第6話 不満や不安は、明日に任せて

「ねぇ……本当に、本なの?」

 アカリの部屋では、アカリが本から変わったヒカリの姿をジーッと見ていた

「そうよ。私はヒカリ。あなたが名前つけて、私を呼んだのよ」

 机に座って、アカリの質問に答えるヒカリ。ずっと見ているアカリの視線にも気にせずマイペースに過ごしている

「私、本なんて呼んだ覚えは全く無いけれど……」

「まあ、気にしないで。そんなもんだと思ってくれればいいし」

「……はあ」


「ところでアカリ」

「は、はい!」

 急に名前を呼ばれて、声が裏返りなぜかピシッと背も正して、机にいるヒカリにあたふたと顔を向ける。そんなアカリにクスッと笑って用件を話した

「何か飲み物無い?喉が乾いたの」

「は、はぁ……」



「何で私、こんな夜中に飲み物持ってきてるの?」

 不満を言いながらも、キッチンから持ってきた紅茶をヒカリと一緒に飲んでいく

「あら、細かいこと気にしてたら、この先やっていけないわよ」

 陽気に話すヒカリに不満そうな顔をするアカリ。パッと見は、美味しそうにぬいぐるみが紅茶を飲む姿に、ちょっと首をかしげる

「おかわり」

 空になったコップをアカリに渡して、ヒカリはご機嫌な様子。無言で受け取って紅茶を継ぎ足してく様子をアカリの見て、更にご満悦な表情

「美味しいのね、この世界の飲み物は。前の時と全然違うわ」

 アカリが持ってきた紅茶に、満足げに飲み続けるヒカリをまだまだ不信そうに見ながらも、また一緒に紅茶を飲み続けてく。ティーポットの紅茶も飲み終える頃。ヒカリがうーんと背伸びをすると、ふわふわ浮いてアカリのベットに着くとふぅ。と疲れた様子で横になる

「さて、そろそろ眠らなきゃね。アカリも眠らないと」

「誰のせいなの……」




「それじゃ、おやすみ。目が覚めたら良いことありますように」

 コップの片付けもしないまま、一緒に布団の中に入って、眠ろうとするアカリとヒカリ。隣にいて、もうこの状況に馴染んでいるヒカリにアカリは不満そうな顔

「あら、何か不満?」

 その表情に気づいて、アカリの頬をちょっと触る

「私、何も聞いてない……。結局なんなの?」

 頬を触るかわりに、何にも答えないヒカリに不満げなアカリ。その顔や雰囲気にクスッと笑ってアカリの右側、枕をちょっと奪う

「それは、起きてからのお楽しみにしましょ」

 その言葉を聞いてアカリは体を横に向けて、ヒカリを見てムスッとちょっと怒った顔になっている。それに気づいてもヒカリは目を瞑って、一足先に眠りにつく

「今度こそおやすみ。良い夢を……」

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