「協会」事件簿 その1 「親の仇は旦那様」
二式大型七面鳥
第1話
「口惜しや……悲しや……」
祖父祖母の寝室から、すすり泣きと嗚咽に混じって、そんな声がした。
夏休みで祖父母の家、父の実家に遊びに来ていたケンタ(小四)は、昼間のスイカの食べ過ぎが祟ったのか、夜中にトイレに行きたくなり、そこそこ広い古民家の縁側から厠に行く途中で、それを見た、見てしまった。
祖父母の寝室の常夜灯、枕元のほの暗い豆電球に照らされ、障子に映る祖母の影。
夏掛け毛布を被ったままなのか、布団から半身を起こしたそれは、まるで魚の如くにぬるりとした輪郭をしていた。
ケンタは、翌朝、何年かぶりに地図を描くはめになった。
聖ルカ病院付属高等看護学院に通う、
身長145センチ体重40キロ、十六歳にしては小さすぎと言えなくもない体格と、染めても脱色した訳でもない割に見事な栗色の髪は、小学校の頃に両親を亡くし、親戚の援助はあれど基本は姉二人との三人姉妹で切り盛りしてきた過去の、栄養不足によるものではないかと教師陣は密かに納得し合っている。
実際、中学の頃から法的・倫理的問題にグレーな領域で「近所のお店のお手伝い」に励んだ結果か、看護学校の実習という名の病院の下働きでは、小さな体からは想像しがたいパワーと、小さい故かのスピード、そしてスタミナを兼ね備えたフィジカルエリートとしてベテラン看護師からも一目置かれる存在となっている。
体力的な意味では、それもそのはずである。
何故なら、蘭鰍は半分は人狼であるからだ。
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