使用人は休みたい
「あ゙ー。風呂はたまらん」
俺は一階にある浴槽の風呂に漬かり、どっと溜まった疲れを癒していた。
漫画みたいに頭の上にタオルを置いて、肩まで浸かっている。
お嬢様に振り回される、激務の中にあるつかの間の休息。
そうだよ。もう少し俺にも休みくれよ──
「蓮二ー!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺はバシャりと水しぶきを立て、脊髄反射で風呂の中に潜った。
そして、状況を確認すべく顔を出した。
「何してるんですか!?」
そこには、お風呂場のドアを全開にしたカレン様の姿があった。
タオルは付けている。見えないものを見ようとしたら見えそうなので、なるべくカレン様を見ない方向で行こう。
「カップルならお風呂ぐらい一緒に入るでしょう?」
……入らねえよ。
思ったよりも、カレン様の男女の在り方に対する観念は歪んでいるようだった。
「普段私のために頑張ってくれる蓮二に敬意を表して、身体を洗ってあげるわ」
タオルを巻いて、こちらへと近づいてくる藤宮家の長女。
少しは恥ずかしがれよカレン様……仮にもお前はJKなんだぞ!
ち、ちらっと俺はカレン様の方を見る。コンタクトを外しているからボヤけてしまっているが、胸のふくらみが小さいことだけは確認出来た。
これほど、自分の目の悪さを恨んだことは無いが──
「せ、せめて後ろ向きにさせてくれませんかね!!」
結局、俺は必死に股間を隠しつつ、タオル一枚のカレン様に背中をゴシゴシ洗われていた。さっき自分で洗ったんだけどね。
「──どう? ポケットモンスターはスタンダップしてる?」
「そんなこと聞かないでください」
隠語を駆使して俺の下半身事情を気にするカレン様。一体何がしたいんだ。
今、俺は必死に理性と戦っている。カレン様はとても可愛いし身体も魅力的だからなんか反射的にアレが起立しそうになる。これは生理現象だから仕方ない! ポケモンも、俺が必死に沈めている!
ラノベでよくあるシーンだが、あいつらマジで溢れ出る性欲をどこで消費してんのか!?
性欲の代わりに生成されたのが、承認欲求なのか!?(意味不明)
「あー、あき竹城、あき竹城あき竹城あき竹城……」
「何よそれ! 連呼するなら私の名前にして頂戴」
「下半身を沈める魔法の言葉です」
「へ〜。そうなんだ〜ふーん」
「痛い痛い痛い痛い! カレン様! もう背中はいいです!」
そして俺は股間を隠しつつ、そそくさと上がろうとした。
もう、耐えられん。
「ねえ」
カレン様は居なくなろうとする俺の手を引いた。そして、なぜだか背中に柔らかい感触が訪れた。
──俺は、考えるのをやめた。
隙を見て、奴に
「一緒にお風呂入ってくれないと、蓮二に胸触られたってお父様に言いつけるから」
「それはやめてください!! マジで!!」
卑怯な手口を使われ、結局お風呂に二人で入ることになった。
広さ的には問題は無いのだが、何故俺がカレン様と混浴せねばならんのだ。
休ませてくれよ。俺は一人の時間が欲しい……。
「どう? 二人でお風呂」
カレン様は足が当たるか当たらないかぐらいの距離にいながら、幸せそうな顔をして聞いてくる。
「どう、って……」
そりゃ最高ですけど?
女の子と、ましてやカレン様とお風呂だぞ?
嬉しくないわけないだろ。
……とはいえ、
「胸、小さい?」
「そんなことないと思いますよ──」
ちゃんと見てないけどな。
カレン様は、恥ずかしがってそっぽを向いた。
「はは」
「……」
──突然訪れる、謎の気まずい空気!!
カレン様は、自らの胸の大きさを気にしていらっしゃる。
個人的には巨乳より貧乳が好きなので、ガチで俺はカレン様のそれは好きだ!!(変態)
だがしかし、彼女は俺にとって妹のような存在……妹に欲情する兄などあってはならない。
──そう、ここから導き出される《答え》は!!
「たしかに胸は小さいですけど、きっと、それは誰かに栄養をおすそ分けしているからじゃないでしょうか」
俺は笑顔に努めてそう言った。
そう、《セクハラ》である。
「……今すぐ解雇してもいいかしら」
「やめてください! マジですみませんでした!!」
結局、カレン様はしばらく口を利いてくれなくなりましたとさ。
理不尽すぎる。
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