またしても
「何で……」
爆発の煙が充満する部屋で、有里は呆然と呟く。
表情を失った彼女の顔が、俺の胸に突き刺さった。
時を、遡る。
俺たちは蒼の力強い言葉を受けて、和やかに笑っていた。
いきなり、顔色を変える事なく、蒼が有里の日記を、窓外に向かって、つまり、外に向かって、思い切りよく投げ飛ばした。
ふわふわと外へと去っていく日記を、困惑の顔を覗かせる暇もなく目で追いかける俺らに、蒼はある言葉を叫んだ。
「何かに掴まれ!」
皆が咄嗟に近くのものを掴む、その瞬間に、音が消えた。
目の前が煙に包まれて、とんでもない力が身体に降りかかる。
皆の悲鳴が響いた気がした。実際には、まるで音は聞こえない。煙で目も開けられない、本当の暗闇。
身体を襲う力が抜けると、俺は何かが喉から迫り上がるような感覚を覚える。
「げほ、げほっ!!……はぁ」
不幸中の幸いとも言うべきか、痛みはそうでもなく、口から出たのは胃液だけのようだ。
とりあえず冷静になろうと、一息つく。
(3回目ともなりゃ慣れるんだな)
自嘲気味に、ニヤリと口を歪めて、俺は周りに見えるものがあるか見回す。
そして、時は一致する。
「何で……」
有里の声が聞こえてきて、その声が俺の胸に突き刺さる。だが、彼女が無事なことに安心した。
彼女は
彼にも怪我は無さそうだった。
他の皆も、恐る恐る目を開け、手を離して真っ先に周りを見回して、ほっとした顔をする。
「どいつもこいつも他人の心配ばっかりか。馬鹿者共め」
蒼の、動揺が感じられない少し高めの声が、不気味に静かすぎる部屋に伝わる。
「何で分かったんだ」
言葉が出ないらしい有里に代わり、俺が低い声で問う。
蒼は俺の声に物静かに答える。
「僕の体、見てみろ」
そう言って、蒼は身体をふわりと反転させ、後ろ向きになる。
目を凝らすと、見覚えのある黒い球があった。
「上書き装置……」
蒼は、良く出来たな、とばかりに頷いて、話す。
「僕がお前達に協力することは分かっていたんだろうね。
僕はオークションを憎んでいるって普段から言ってるようなものだったから当たり前か。
政府の奴らは、有里の装置が、爆発の時から外れて壊れたために、君たちの生存を知って、僕を狙ってくるだろうと思った。
そして、お前たちに『上書き装置』の話を聞いて、さりげなく、鏡で全身を見てみた。それだけのことだ」
こんな装置付けなくても、僕を殺すなんて力さえあれば簡単だったろうに、と妖しく笑う蒼を見て、俺は、
誰であろうがこいつは殺せない、と、そう思ってしまった。
「日記の事はすまんな」
彼女を抜いた皆が、息を呑む。
案外あっさりと有里に頭を下げる蒼に、
彼女の方が慌てた。
「いや、必要な事だった! 仕方ないさ!」
皆がいることでなのか、彼女は、生きる糧、とまで言っていた日記を失っても、冷静だった。
有里が驚きに目を見張る。鋭い音の後、みんなの叫びが木霊する中、彼女は身をふわりと浮かばせる。
「有里!!」
「何処から撃ってきてるんだ……!?」
彼女を揺さぶる
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