コンビニに行こうと思ったら戦国時代にタイムスリップしてました。
悠華
プロローグ
「あらおかえり、彩花」
家に帰ると、歪んだ笑顔の母がリビングで待っていた。口元は笑っているのに、目は笑っていなくて今にも獲物を狩る虎のようであった。
その場に立ち尽くしていると、足音も立てないでこっちに向かってくる。
「こんな時間まで何してたの?心配しちゃうから7時までには帰ってきてちょうだいね」
口では心配する素振りをするが、本当は何も思ってないに違いない。警察に補導されても、何も感情が沸かない人だからだ。
「今日の三者面談、ほんとビックリしちゃったわ。まさか、まだそんなくだらない夢を追ってるだなんて思ってなかったものね」
手にはぐしゃぐしゃになった進路希望調査用紙が握られていた。第一志望の大学はボールペンで塗りつぶされている。
だめだ、この場にいてはいけない。
本能で察した私は、はやくこの家から逃げるべきだと思った。だが、家から出てどうする?友達に迷惑かけてはいけないし、公園で一夜を明かすのもリスキーだ。
あれこれ考えているうちに、母は私の目の前に立っていた。
「史学科に進みたいだなんて。大学出ても、就職しにくい学科に進んでどうするの?しかも、こんな偏差値の低い大学は許さないからね」
許せない
自分の進路を否定するのはまだ許せるが、大学のことまで否定するなんて。絶対に許せない。
だが、ここで母に逆らったら高校すら卒業できやしない。だが、私はもう限界だった。
「待ちなさい、彩花!!」
後ろで私のことを呼ぶ声が聞こえたが、もう我慢の限界だ。
蹴破るように玄関のドアを開け、閑静な深夜の住宅街へと飛び出した。
飛び出したはいいが、お腹も空いたしどうしようか。そうだ、コンビニに行って、おにぎりでも買って公園で一夜を明かそう。
あんな家にいるよりはマシだ。
そう考え、一人で暗闇を歩き近所のコンビニまで向かっていた。
梅雨明けのジメジメとしか空気の中、まばゆい蛍光灯と冷たいクーラーの風を全身で感じながらコンビニへ入った瞬間。
視界が真っ白になり、私の意識は途絶えた。
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