教室でボイトレのストレッチをしていたらなぜか別クラスの優等生に食いつかれた話

■あらすじ

 ボイストレーニング教室に通う少年(以下、ボイトレ少年)がいた。予約までの待ち時間を人の居なくなった教室で潰す。ボイトレで声を出す前準備にストレッチをして過ごすことが多かった。


 ボイトレ少年がいつものように課題曲の楽譜チェックをしながらストレッチしていたところを学年10位内で優等生の少女(以下、優等生さん)に目撃される。慌てて楽譜を隠し、最近肩こりのストレッチに凝っているんだと誤魔化すと、なぜかその嘘に勉強疲れの肩こりで苦しんでいた優等生さんが食いつき、翌日から実演することになる。

 謎のポイントに食いついた優等生さんを疑いの目で見つつ、ボイトレ少年は肩こり解消とストレス発散の自分なりのやり方を情報交換する。ストレッチ、散歩、昼寝、筋トレ、カラオケ、不満をノートに書きなぐる、etc。優等生さんからはお礼として勉強のコツを教わることに。ネタが尽きた後も放課後を一緒に過ごすようになる。イメージと違い脳天気な優等生さんとの時間は気楽で楽しいものだった。


 ある時、こぼれ落ちた練習用ノートからボイトレ少年がボイトレ教室に通っていることがバレ、興味を惹かれた優等生さんからボイトレの先生になってと無茶ぶりされる。ボイトレ少年は変な癖がつかないよう教室に通うことを勧めるが、ボイトレの雰囲気もわからないと親に説明できないと押し切られ、渋々週一、一ヶ月間の先生役を引き受けるのだった。カラオケにミニキーボードとレコーダー、メトロノーム代わりのスマホを持ち込み、見様見真似でレッスンをする。


 レッスンの途中、優等生さんにプロの歌手を目指してるのかと問われ、ボイトレ少年は否定した。プロみたいに自由自在に歌えたら楽しいだろーなという単純な理由から習っていた。音楽は楽に、楽しく、泥臭くがボイトレ少年の信条だった。練習はコツコツと、歌うときは気楽に、ミスなんて気にせず目一杯楽しんで。

 言ってることとやってることが違うとボイトレ少年は内心苦笑する。ボイトレを始めてから以前より歌を楽しめなくなっている苦悩があった。ボイトレに通っていてこの程度かと自嘲する。時折いる身体の使い方が上手い人──生まれつき歌がうまい人は妬ましい。優等生さんには、いつまでも脳天気に歌っていて欲しいと思った。


 ボイトレ少年は通りかかった図書室で、優等生さんが男子生徒と仲よさげに話す姿を見かけてしまう。ショックを受けた自分にショックを受け、優等生さんとの関係がギクシャクする。優等生さんはボイトレ少年にどうアプローチしたらいいか友人に相談していたことを打ち明ける。その意味を考えて赤面するボイトレ少年。自分の発言を振り返り真っ赤になる優等生さん。


 期末試験が抜群の出来だった優等生さんは親からボイトレ教室に通う許可をもらう。ボイトレの先生を紹介し同じ教室に通うことに。自分の手を離れていく彼女にボイトレ少年はホッとしつつ寂しさを覚えるが、意を決して一緒の時間帯に通わないかと誘う。一緒に教室に通い、待ち時間におしゃべりや勉強をするようになる。その様子を先生に茶化され二人で慌てる。


 毎年恒例のボイトレ教室の発表会が近づき、ボイトレ少年は歌の選曲で悩む。得意な曲か、大好きだけど激ムズの曲か。優等生さんに後押しされ、シンドくても好きな歌を選ぶ。練習は難航したが発表会までになんとか聞くに耐えるレベルまで持っていく。

 発表会当日、楽しそうに歌う優等生さんにボイトレ少年は頬を緩ませる。次は自分の番。緊張でガチガチになるボイトレ少年の手を優等生さんが握る。音楽は楽に、楽しく、泥臭く、でしょ。がんばって、センセイ。

 ところどころ音程やリズムを狂わせながらボイトレ少年は陽気に歌い上げる。ボイトレ仲間の拍手に応えながら優等生さんの隣に戻る。何も考えずにただ楽しく歌えたのは本当に久しぶりだった。


 二人で散策に出かける約束をした週末、優等生さんを待ちながらボイトレ少年は覚悟を決める。肩こり解消とか、歌のためとか、グダグダ理由をつけた付き合いはもう終わりにしよう。気負う必要はない。楽に、楽しく、泥臭く、素直な言葉を音に乗せて。心の内を吐き出すだけだ。



■あらすじ(優等生さんサイド)

