不治の感情

綿麻きぬ

「冷たい」「昨日見た悪夢」「殺したい」

 僕は不治の感情を抱えている。そう、ずっとずっとだ。

  

 気づいたときにはもうこの感情を抱えていた。倫理的にそれはダメなのは分かっている。でも、でも君の首に手をかけたくなってしまう。

  

 君を殺したい。冷たい君を見たい。そうずっとずっと願ってきた。

  

 それが昨日、達成された。

  

 あくまで夢の中でだが。その昨日見た悪夢は紛れもなく悪夢だ。

  

 僕はなぜか君の家にいた。君と仲良くしゃべっていた。しゃべっていたはずなのに気が付いたら、僕は君の首に手を置いた。

  

「いいよ、私を殺しても」

  

 ギクっとした。これから自分がしようとしていることを察知されて。

  

「大丈夫、何度でも私は生き返るから」

  

 その言葉に僕は安心した。そしてゆっくりゆっくり首を絞めていった。

  

 それに君は体をピクピクさせながら

  

「またね」

  

 と答えた。そこで夢は途切れた。

  

 僕は目が覚めて、ゾッとした。してはいけないことをしたような気がしている。あれほど願っていたのに、いざ達成されてみると恐怖を感じる。

  

 そしてまた夜になった。同じように夢を見た。

  

 気分が悪い。何故だ。あれほど願っていたというのに。

  

 あぁ、現実じゃないからか。なら、今から殺しに行けばいいのか。そう思い立ったら僕は居ても立っても居られなくなって、君の元に向かった。

  

 そして首に手をかける。

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不治の感情 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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