呆れた悠里、決意する麻里亜

今日は久しぶりに生徒会の仕事があった。


「失礼します」


中に居たのは悠里さんのみだった。他の生徒会メンバーはまだ来てないようだ。


「お疲れ様、健人君」


「うっす」


「今少しいい?」


ん?急に改まってどうしたのだろうか。


「あぁ、はい」



「あの……ね?麻里亜の事なんだけどね?」


やっぱり会長関連か。


「もう少し、彼女に優しく接してくれたらなぁ〜なんて思ってるんだけど……」


恐る恐る聞いてくる。


まあ会長がした俺への仕打ちを知ってる分、この頼み事が俺を怒らせても仕方のないものだとわかっているのだろう。


まあ怒るまでの事では無いが。


あくまでも冷静にお断りする。


「嫌ですよ。会長が最近優しくなったのは分かりますけど、それだけで許そうとはどうしても思えません。第一まだ俺に謝罪も無いのに……」



「え?」


「ん?」


「は?」


「お?」


なんだこの状況。


「謝罪してないって……本当?」


「本当ですよ。そもそも、プライドの高い彼女が謝罪なんてするわけないじゃないですか」


「あの子……」


苦虫を噛んだような険しい表情をしているがどうしてだろうか。


「ごめん!今日は帰るね!あ、今日は麻里亜も習い事で生徒会来れないから!」


そう言って颯爽と去っていった。


……なんだったんだ。





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「麻里亜ぁぁぁ!」


帰路に彼女の背中を見つけた時、私は柄にもなく大声をだしてしまった。



「うわ!悠里!?生徒会はどうしたの?」


「あなたのために今日はやめにしたのよ!」


彼女への苛立ちや呆れがあるからか、少し口調が荒くなっているのを自覚した。


「へ?」


「麻里亜、まだ健人君に謝ってなかったんだ」


「ギクッ」


ギクッって自分で言うのね


なんてくだらないツッコミしてる場合じゃないよね。


「麻里亜ちゃん。本気で健人君の事好きなのよね?」


「うん……」


「じゃあどうして謝らなかったの?」


「……」


「黙ってちゃわからないよ」


「……」


「またプライドが邪魔しちゃった?」


無言で首を横に振る麻里亜。


「じゃあどうして?」


「………怖かったの」


「……本当は、謝らなくちゃいけないってわかってたんだけど…-もし謝罪すら無視されちゃったらって考えちゃって……それされちゃったらもう私耐えられないと思う……」


「麻里亜ちゃん……」


プライドではなく恐怖からだったのね。


そうだよね。怖いよね。


好きな子から拒絶されてる今でさえ辛いはずなのに、恐怖を感じないわけないよね。


でも。それでも。


「麻里亜ちゃん。それでも謝罪はしなくちゃならないよ。その時に好意も伝えられたらいいね」


「もう逃げてられないのはわかってた。謝罪はするよ。でも……好意は……」


「一時期不登校になってた彼の元彼女さん、最近学校来てるらしいよ。彼と同じクラスだし復縁もあるっちゃあるよね」


「それは嫌!」


「じゃあその前に好意を伝えてみるのは妙案だと思うけど?」


「うぅ……うぅ……」


顔を林檎みたいに真っ赤にして俯く麻里亜ちゃん。


この表情を健人君に見せられたらイケるんじゃないかな、なんて考えちゃうぐらい可愛い。


「わかった……告白……する……」


「本当?頑張って!」


「でも付き合ってとは言わない。多分今は無理だから。だから好意を伝えて意識してもらう」


「それでいいと思うよ!」


あのプライドの塊みたいな麻里亜ちゃんがまさか自分から告白を決心するまでに至るとは。


なんだか感慨深いな。








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