第11話 新たなる本の主
「私たちの世界は、本が来るとその空白の本に魔術を書き、更に能力を高めるというのがあるの」
クッキーを口一杯頬張りながら、再び語り始めたヒカリ。真剣な雰囲気に、アカリとルカに緊張感が走る
「本の内容は、火の魔術や水の魔術、治癒に特化したり、バランスよく書き込んだり。ただ本を書くということだけでも、人それぞれ、一つとして同じ本や魔術は無いわ」
「そして、書き終えた本は、ページを切り取り巨大な書庫に保管されて、私達はまた新たな本の主を捜しに行くの」
「……はぁ」
現実感の無い話に、どう言えばいいか分からず顔を見合わせるアカリとルカ。戸惑う二人に対しマイペースにクッキーを食べるヒカリ。頬張ったクッキーを一枚食べ終える頃、また話始めようとした時、カタンと物音が聞こえた
「それで、新たな本の主として貴女の元に来たのよね」
聞き慣れない声が聞こえて、声のする方に振り向くと、部屋の窓辺に、こちらを見て微笑んでいる、不思議なウサギのぬいぐるみ。ふわりと浮いて、ヒカリの元に向かっていく
「変な格好しているじゃないの。ヒカリさん?」
「そっちに言われたくないわ。リリ」
「なんですって!」
突然現れ、ヒカリと言い争い騒ぎはじめた見た目はウサギのぬいぐるみに、アカリとルカがキョトンとした表情で見ている
「……誰?」
「私の本。リリって名前」
「へ?」
突然、また知らない声が後ろから聞こえてきた。二人の間に知らない女の人がクッキーを食べていた
「美味しいのね、このクッキー。もしかして、手作り?」
「は、はい。そうですが……」
ルカの返事を流し聞きながらベットに座って美味しそうに食べている女の人。全て食べ終えると、騒ぎ続けるリリ達を無視して、アカリとルカの二人の顔を交互に見ている
「あなたがアカリちゃんよね?私はユイ。アカリって呼んでいい?」
「は……はい」
アカリに顔を近づけてジーっと見るユイ。一つに束ねた長い髪がアカリの頬に触れている
「な、なにか……」
恐る恐る聞くアカリに、ポンポンと頭を優しく叩いて微笑んだ
「あんな本の持ち主なんて大変ね。なにか困ったことあったら聞いてね」
と言うと、ベットから立ち上がり、騒がしいヒカリとリリの方を向いてパンパンっと手を叩く
「リリ。いつまで遊んでるの?用はそっちじゃないでしょ?」
ユイの注意に、言い争いを止めるヒカリとリリ。状況が読めないアカリとルカを横目に、その二人の間にいるユイを見て、ヒカリがクスッと笑う
「それにしても、久しぶりね。元気にしてた?」
笑うヒカリを見て、つられてリリも微笑み返す
「おかげさまでね。それで会ってすぐ悪いけど、ちょっとアカリを借りるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます