恋愛広告でジョギングデートの相手を募集したら文学少女が釣れた話
■あらすじ
高校の構内でSNSのグループチャットに恋人募集の広告を貼る恋活が流行していた。お試し感覚の軽いノリと、相手の素性がハッキリしている堅実さが人気の秘密のようだった。
陸上部の少年(以下、陸上少年)がダメ元でジョギングデートに一緒に行ってくれる女子を募ると、意外にも数日後にメッセージが届く。差出元は同じクラスの読書好きの少女(以下、文学少女)だった。酔狂な人もいるもんだと自分を棚に上げつつ早速週末の約束を取り付ける。女の子とのジョギングデート。それは陸上少年の小さな夢だった。
河川敷と高台を回るジョギングコースを設定し、小手調べに軽く走ると、文学少女はゼエゼエと荒い息を吐く。普段走っていないことが丸わかりだった。陸上少年はガッカリしたが、一緒に走るうちに考えを改める。
ゆっくりだけど止まることなく、諦めることなく、懸命に足を進める。長距離を始めた頃の陸上少年や初恋の少女を思い出すたどたどしい走り。ゴール地点に駆け上がり、広がる景色に文学少女が感嘆の声を上げた。自力でたどり着いた高台から見下ろす景色は最高だった。
初デートの後、互いを知るため互いの部活を掛け持ちしないかと文学少女に誘われ、陸上少年は文芸部、文学少女は陸上部に体験入部することに。負担にならないよう相手の部活は週一ペースとした。
デート明けの月曜日、陸上少年は初恋の相手、恋愛広告のことを教えてくれた後輩の少女(以下、後輩少女)に呼び出される。後輩少女といえば先週の部活帰りを思い出す。彼女が欲しいとこぼしたら後輩少女に辛辣に言われたのだ。陸上少年が恋人を探すなら噂の恋愛広告に手を出すくらいの必死さが必要だと。
ためらいがちに、先週の彼女の話ですけど──と切り出された後輩少女の言葉を陸上少年は遮る。彼女探しはもう大丈夫と。文学少女との仲が彼氏彼女まで発展するかは未知数だけど、もう少し付き合ってみようと決めていた。
約束していた体験入部で、まずは陸上部に行き文学少女の手ほどきをした。借りてきた猫のようになる文学少女を手取り足取り教える様子に、陸上少年は二人の仲を部活仲間から冷やかされる。珍しく仲間の輪に加わらず元気のない後輩少女に心配の声をかけると、なぜか睨まれてしまい困惑した。
続けて訪れた文芸部はあまり本を読まない陸上少年には新鮮だった。緊張でアタフタする文学少女に初心者向けや陸上関係の物語を見繕ってもらい、二人並んで穏やかな時間を過ごした。文学少女の友人から向けられる品定めの視線には終始落ち着かなかったが。
数巡目の文芸の日に文学少女が爆弾発言をする。もしかして後輩少女と付き合ってる?咳き込んだ陸上少年が理由を問うと文学少女は呆れたようにため息をついた──これが少女マンガなら、きっと自分は物語を盛り上げる当て馬に違いない。
学年が上がり互いの部活にも慣れた頃、出しっぱなしで忘れていた恋人広告にもう一件のメッセージが届く。後輩少女からだった。直接用件を聞くためその日の文芸部を休むことに。事情を文学少女に伝えると複雑な表情でうなずいた。
テスト期間と陸上の大会準備が連続し、陸上少年は文芸部に顔を出せない日が続く。文学少女と生活がすれ違う中、大会前の合宿でしばらく連絡が取れない状態になる。
合宿帰りの日、陸上少年は文学少女に避けられていることに気づく。なかなか捕まらない文学少女を彼女の友人の協力で確保し、陸上少年を避けていた理由を問うと、文学少女は言いづらそうに答える。
広告で恋人募集を続けたのは文学少女に不満があるからかもと不安になった。それに、と文学少女は拗ねた顔でこぼす。後輩少女は陸上少年とお似合いで、傍から見たら恋人同士のようだった。会って別れを告げられたら、そう考えると怖くて逃げ回っていた。
陸上少年は誤解を解く。後輩少女に告白されたものの断ったこと。
ホッとした顔の後、しばし逡巡してから文学少女は秘密を打ち明ける。部室から見える道路を本当に楽しそうに走る陸上少年の姿が気になっていたこと。話しかけたいけどタイミングが掴めなくて。そんな時友人づてに知ったのがあの恋愛広告だった。
