罵倒してくる女子達にガン無視決め込んでみた結果
あ
ドS彼女と別れる
「遅い!この私を待たせるなんてふざけてるの?」
一緒に下校するため自宅前で俺と待ち合わせた女が囀っていた。
朝からヒステリックになっている人間とは関わりたくないものだが、悲しいかな、その人間は俺の彼女こと須藤麻紀その人なのである。
案の定朝から罵倒されて、思わずため息をつく。
なんでこうなっちゃったかなぁ……。
付き合う前までは、思いやりのあるとても優しい美少女だった。伊達に幼馴染やってた訳じゃない。彼女が優しかったのは間違いないんだ。
……間違いないんだが、付き合った瞬間、何故か俺を罵倒するようになってしまった。
幼馴染なのにこんな一面を持っているなんて気づかなかった俺も大概だが、この罵倒、結構キツい。
豹変した理由を聞いても教えてくれない。
勘弁してと懇願しても、何故か「わかってるから」と慈愛の籠った目で俺を見てまた罵倒する。
手は尽くした。が、罵倒が終わる事は無かった。
「へいへい、悪かったよ」
罵倒が酷すぎて、別れようか、と何度も考えたが、いくら罵倒されてもずっと好きだった幼馴染なんだ。簡単に嫌いになれる筈もなく、惰性で付き合っていた。
でも、間違いなく、何かが俺の中に蓄積されていった。
「なんであんたはこんなノロマなのかしらね?遺伝?あんたの妹さんも鈍臭そうだものね」
……そっか、遂に俺の家族まで罵倒するようになっちゃったか。
「……」
「何よ。グズのあんたが私に文句でもあるわけ?」
「……もう、俺達別れようか」
俺の、溜まっていた物が爆発した。
「…え?」
「俺を罵倒するのはいいが家族を貶すのは許さない。もう別れよう。金輪際俺に話しかけるな」
今までの鬱憤を晴らすように言いたいことを全部言い切った俺は、呆然と立ち尽くす麻紀を置いて足早に自宅へ帰還した。
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「ただいまー」
「お帰りぃ、お兄ちゃん」
玄関を開けると、いつもと同じく愛しの妹が出迎えてくれた。
テクテクと玄関まで向かってくるその姿は、どうも高校一年生には見えない。身長が低いのもその一端を担っているはずだ。
二人でリビングに行くと、光は大人ぶりたい年頃なのか、ブラックのコーヒーを飲み始めた。でも、まだ口に合わないのか顔をしかめている。
愛い奴め。
「何かあったの?」
唐突に光が聞いてくる。
「どしてまた」
「なんだか浮かない顔してたからさぁ」
鋭い奴だ。正直、今日の出来事は俺の問題なので、光に話すか迷ったが、結局話す事にした。もしかしたら、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
「……彼女と別れた」
「……麻紀先輩と遂に別れたんだ。罵倒が酷いって悩んでたもんね」
「……あぁ。麻紀、今日お前のことも罵倒してきてな。そこでカチンときちまった」
「嘘……。少しショック。なんて言ってたの?」
「鈍臭いって」
「思ったよりマイルドな罵倒だね。…でも確かによくおっとりしてるって言われるからなぁ」
「確かに光はおっとりしてるがそこは光の美点でもあると俺は思ってる。包容力とかあるしな。褒められはしても貶される筋合いは毛頭無い」
「……シスコン」
心なしか光の顔が赤くなっている。照れているんだろう。
「……でもありがと。私のために怒ってくれて嬉しいな。それで別れちゃったのは少し複雑だけど」
「光は気にする事はないからな。あいつの言動は元々目に余るものだったから」
「……そっか」
そう言って光はコーヒーを飲み干すと、自分の部屋に戻っていった。
明日の学校はあいつと同じクラスだから少し憂鬱だな。
「はぁ……」
俺はため息をついて天を仰いだ。
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