 優等生さんは図書室への道すがら、人のいなくなった教室でボイトレ少年を見かける。ストレッチをしていたり、真剣な表情でイヤホンをして楽譜に何か書き込んでいたり。ミニキーボードの鍵盤を叩いている時もあった。何をしているのか興味が湧いて観察するようになる。


 友人に相談して自分の行動がストーカーまがいであることに気づいてしまった優等生さんは、意を決してボイトレ少年に声をかける。最初は肩こりやストレス発散の話題から入り、次第に本題に近づいていく。



■物語の障害

・ボイトレ少年が歌を純粋に楽しめなくなっている。

 →能天気に楽しげに歌う優等生さんを見て、深く悩んでた自分がどうでもよくなってくる。

・優等生さんが勉強のストレスでシンドくなっている。

 →ボイトレの基礎練習で身体のストレスがストレッチされ、身体が軽くなる。

 →目一杯楽しんで歌うことで心のストレスもストレッチされ、心が軽くなる。



■登場人物

・ボイトレ教室に通う少年

 高1の少年。帰宅部。

 何事もコツコツやるタイプで最高までは行かないがそこそこの結果を出す。基本気に入った相手としか話さないので友人は少なめ。

 音楽が好きで、自由自在に歌えたら楽しいだろーなーという単純な理由でボイトレ教室に通っている。音楽は楽に、楽しく、泥臭くが信条。練習は地味にコツコツ、本番は気楽に楽しく歌えればそれでいい。最近歌が純粋に楽しめなくなっているのが悩みで、人にボイトレをしていることを隠す理由にもなっている。

 インスト音楽が好きでよく聴いていて、ボイトレ教室に通ってるのに歌よりインストが好きってどうなのと優等生さんは不思議に思っている。ボイトレ少年的には歌うのと聴くのは別腹である。



・別クラスの優等生さん

 高1の少女。帰宅部。

 好奇心旺盛で気になったものは調べ尽くさないと気がすまない。趣味は雑学書でトリビアを集めること。会話の大半が雑学で埋め尽くされるぐらい好き。

 放課後に図書室で勉強ばかりしているガリ勉だが、脳天気な性格のおかげで友達は多い。

 勉強は好きだが両親の期待が重くてシンドイ。どれだけ頑張ってもじゃあもっと上を目指そうと当たり前のように言われるのが腹立たしく、家に居たくないのでギリギリまで図書室で勉強していることが多い。



・優等生さんの親友

 高1の少年。

 陸上部で長距離を走っている。

 優等生さんの小学校からの友達で、優等生さんのストーカーじみた行動に呆れつつ相談に乗っている。



・ボイトレの先生

 ボイトレ教室を主催する女性。

 青春真っ盛りの生徒達をからかって遊ぶのが趣味。

 自宅の一部を改装したボイトレ教室を運営しており、夫も音楽関係者で別の音楽教室でギターを教えている。



■舞台

未定。



■その他設定

なし。



■ボイトレ少年のレッスン方針

・音楽は楽に、楽しく、泥臭く。練習はコツコツと歌うときは気楽に行こう。

・人は元々歌う力を持っている。緊張さえしなければいい声が出る。

・いい声が出てるかは本人にはわからない。必ず先生に聴いてもらうか録音して確かめよう。


1. 身体を解そう

 凝った身体は緊張の元。凝りづらい身体を作るために普段から身体を動かしておくこと。ウォーキングかジョギングを習慣化するのがオススメ。

 歌う前に身体を解すこと。凝りが気になる部位を見つけて関節を回して解す。


2. 素直に声を出そう

 小難しく考えると微妙な声が出る。常にイメージを大切にして素直に声を出すこと。例えば、遠くにいる観客をイメージして、そこに声を届けようとすれば自然とハリのある大きな声が出る。


3. 音程に慣れよう

 人は慣れないことをすると緊張するので、音程に慣れることが大切。一つ、ミニキーボード等で普段から音を聴くこと。二つ、実際に声に出してみること。

 全音階、半音階、メジャーコード、マイナーコードに慣れること。

 無理に声を出すと変な癖がつくので少しずつ出せる音域を広げることが大事。


4. リズムに慣れよう

 リズムは慣れあるのみ。一つ、スマホアプリでもいいのでメトロノームを持ち歩いてリズムに慣れよう。二つ、リズムに合わせて声を出そう。


5. 専門の先生に頼もう

 素人がボイトレすると変な癖がつくので危険。専門の先生にお願いすべし。



■その他アレコレ

・ボイトレのストレッチと勉強疲れのストレッチの組み合わせで物語を作れないか考えたら、思った以上に地味なストーリーになってビックリした話。

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