初デートのやり直しとして、河川敷から高台に至るジョギングコースを二人で走る。文学少女は以前とは違うしっかりとした足取りで。たどり着いたゴール地点でどうだ私もやるでしょとドヤ顔をする文学少女に、陸上少年は不覚にも笑ってしまった。
■物語の障害
・陸上少年は誰かと一緒に走りたい。
→恋愛広告で一緒に走ってくれる彼女を募集する。
・文学少女は自分に自信がない。
→恋愛広告を切っ掛けに陸上少年に声をかける。
→後輩少女の告白の後、振られるのを恐れて逃げ回るが捕まる。
・後輩少女は素直になれない。
→陸上少年に彼女が欲しいと話を振られた際、恋愛対象として見られていないことに怒り、意趣返しに恋愛広告の噂を教える。
→彼女に立候補しようと決心するも、もう必要ないと両断されて意気消沈する。
・後輩少女は陸上少年と文学少女がお試しの付き合いなことを知らない。
→恋愛広告によるお試しの付き合いであることに気づき、まだチャンスはあるかもと思い直す。
→陸上少年に告白して玉砕する。
■登場人物
・走ることが大好きな陸上少年
高校二年。陸上部で長距離を走っている。
走るのが大好きで、心の底から楽しんで走り回っている。近所の歳の離れた幼馴染に影響されて長距離を始めた。幼馴染とその恋人のジョギングによく混ぜてもらっていたが、二人が本当に幸せそうに走るのでジョギングデートに憧れている。
好きなことには愚直に突き進むタイプで、考えるより先に行動する。面倒見が良く、後輩には慕われている。苦手なことはサボりがちで球技や勉強は苦手。
誰かと一緒に走りたい欲求が強いため、競技よりも趣味として走る方が好き。
後輩少女は初恋の相手。中学の陸上部で子犬のように懐く後輩少女が気になっていたが、彼女には他に好きな人がいると勘違いしたまま諦める。今はもう恋愛感情は落ち着いているが特別な存在なことに変わりはない。好きな女子のタイプが後輩少女そのままだったり微妙に拗らせている。
・陸上少年に憧れる文学少女
高校二年。文芸部で小説を書いている。
皆部活制なので趣味の読書繋がりで仕方なく文芸部に入る。最初は読書専門だったが、部室から見える校舎外の道路で、キラキラした表情で走る陸上少年の姿を見かける。自分も陸上少年のように真剣に打ち込めるものが欲しいと思い、小説を書き始める。
引っ込み思案で人付き合いや友達を作るのが苦手。何かに打ち込んでいる人に憧れがある。妄想癖がありボーッとしている時は大概しょうもないことを考えている。
後輩少女のことを陸上少年の彼女だと勘違いしていたが、恋愛広告が出されたことで二人が付き合っていないことを知る。勇気を出して友人の教えてくれた恋愛広告に飛びついたことで後輩少女との立場が逆転する。
陸上少年と文学少女を登場人物にした妄想小説を書いていたことが文芸部の友人にバレ、絶好のからかい兼おどしネタにされている。
・陸上少年と仲がいい後輩少女
高校一年。陸上少年の中学陸上部時代からの後輩。
陸上は友達の付き合いで始めて最初はやる気がなかったが、本当に楽しそうに走る陸上少年に憧れて隣を走りたいと思うようになる。陸上少年とは時折一緒に帰る仲で、校内で一番仲良しな自信がある。
素直で活発な性格のキャラ作りをしているが、内実がヘタレなので本当の気持ちには素直じゃない。毎年、陸上少年に告白しようとしては理由をつけて先延ばしにしてきた。
陸上少年に彼女が欲しいと話を振られ、告白されるかもと期待したが、恋愛対象外扱いされてムカムカ来る。意趣返しに恋愛広告のことを教える。陸上少年はそのままでいたら恋人なんて出来ない、出会い系の広告を出すくらいの必死さが必要だと。怒りが落ち着いた翌週に彼女に立候補しようと決心したが、陸上少年にもう必要ないと言われたことから失恋を悟る。
陸上少年の恋愛広告を発見したことで陸上少年と文学少女がお試しの付き合いであることに気づき、ダメ元で告白して玉砕する。
■舞台
未定。
■その他設定
・物語の期間は3月のホワイトデーから夏にかけて。次の学年では陸上少年と文学少女は別クラスになる。
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