先輩と付き合うために小説を書く後輩少女が、本懐を忘れて面白い小説を書くために頑張る話
■あらすじ
恋愛小説をなぞることで幸せを感じる変人がいた。作家のプチストーカーである少年は物語中の出来事を追体験する毎日を送っていた。
その日も物語中の創作料理に挑戦する予定だったが、所属する天文部で後輩の少女(以下、後輩少女)を見かける。つまらなそうに問題集を解く彼女。渋る彼女を連れ家庭科室で創作料理に挑戦する。文句を言いつつ楽しげな後輩少女を見て、少年(以下、先輩少年)は彼女を自分の日課に誘うようになる。小説の舞台巡り、屋上での告白ゴッコ、学校のプールに忍び込んでの天体観測、etc。
成績悪化を心配する後輩少女に先輩少年は勉強も見るようになる。休憩時間に後輩少女が先輩少年の奇行の理由を尋ねると一冊の恋愛小説を渡される。勉強ばかりしてきた後輩少女にとって初めての娯楽だった。またたく間に小説に夢中になる。ドキドキの恋愛模様に憧れた。
先輩少年の卒業が間近に迫った頃、彼との繋がりが消えることを恐れた後輩少女は先輩少年に告白する。断られ、気落ちする後輩少女は友人が冗談半分で口にした案を真に受けてしまう。勉強ができても後輩少女はアホの子だった。──あの人小説バカだし書いて持ってけば?ラブレターならぬラブ小説。
書き上げた小説を先輩少年に渡すと赤面どころか赤線だらけで返される。怒りのままに次の作品に着手する。絶対に面白いと言わせてみせる。手段と目的が入れ替わったまま間違った方向に邁進する。先輩少年のアドバイスでネット小説を始め、レベルアップのため小説賞にも応募するようになる。
先輩少年の進学後も交流は続き、後輩少女はネット投稿用の恋愛小説を数作書き上げていた。レベルは上がったものの、先輩少年曰く、オリジナリティが弱い、どこかで見たような心境描写と展開。人生経験の不足を感じた後輩少女は、先輩少年を巻き込み、旅行、バイト、知人へのインタビューと活動の幅を広げていく。
そんな折、先輩少年がバイト先の女性と付き合い出し、後輩少女は薄々気づいていた気持ちを再確認する。この気持ちは恋ではない。気軽に話せなくなるのが寂しくはあったが、嫌な気持ちにはならなかった。空いた時間を埋めるようにバイト先や同級生との交流を広げていく。
後輩少女が大学に進学し、何人目かの彼氏と別れたとき、好きな作家のサイン会で先輩少年と再会する。ちょうど彼女と別れたらしい彼にそれじゃあと提案する。期間限定で恋人になってみませんか。昔のように聖地巡礼で練り歩き、一緒に小説のネタを妄想し、二人で勉強をする。ドキドキは全くないけれど居心地のいい幸せな時間。
恋人期間の最終日、以前と同じ断りの言葉を伝えようとした先輩少年に、後輩少女が自作の小説を渡す。先輩少年と離れてから書き始めた、恋の出てこない恋愛小説。主人公の少女には恋がわからなかった。異性といてもドキドキしない。エッチなことをしたいとも、したくないとも思わない。嫉妬もしない。相手との温度差にどの恋人とも長く続かなかった。
きっと先輩少年への感情は恋ではない。でも一番心地良くて、ずっと一緒にいたい。昔書いた作り物のラブ小説とは違う、素直な気持ちを言葉にした。後輩少女は小説を読み終わった先輩少年にプロポーズする。恋してなくてもずっと一緒にいてくれませんか?
