始まりちょうど人族と悪魔族の戦争の戦場で武器の試し斬りをしていたらうっかり悪魔族の軍勢六万を一気に殲滅して王国の主戦力となり英雄となってしまい色々な面倒事や厄介事に巻き込まれて隠居しようとしたが、あっさり連れ戻されてこの酒場のマスターとして現在働いている。

「はぁー……英雄の千剣王センケンオウが好きないまの子どもたちが見たら泣きますよ」

「まず、勝手に英雄されただけだから、子どもに泣かれるもなにも俺はこういう人間だ!」

「凄いドヤ顔してかっこよく言い切った顔してますけど全然かっこよくないですよ、逆にださいしキショい」

「ふーん…それしかいえないのか……」

陸斗はエヴァにド正論を言われて焦りなが

ら腕を組んで言った。

「とりあえず依頼の準備してはやく」

「てかさー、今度はなに?」

「えっーと、銀狼ですね」

「えぇー、だるいよー」

「銀狼なんて、陸斗さんしか倒せないですよね」

昼間からダラダラとしている店長の陸斗は副店長のエヴァに指名依頼の紙を渡された。

陸斗はいつもとてつもなく高難易度の依頼ばかり依頼されてうんざりしていた。

「エヴァってさー、仕事は出来るけど人の扱い雑だよね」

「アホなこと言ってないで、早く依頼に行ってください」

エヴァはある商会の跡取りだったが、英雄の陸斗にスカウトされて憧れを胸に陸斗の手伝いをしているが今は完全に陸斗の起こした問題や始末の尻拭いをしている。

「よし決めた!」

「どうしました?」

陸斗は突然立ち上がり鼻歌を歌いながら酒場の床に魔法陣を描き始めた。

エヴァはまた陸斗が問題を起こさないか確認しようと陸斗の手を掴み魔法陣を描くのを止めた。

「今度はなんですか?」

「俺さー、地球に帰るわ」

「はあ!?」

「えっ……」

陸斗は唐突に酒場の副店長のエヴァに言うと、エヴァはまるで凶暴なモンスターを見るような目をした。

「えっ…なに」

「何言ってるんですか!?」

「いや帰ると言ったんだか」

「考え直してください」

「いやだ!、帰る」

陸斗とエヴァは言い争っている内に陸斗は足の先端で魔法陣を描き終わり徐々に魔力を流していった。

「ちょっと、陸斗さん魔力流さないで!」

「よし!、来たーー!」

陸斗が魔力を流し終わると魔法陣は光り輝き陸斗の身体はキラキラと消えていった。

「陸斗さん!」

「では!、さらばだー!、ちょっと変えてサラダバーイキング!」

陸斗はくだらない言葉を放って酒場から魔法陣と共に消えていった。

「よし帰って来たーー!」

陸斗は魔法陣から姿の実体化を完了して地球に帰って来たと喜んでいると、目の前に見た事のあるデカい二角の生えた四つん這えの黒いモンスターがいた。

「おい、こいつまさか」

陸斗は驚いていると目の前のモンスターは 陸斗を見て二角を地面にぶつけて角を引きずりながら陸斗に突進してきた。

陸斗は直ぐに盾をを異空間から取り出して目の前のモンスターの突進を防いだ。

「残念だったな、この盾はめちゃくちゃ頑丈で外面に触れたら猛毒になるんだぜ」

目の前の二角の黒いモンスターは苦しみながら暴れ始めた。

「ていうか、なんで地球にベヒモスがいんだよ」

陸斗は先程いた異世界のモンスターの雷を纏う厄災級のベヒモスを見て、三年前にいた地球とは違う事に気づいた。

「あの世界のモンスターが地球にいるのか、めんどくせーがやるしかないな」

陸斗は少しニヤつきながら異空間から紅い剣を取り出して盾を異空間にしまいもう一つ蒼い剣を取り出して二つの剣を構えて深呼吸をしてボソッと「俺、異世界から戻ってきたよね?」と言った。


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