第7話 意地悪な朝

「んー……」

 気持ち良さそうに眠るアカリ。その眠りを妨げるような声がうっすら聞こえてくる

「ねぇねぇ、アカリ。さっきから、これ鳴っているけど、起きなくて良いの?」

 少しずつ目が覚めてくると、段々と聞こえてくる話し声とピピピと鳴る音。話し声にパチリと目が覚めて、慌てて目覚まし時計を見る

「えっ?……遅刻!」

 大急ぎでベットから降りて制服に着替えると、バタバタと一階に降りていく

「お兄ちゃん、おはよう!」

「……おはよう。目覚ましうるさいのに、よく寝れるな」

 リビングにいた兄のミツキに挨拶をすると、急いで椅子に座って、急いで朝ごはんを食べ終える

「お兄ちゃん、行ってきます!」

 起きてすぐ、あっという間に学校へ行ったアカリの騒がしさが無くなって、静かになったリビング。一人朝ごはんを食べ始めるミツキ。昨晩、ミツキの部屋の隣であるアカリの部屋が騒がしかったのを、ふと思い出している

「アカリにも、やっぱり本が来たのか……」

 一口コーヒーを飲んで、ふぅ。と小さくため息をついた

「母さんも意地悪だな……」





「おはよう!」

 息を切らして教室に入ったアカリ。今日もガヤガヤと騒がしい教室に、アカリの声に気づいたルカが、手を振って呼んでいる

「おはようアカリちゃん。ギリギリセーフだね」

「う、うん……。おはよう、ルカちゃん」

 ルカと話しながら、隣の席に座って、ふぅ。と息を整える

「アカリちゃん、悪い夢見たの?」

「う、ううん。大丈夫だよ」

「今日も、帰りに寄り道する?」

「んー。どうしようかなぁ」

 二人が楽しく話していると、教科書を出すために膝の上に置いていた、アカリの鞄がゴソゴソと何やら動いている


「そうね、今日は甘い紅茶とお菓子が欲しいかしら」

 

「へ?」

「えっ?なに?今の声……」

 突然聞こえた、二人とは違う声。キョロキョロと周りを見渡す二人。だが周りにいるクラスメイトは二人に話しかけてない様子。不思議そうに顔を見合わせているとまた、話し声が聞こえてきた

「アカリ、買ってくれる?」

 聞き覚えのある声に、慌てて鞄を広げると教科書の間からヒカリが顔を出していた

「えっ?なんで?付いてきたの?」

「もちろん。いつもアカリと一緒にいると決めたから」

「だからって、なんで学校まで……」


「ね、ねぇアカリ……」

 二人がヒソヒソと小声で言い争っている姿に、隣にいたルカの戸惑う声がする。固まるアカリに対し、ヒカリは手を出してルカに握手を求めた

「あら、初めまして。私はヒカリ」

「は、初めまして……」

 戸惑いつつも握手をしていると、始業のチャイムが鳴った

「お、お願いだから、学校終わるまで静かに、ねっ!」

「だから、甘い紅茶と……」

 ねだるヒカリの口を慌てて押さえて、話を無理矢理止めるると、ヒカリを鞄の奥に押し込んだ

「わかったから。買うからお願いだから静かにねっ!」

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