☆新任教師(悪魔)と教え子の○○エル達☆

カピバラ

1時限目【○○エル達の学び舎】



 天魔界歴20200年、春——遂に!


 魔界の若き天才こと、この俺、

 ——アビス・フォルネウス2世!!

 名門悪魔学大学を主席で卒業し、晴れて夢だった教員免許を取得したぞぉぉっ!!


 最近の若い悪魔はたるんでいる。とはいえ、俺も若いが……だがしかし! やはり悪魔は悪魔らしくなければ。それには、教員となって根っこから変えなければならない。改革が必要なのだ!


 ソロモン72柱が序列30位であり、伯爵の階級を持つ父上ラウル・フォルネウスの顔を汚さぬよう、日々悪魔として精進していく所存だ。


 明日は俺の、華々しいデビューの日だ!!

 悪魔手帳エビルブックよーし!

 スーツよーし!

 ネクタイよーし!


 うむ、準備は万端だっ!!



 ☆☆☆☆☆



 ……!?

 ……何故こうなった!?


「先生っ! せ〜んせっ! どうしたんすか? ぼ〜っとしちゃって?」


 なーぜだぁぁ!?


 真っ赤なリボンが俺の視界を遮る。

 ぴょこんぴょこん、と。

 そのリボンの下には金色のショートヘアの、やけに眩しい少女の姿。認めたくないが、天使だ。


 そいつは俺の顔を下から覗き込んでは、透き通るような眩しい笑顔を浴びせてくる。天使だけに。


「ん? あ、あぁ……」


 ぐはっ……笑顔が眩しい……


「先生、授業始めるっす。皆んな待ってるっす」


 少女はそう言って席に座った。


「あ、あぁ……そ、そうだな」


 俺は悪魔学の教師になった筈。


 それがどうしたこの惨状は!?

 何をどう間違ったらこうなるのだ!!


 何故、なにゆえ!

 俺の教え子が天使!? 悪魔はどうした!? というか、何故に天界に!? 悪魔の俺が入れるはずないのに!! あぁーーっ『何故』の量産が止まらん!


 背中には薄桃色の小さな羽、

 頭には天使の輪っか、

 白いセーラー風のワンピースに青いネクタイの制服を身にまとった天使、天使、てんし!

 そんな天使が悪魔である俺の授業を食い入るように聞いている。——カオスか!!


 ぐぅ、視線が眩しい。

 俺は確かに悪魔手帳エビルブックを、——魔界における身分証を持って担当する高校に出掛けた筈だ。それが無ければ魔界に入れない上、生活するにあたっても使用頻度は高い大事な物だ。


 それが紛失している。俺に何が起きた?

 ——駄目だ、全く思い出せん。


 気が付けば俺は天界ヘヴンズパス、——天界こちらでいう身分証を手にしていて、代わりに悪魔手帳エビルブックが紛失していた。


 状況もわからず、眩しさに耐えながらパスの記す住所に赴いたところ、新任教師と間違われ、

 そして何故かその流れで、

【天の川中等女子学院】の1年1組を担当する事になったわけだが、こうして回想しても全く頷けない。

 不可解なことが多過ぎる。


 とはいえ、今はとにかく授業をせねば。

 幸い俺が悪魔だということは誰にもバレてはいない。というかバレたらヤバい。いや、それより何より、何故バレない?


 それも気になるが、魔界手帳エビルブックを紛失したとなると、魔界に帰れない。

 ここは先生になりすましながら帰る方法を模索するしかあるまい。

 その為に一夜漬けで天使学の参考書を頭に叩き込んだのだから。天才は伊達じゃないのだ。


 こうして新任教師の俺、アビス・フォルネウス2世と、キラッキラの1年生天使達の学園生活が幕を開けてしまった。




「出席とるぞー、アラエル」

「あらら〜」


「アルミサエル」

「うむ。今日も宜しく頼む、先生」


「カマエル」

「シュババババ! バシュァーーッ! ピーー、ドッカァーン!!」

「……」


「ガブリエル2世」

「はいなの〜フォルネウス、ガブリなの〜」ガブッ!


 頭を噛まれた。めっちゃ痛いんすけど。


「ク、クロエル……」ぴゅーっ(頭の血)

「クロエル、ですが?」


「サキエル」

「ムフフ……ムフ……」

「サキエル、その本は一旦しまえ」


「シャムシエル」

「どうすれば、どうすれば……センセ、どうすればおっ○いは大きくなりますかっ?」

「はい、次」


「ゼルエル」

「先生ぇ〜、視線がいやらしいですよ?」


 お前はもう魔界でサキュバスやってろ!


「マトリエル」

「はいはい〜」カタカタカタ!


 ひとまずパソコンしまえ!


「マールエル」

「はいっす!」ぴょこんっ!


 あー、眩しいっ!


「モコエル」

「はいですぅ〜、今日も天気が良いですぅ〜」


 天界はいつも晴れだろうが!


「ラミエル」

「はいエル」パチクリパチクリ


「レミエル」

「はいエル」パチクリパチクリ


 見分けつかねーー!!


「ロリエル」

「むぅ……」


 今日もダンマリね。やれやれ……


「それじゃ今日の授業を始める。マール」


 赤いリボンの天使、マールエル、愛称マール。彼女がこのクラスの委員長だ。


「はいっす! 起立! 礼っ!」




 ◆◆◆◆◆

 頑張れフォルネウス2世!

 新任悪魔教師フォルネウス2世と教え子の○○エル達の学園生活はまだまだ始まったばかりである!

 ◆◆◆◆◆












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