ドアと少年
なるこ葉
第1話
ドアと少年
届かない。
背伸びをしても、ジャンプしても指先も触れられない。
向こうに行きたいのに、行けない。
もどかしくてもどかしくて、届かないとわかっていても何度もチャレンジしてしまう。
疲れて思わず座ってしまったら、ドアはもっと遠くなった。
何だかすごく悲しくなって、大声で泣いてしまった。
すると、ドアが開いてお母さんが出てきてくれた。僕を抱きしめて笑っていた。
僕はお母さんに会いたくてドアを開けたかったんだ。
お母さんはぼくをだっこしてドアの向こうへ連れて行ってくれた。
いつか1人でドアを開けて、お母さんに会いに行きたいな。
僕は何度もチャレンジした。
毎日飛んだり、背伸びしたり、道具を使ったりした。いつも失敗した僕をお母さんは慰めてくれた。
大好きなお母さん、大嫌いなドア。
そんなことをしてたことも忘れていた僕は、ドアを開けて部屋に入った。
あの日、ドアを開けても僕の会いたい人はいないと知った。
久しぶりに入った部屋で、僕は大声で泣いた。そんな僕を、お父さんが抱きしめてくれた。
僕たちはドアの鍵を閉めた、もうこのドアは開かない。
次のドアの鍵はいらない。
僕は小さな手を握りしめた。
ドアと少年 なるこ葉 @mandr
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