五感全部を味覚として感じる彼氏のために彼女さんがデートの献立を考える話
■あらすじ
生まれつき五感に異常を抱える青年(以下、味覚青年)がいた。全ての感覚を味覚として感じてしまう先天的な障害を抱えていた。
味覚青年には付き合って半年になる彼女がいたが、近頃何かに思い悩んでいるようだった。心配した味覚青年が理由を尋ねると彼女に問い返される。味覚青年は自分の手料理に不満があるんじゃないかと。
味覚青年は悩んだ末、自らの障害を打ち明ける。生まれつき五感に異常があり、味覚がほとんど感じられないのだった。少女はその言葉にショックを受ける。少女はゴハンが大好きだった。三度の飯は何よりも優先される。大好きな彼とその幸せを共有したくて、今まで手料理を振る舞ってきたのだ。
うなだれるゴハン大好き少女(以下、ゴハン少女)に味覚青年はもう一つの秘密を明かす。味覚以外の感覚──触覚、視覚、聴覚、嗅覚、痛覚等が本来の感覚に加え、強い味覚としても感じられること。
半信半疑ながら味覚青年の言い分を飲み込んだゴハン少女は、味覚青年の味覚調査を行うことにした。何に触れると、見ると、聞くと、嗅ぐと、どんな味がするのか。聞き取り結果から味覚青年とのデートの献立を考える。同じ幸せを感じられなくても美味しい気持ちを届けられれば。
キスはレモン味だった?ゴハン少女をオカズ(そのままの意味で)にしたことはあるのか。純粋な好奇心から質問すると、味覚青年は言いづらそうに答える。キスは田舎まんじゅうの味がするらしい。思った以上に渋い回答にゴハン少女は笑ってしまった。
ゴハン少女は早速翌週から、作った献立を実践し始める。とはいえ今までのデートとほとんど変わらない内容だった。登山、川下り、フリーランニング、果ては格闘技まで、やたらめったらアクティブなデートコースの真相が明らかになった。時々すまなそうにしていた味覚青年の姿を思い出し、ゴハンのためなら仕方ないなとゴハン少女はうなずく。箸休めに行った植物園やぬいぐるみ博物館で意外な味覚に舌鼓を打つ味覚青年が面白かった。
味覚青年の実家に挨拶に行った日、味覚青年の両親から傷だらけだった子供時代の話を聞き、ゴハン少女は漠然とした不安を覚える。味覚青年の味覚を観察するうち、痛覚の味を最も好むことに気づいていた。ふと二人の出会いを思い出す。駅の階段から落ちたゴハン少女を味覚青年が庇って大怪我を負ったのが始まりだった。誰かが自動車にひかれそうな時や、通り魔に刺されそうな時、味覚青年は嬉々として傷つきに行くのではないか。
不安から時間の合う限り味覚青年と一緒にいることにした。観察すればする程、味覚青年には生傷が目立つ。スポーツや格闘技は危険な事ばかりして遊ぶ味覚青年の身を案じた両親が比較的安全な遊びとして勧めたそうだ。心配になり、まともに眠れない日が続いた。
デートの帰り道、ボンヤリしていた味覚青年が自動車にひかれそうになり、ゴハン少女が身体を張って助ける。わざと傷つこうとしたんじゃないかと泣きじゃくるゴハン少女に味覚青年は抱きしめながら弁解する。元気のないゴハン少女が気になって寝不足になっていたこと。ゴハン少女と一緒にいると何もかもが美味しく満たされていて、死ぬような危険なマネをする気は全くない。心配なら最期まで見守ってと味覚青年は微笑む。
■物語の障害
・ゴハン少女は味覚青年がいつか死ぬような怪我を負うんじゃないかと不安になる。
→ゴハン少女は過保護になる。
→不安をぶち撒けて味覚青年の本音を聞く。
・味覚青年は昔いつか死ぬような痛みを味わってみたいと思っていた。
→味覚青年はゴハン少女に昔の気持ちを見抜かれて焦る。
→ゴハン少女といるうちは死ぬ気がないことを正直に伝える。
→いずれ死期が見えたら目一杯身体を痛めつけて自殺したい。秘密の願望はゴハン少女にも伝えない。
・味覚青年はゴハン少女に気味悪く思われないか不安になる。
→味覚青年の特異さを気にせず、ゴハンを一緒に楽しめないことに悲壮さをにじませるズレたゴハン少女に、味覚青年は呆れつつホッとする。
・味覚青年はゴハン少女と一緒に食事を楽しめない。
→ゴハン少女には他にいい人がいるのではと味覚青年がモヤモヤする。
→物語の最後まで解決されない。
■登場人物
・全感覚を味覚として感じる味覚青年
大学二年。ゴハン少女の一学年上にあたる。
先天的な異常で味覚以外の全感覚を味覚として感じてしまう。人と違うことに肯定的な両親に育てられた彼は自分の感覚を個性として受け取り、ポジティブに生きることにする。感覚のことは両親以外には秘密にしている。
不器用で何をさせても危なっかしいが、ある意味痛みに強く辛抱強いのでそこそこ上手くなる。
幼い頃、傷ついた際の鮮烈で甘酸っぱい果実のような味に夢中になり、危険なことばかりをして遊ぶ。心配した両親から比較的安全なスポーツや格闘技を勧められ、空手や体操等の様々な競技を始める。
中高時代は警察官、スタントマン、ボディガード等の身体を張りつつ人の役に立つ仕事を考えていたが、両親に泣いて止められたため何の職業を選ぶか考え中。
・ご飯大好きゴハン少女
大学一年。味覚青年とは別の大学に通っている。
三度のゴハンが何よりも好きで、料理ジャンルを選ばない雑食タイプである。自炊と外食の両方好き。飲食店のチェックには余念がなく、味覚青年の秘密を知るまでは彼と行きたい店のリストを作っていた。
快楽主義者で楽観的。楽しみのためには妥協しない。
高三の夏、勉強疲れと貧血で駅の階段から落ちたところを味覚青年に助けられる。大怪我を負った味覚青年を病院で見舞ううちに彼氏兼家庭教師をゲットする。少女マンガ的なベタな馴れ初めで人に話すのがちょっと恥ずかしい。
将来の夢は漠然としていて模索中。小さい頃の夢は定食屋さんだったが、趣味と仕事は分けたいので飲食関係以外の仕事に就くことだけ決めている。
食事以外の趣味は走ること。疲れた後のゴハンは美味しい!というブレない理由から。
■舞台
未定。
■その他設定
・味覚青年は本来の味覚も感じられるが、他の感覚から来る味覚と比べるとすごく刺激が弱く薄味。
・味覚青年はゴハン少女との触れ合いは文字通りオカズにできる。ある意味捕食。
・味覚青年はあらゆるものから味覚を刺激される。ヨダレをよく飲み込んだり、突然笑顔になったり苦い顔になったりするので、周りからは変な奴だと思われている。
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