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立川マナ
プロローグ
別れる気はなかった。
売り言葉に買い言葉だった。もう別れる、て言われたから、分かった、て言っただけ。もはや、衝動買いだ。
まさか、君がそのまま出て行ってしまうとは思ってもいなかったから。
俺たち、うまくいってたじゃないか。出会いは合コンだったけど、すぐに意気投合して、半同棲みたいになって。週二のバイトの日以外、君は自分のアパートに帰らなくなった。そうして、一年くらい? 最長記録だった。俺にとっては、一年も続いたのはすごいことだったんだ。それまでは、付き合っても一ヶ月くらいで相手からの連絡がなくなって終わってた。
あの日、何がきっかけで喧嘩になったんだっけ? 君はなんであんなに怒ってたんだ? トイレの便座が上がりっぱなしだった? それとも、服を脱ぎっぱなしで置いておいた? きっと、俺がなにかしたんだよな。それで、君が顔を真っ赤にして、怒鳴り声を撒き散らして、訴えだしたんだ。「いつも、そうだよね!」て。
すごい怒ってるなぁ、て思った。
それから、どんどんヒートアップしてって、ずいぶん前の些細なことまで掘り出してきたから、君の記憶力の良さに感心して「よく覚えてるね」と言ったら、君はもっと怒った。「話、ちゃんと聞いてよ!」て。その勢いで「もう、別れる!」なんて言われたら、「分かった」と言うしかないじゃないか。
なんて言えばよかったんだ?
あれから、もうすぐ一年。未だに、分からない。俺は、どうすればよかった? あのとき、俺はなんて言っていたら、出て行く君を止められたんだろう。
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