神様ガチャで魔獣王ベヒーモスの力を手に入れて体は最強!頭脳は最弱!

平成忍者

1章

プロローグ

 久しぶりの通学路をトボトボとあるく少年がいた。

彼の名は鳥栖信太郎、停学が明けて一か月ぶりの登校である

長身に整った顔立ち、細身でありながら筋肉がしっかりとついた男だ。

だがそんな彼には致命的な欠点があり、今回の停学もそれに関係している。

ちなみにその欠点のせいでごく一部の例外を除き、異性にまったくモテない。


「信ちゃん?」


 信太郎が自分の名を呼ぶ声に振り替えると、ポニーテールにした亜麻色の髪を風になびかせて、美しい少女が小走りで駆けてきた。


「やっぱり信ちゃんだ。停学復帰おめでとう!」


「おう、ありがとよ!」



 彼女の名は木山マリ。

アメリカ人ハーフである彼女は女子高生にしてはやや高めの身長で、グラマラスな体型をしている。

学校の誰もが可愛いと口を揃える整った顔立ちをしていて、アイドルとしてスカウトが来たことも何度かあるらしい。

性格や運動神経も良く、友人も多い完璧な美人といってもいいだろう。

実はひとつだけ致命的な欠点があるがそれを知る者は少ない。



 彼女の後ろから見知った顔の男がひぃひぃと息を切らせてついてくる。

信太郎の幼馴染である西村次郎だ。

信太郎、西村、マリの三人は幼稚園からずっと一緒に過ごした幼馴染である。

息を整えた西村は遠慮がちに口を開く。



「ところでさ、あの噂本当なのか?」


「あの噂ってなんだ? 西やん」


「バスケの試合後に相手校の選手殴ったって話だよ」


「……部のみんなや顧問の先生には本当に申し訳ないって思ってるよ」


「なんだってそんなことを……? 理由、あるんだろ?」



 信太郎は口をつぐむ。

信太郎にとってこれは初めての停学ではない。

以前はサッカー部だった信太郎は質の悪い先輩とトラブルを起こした。

それは先輩にイジメられていた学友を守るためのものだった。

一応話し合いでどうにかしようとした信太郎だが、彼は口の上手い男ではない。

当然ケンカとなり、相手を大ケガさせてサッカー部を追い出されてしまった。



 多くの運動部が信太郎を避ける中、迎え入れてくれたのがバスケ部だった。

顧問もキャプテンも事情を知っていて、温かく迎えてくれたことが信太郎にはとても嬉しかった。

頭が残念な分、身体能力はすさまじいと言われている信太郎が入部したのだ。

ルールを覚えるのにかなり苦戦した(実はまだよく分かってない)が、エースとして活躍する信太郎によってチームは勝ち続けた。



 だが県大会の準決勝の日に事件は起こった。

格上の対戦校に勝利し、チームメイトと喜び合っていた時だった。

相手校の選手が信太郎チームのキャプテンへと暴言を吐いたのだ。

乞食野郎と。



 キャプテンの家は貧乏だ。

彼の両親は子供たちを養うために朝から晩まで働いている。

中学時代のキャプテンはお金がなく、仲の良い先輩などからバスケットシューズを貰ったりしていた。

そのせいで一部の生徒から乞食と馬鹿にされていたことがあった。

同じ中学でそれを知っていた相手校の選手がキャプテンをバカにしたのだ。



 暴言にいつも笑顔のキャプテンが表情を消し、思わず握り拳を作る。

だが彼はチームのために踏みとどまった。

凍り付く雰囲気の中で真っ先に動いたのは信太郎だった。

チームの仲間に止められながらも、さらに暴言を吐こうとする男の鼻面に拳を叩き込んだのだ。

そして信太郎は停学になり、どちらの高校もスポーツマンシップを欠いていたとされ失格となった。



「信ちゃんは悪くないよ! ちょっとエキサイトしちゃっただけだよね?」


「いや、もっとほかのやり方とかさ……」



 マリがトラブルメーカーな信太郎をかばうのにはいくつか理由がある。

理由の一つは彼女がダメンズ好きだからだ。

美形だが、頭が残念な信太郎はマリの好みドストライクなのだ。

そのせいか頭の良いはずのマリは、信太郎のこととなると途端にポンコツと化す。



「もう運動部には入れそうにないや」


 少し悲しそうな太郎にマリは慌てる。



「運動部が駄目でもまだ文系の部活があるじゃない! 料理部とか将棋部とかどうかな?」



 その言葉を偶然聞いていた登校中の将棋部男子生徒がギョッとする。

信太郎は悪い奴ではないが、学校ではトラブルメーカーとして有名だ。

何をやらかすか分からない信太郎を恐れる生徒も多い。



「文科系かぁ。それもいいかもな。部員や先生に謝ったら探してみっか」



 ようやく停学が明けたのだ。

学校の運動部にはもう入れそうもないが、これからは文系の部活で頑張ってみよう。

気持ちを切り替えた信太郎は、先ほどとは変わり力強く歩を進める。

そのときだった。

信太郎の足元が眩い輝きに包まれたのは。



「なっ!? 信、どうしたんだ!? どうしてお前光ってるんだ!?」



 西村は驚きの表情を浮かべるが、それに対して信太郎は動じてなかった。



「さあ? オレ頭悪いから分かんねえよ。まぁ、世の中不思議なこともあるし、そういうこともあるんじゃねーか?」


「ないよ、絶対!」



 能天気な信太郎に西村は絶叫する。



「信ちゃん、何か悪いものでも食べたんじゃない?昨日何食べたの?」


「いやいやいや! そんなんで光るはずないでしょ!? てかマリちゃん、信太郎のことになるとIQ下がりすぎじゃない!?」


「昨日何食べたかなんて俺が覚えているわけないだろ? 常識的に考えて」


「お前大丈夫かよ!? 二つの意味で!」



 驚愕の表情でツッコミまくる西村の前で、その光は魔法陣のように形を変え、信太郎とその隣にいたマリを包み込む。

そして目を開けていられないほどの閃光が奔った。

西村が目を開けると、アスファルトの上には太郎とマリのカバンだけが取り残されていた。

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