さまよえる指紋
接人
第1話 夢から覚めるとき
夢を見た。
どこか見覚えのあるような、ないような風景の中、誰かと親しげに話していたあたりで目が覚めた。よくあるパターンだと思う。その誰かは今もよく知っている人だったり懐かしい顔だったりする。
たまに、なんでこいつが、みたいな人のときもあるし、誰だかよくわからない人のときもある。そんな時、寝起きの、まだかすかに夢で見た景色が残る鈍い頭で、すんなりしないどこか腑に落ちない気持ちだけが残って、しばらく反芻されるがままとなるのが好きだ。
といっても、時計を見ればほんの数分のこと。体を起こし、ベッドから降りた時点ですぐにそんな気持ちはどこかに片付けられてしまう。
人間は、それが愛であれ憎しみであれ、他者に強い執着を覚えることもあれば、徹底して無関心にもなれる。夢の中のよくわからない人に抱くこの気持ちは、そのどちらとも違うようだ。
何をどうしたいというわけでない、とてもふわふわと掴みどころのないこの気持ち。夢の中、目覚めのときでなければ、とてもそんなあやふやな気持ちではいられないに違いない。
またその内きっと似たような夢を見る。何となく釈然としない、でもそれが不快なわけじゃない。ただぼうっとしていられる。起きているときもそんな気持ちを受け入れることができたなら。いや、それは望んでないんだろう、たぶん、きっと。
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