先輩少年は安堵のため息をついて首肯した。自分も同じだったと。憧れた恋愛小説のように素敵な恋ができると信じていた。高校生大学生にもなって恋しない自分が欠陥品に思えた。いつか初恋が訪れたら、後輩少女との関係がどうなるかわからないけど、それでも今は後輩少女と一緒にいたい。
後輩少女は恋の出てこない恋愛小説を小説賞に投函する。この物語にオリジナリティはありますか?あるとしたら、自分自身の個性を誇ろう。ないのなら、きっと後輩少女の仲間がたくさんいるということだ。どちらもすごく素敵なことだと後輩少女には思えた。
■物語の障害
・先輩少年は恋がわからない。
→告白してきた後輩少女に対し同じ気持ちを返せないと思い断ってしまう。
→何人かの女性と付き合うが恋が芽生えない。
→恋じゃなくても幸せならいいと考えるようになる。
・後輩少女は恋がわからない。
→先輩少年に恋してないけど一緒にいてほしいとは言えず、恋愛小説から借りた他人の言葉で告白する。
→何人かの男性と付き合うがいつまでも恋がわからない。
→先輩少年に素直な気持ちを伝えようと決心する。
■登場人物
・恋愛小説をなぞる先輩少年
物語開始時点で高三。
恋愛小説の舞台を巡ったり、小説の中の出来事をなぞったりして幸せになる変人。作家のプチストーカー。
平日は読書と作中の出来事のマネ、休日は遠出して聖地巡礼をしている。好き勝手生活している学校の有名人だが基本的に真面目なので他人の本当に嫌がることはしない。
口が悪いというかストレートで、良くも悪くも素直で物怖じしないため敵が多いが知人も多い。上述の趣味により付き合いが悪いため友人はそこまで多くない。
ドロドロしてないドタバタラブコメが好き。猫より犬派。色は桜が好き。和食より中華・洋食。落ち着いた場所よりガチャガチャした楽しげな場所。
小説を読んで恋というものに憧れていたが、それが一向にわからない自分が恥ずかしく、悲しくなっている。初恋もまだである。
星空を見上げながらのロマンチックな恋愛に憧れて天文部に入る。そこまでまじめな部活じゃなくて拘束時間が短めなのも理由。
新たな知識を得られる勉強が好きで成績がいい。後輩少女の勉強を見るときに人へ伝えることの難しさを実感し、同時に面白さを覚える。
・小説を書く後輩少女
物語開始時点で高一。
親の言いつけで勉強ばかりしてきた少女。娯楽に触れてこなかったが、先輩少年の魔の手によりラブコメに染められる。
学校の成績はいいがあまり頭の回転がいい方ではなく、とても素直で残念なアホの子。ワンテンポずれる。よく見当違いなことを言う。しかし母親に褒められて育ったのでネガティブではない。
勉強ばかりしていたためコミュニケーションが不得手で、感情を表に出すのが下手なため、無表情と困った顔が半々、怒った顔と笑顔が数%。スクールカーストの底辺でうろうろしている。先輩少年と過ごすうちにコミュ力がじゃっかんマシになり、クラスと部活でも友だちができる。
好きな小説のジャンルは穏やかな恋愛小説。恋というより愛寄りの穏やかな日常に憧れる。当初、先輩少年と好みが違うのが残念だったが、お互いのオススメを貸し借りできるので逆によかったかもと思い直す。
喜怒哀楽を素直に表し自分のやりたいままに行動する先輩少年に心地よさを感じ、一緒にいたいと思うようになる。先輩少年のことが恋的な意味で好きかは正直わからないが、一緒にいたいのだからどっちでもいいやと思っている。恋と性欲、恋と愛の違いはどこに?恋ってそんなに特別なもの? 初恋もまだ。
高校が皆部活制のため仕方なく天文部に入る。天文部を選んだのは活動が活発じゃなくて勉強に支障がなさそうだったから。
・後輩少女の友人
天文部所属の後輩少女の同級生。幽霊部員だらけの天文部には珍しく天体観測を真面目にしている。後輩少女が高校ではじめてつくった友だち。
破天荒でストレートで、ときどきドキッとする言動をする先輩少年のことが気になっていたが、後輩少女の手前諦める。
・先輩少年の母
先輩少年を一人で育てる母。夫と別居している。
アマチュア小説家だった夫の小説が好きで応援していた。夫がプロになったことが原因で家庭に不和が出て別居状態になる。小説家の道を応援したことを後悔している。
・先輩少年の父
別居している先輩少年の父。小説家。
元々プロの小説家を目指すつもりはなかったが、彼のファンである妻の応援で小説賞に応募して受賞。書籍を出すことになる。副業扱いでボチボチやるつもりだったが思いの外売れてしまったため、本職をやめて小説家一本に絞る。
3作目からスランプに陥り取材のため家をよく開けるようになる。精神的に不安定になった結果、妻とケンカが多くなり別居する。今も売れっ子というほどではないが小説家として活動している。
・後輩少女の母
後輩少女を一人で育てる母。夫と離婚している。
母子家庭で苦労してきたため、後輩少女には高学歴で安定した職業を求めてほしいと思っている。
娘が小説にハマり出して心配だったが、先輩少年が勉強を見るようになってから後輩少女の成績が上がったためとても感謝している。彼が原因で娘がモノ書きというヤクザな趣味にハマっているとは夢にも思っていない。
■舞台
未定。
■その他設定
・先輩少年が後輩少女に最初に貸した恋愛小説は先輩少年の父親が書いたもの。先輩少年が小説にハマるきっかけになった作品。内容はドタバタのラブコメである。
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