お風呂、一緒に入ろ?

二十二時くらいになり、二人とも仕事から帰って来た。


「と、言うわけで!無事三人集まったってわけだね!」


相生さんが拍手を求める。


俺はまばらな拍手を、徳重さんは大きな拍手を送った。


「んじゃ、仲を深めるために、風呂に入りますか!」

「え」

「いやいや!桜、なんか勘違いしてない?」

「そ、そうですよねすいません」


さすがにラノベ脳すぎたか。そりゃそうだよな。


今のは、女性陣が一緒に風呂に入ろうってことだ。


「一緒に入れるのは、この中の一人だけだよ?」

「……なんですか?それ」

「だ~か~ら!ウチらがこれからじゃんけんして、勝った一人だけが、桜とお風呂入れんの!」

「えぇ!?」


衝撃の展開だ。そんな最高のイベントがあっていいのか?


相生さんはまぁいいとして、残りの二人は……。


「うん。それいいね。私もちょうど、桜くんとお風呂入ろうかと思ってたし」

「絶対嫌」


それぞれ真逆の意見だった。


「ありえない。メイ、じゃんけんにも参加しないから。どうかしてるでしょ?血気盛んな男子高校生と一緒に風呂入るとか」

「血気盛んなのはあたしも変わんないしな……」

「……不潔」


メイが、ゴミを見るような目で相生さんを睨みつける。相生さんはピースサインでそれに応えた。


「まっ。ライバル減るのは良いことだし?んじゃあ、あたしと徳重さんでじゃんけんかぁ」

「まさしく一騎打ちだね。負けないよ?」

「バカバカしい。メイは部屋に戻るから」

「あ。メイ!さっきの照明が入ってた箱、後でリビングに置いといてくれ!」

「はいはい」


そんなこんなで、二人のじゃんけん対決が始まると思ったのだが……。


なぜか二人とも、俺を見て、何か言いたそうな顔をしている。


「えっ。どうかしました?」

「メイ」

「……あ」

「桜くん?随分鳴子さんと仲良くなったんだね?ちょ~っと詳しい話を聞かせてほしいかな」

「いや、これはですね。違うんですよ」

「何が違うわけ?あんたらそんなに関係進んでたんだ」

「睨まないでくださいよ!」


とりあえず、二人から距離を取り、いつでも逃げられる体制を作……。


ろうとしたら、捕まってしまった。


右腕に徳重さん。左腕に相生さん。それぞれ抱き着かれて、身動きが取れなくなってしまう。


二人それぞれの大人の香りと、柔らかい感触に、脳が爆発しそうだった。


「二人とも!誤解なんですって!」

「別に~?それは気にしてないけど。それならあたしのことも、美々子って呼んでよ」

「私は……。お姉ちゃんって呼んでほしいかも」

「お、お姉ちゃん?」

「だって、四人の中で私が一番年上でしょ?」

「そうですけど……。高校生にもなって、お姉ちゃんはちょっと」

「……ふ~ん」


唇を尖らせ、抱き着く力をより強くしてくる徳重さん。


「桜さぁ。朝だって結局うやむやにして逃げたじゃん?あたし、まぁまぁ傷ついたよ?」


そう言って、相生さんもより強く抱き着いてくる。


「そんなこと言われても……」

「桜くん、鳴子さんのこと、好きなの?」

「いや好きとかでは……」

「ふぅ~ん。メイのこと嫌いなんだ」


いきなり背後から、冷たい声が聞こえた。


「メ、メイ!?部屋に戻ったんじゃないのか!?」

「飲み物取りに来たんだけど。で、桜はメイのこと嫌いなんだよね?」

「違う違う!好きも嫌いもないだろ?まだ俺たち、今日知り合ったばっかりなんだぜ?」

「言い訳は聞きたくない!メイのこと嫌いなんでしょ!」

「落ち着けって。ほら二人とも!メイが勘違いしちゃったじゃないですか!」

「美々子のことも嫌いなんでしょ!」

「ま、まりあのことも嫌いなんでしょ!」

「かわかわないでください!」


徳重さんが、ちょっと照れながらだったのが、個人的にはとても可愛かったと思うけど!


「……メイもじゃんけんする」

「え……」

「だって、このままだと、仲間外れじゃん」

「仲間外れとかそういう話じゃないだろ?」

「よ~し!これで三人揃ったし、じゃんけん始めますか!」

「お姉ちゃん負けませんよ~?」

「……絶対勝つ」


……どうしてこうなったんだ。


「「「じゃ~んけ~ん!!!」」」


果たして、じゃんけん大会の優勝者は、誰になるのだろう……。















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