第22話 こぼれ落ちた真実
「和樹、頼みがある」
「どうした急に」
「……勉強教えてくれ」
「この前も同じこと言ってたよな」
「あれはあれ。これはこれだ」
「さいですか」
期末試験が3日後に控えた放課後、和樹と真治はテスト勉強をするべく、ラーニングスペースへ向かっていた。
和樹は学業に関しては復習、予習ともに怠けることは基本的にないので、苦手教科である数学を除けば見直しをすれば対策には事足りている。
しかし、真治においては、よく言えば部活一筋、悪く言えば学業はからっきしなので、下手すればテストの点数が真っ赤に染め上げられかねないのである。
「ちなみにどれぐらい対策したんだ?」
「日本史と数学は大丈夫だけど、それ以外は全くしてない」
「……中間試験のクラス内順位は?」
「3番目」
「上から?」
「もちろん下から」
和樹の質問に対して真治は「どうだ、凄いだろう」と言わんばかりに胸を張って得意げに腕を組んだ。
その堂々たる態度に、和樹は呆れるように嘆息した。
「……なぁ真治、少しは焦ろうな?」
「これでも精一杯焦ってるんだぜ? 今回赤点1つでも取ったら由奈と別れろって親から言われてるし」
「なら、俺が手伝わないほうが真治のためになるんじゃないか?」
「待ってそれだけは勘弁! 唯一の希望を俺から奪い取らないでくれ!」
必死に
基本苦手なことにはやる気を出さない真治ではあるが、やはり彼女である由奈との交際の続行が危ういとなると話は違うようだ。
その後、ラーニングスペースに到着した和樹と真治は、運良く空いていた2席を確保し、それぞれの勉強を始めた。
「和樹、この接続助詞の意味ってなんだ」
「上が已然形だろ。その文だと順接の確定条件になるから『〜ので』って訳せばいい」
「なるほど。あ、続けてで悪いがこれも教えてくれ。この文の敬意の方向って誰からなんだ」
「会話文じゃないから作者から」
「はへぇー。意外と簡単だな」
他の勉強している生徒に迷惑にならない程度の小声で、和樹は真治の勉強の手助けをしていた。
今の時点でそこが分からないのは危ないのではないか、と何度も感じながら分かる範囲を可能な限り丁寧に説明して、納得してもらう。
しかし、不幸中の幸いか、真治のノートのまとめ方や整理の仕方は和樹よりも上手なので、一度教えれば覚えてくれる。そのため、順調に学習を行うことが出来た。
「すまん真治、ここ分かるか」
「これなら場合分けだな。範囲が出てるならドン、カッ、バーンって頂点を出して、代入して最大値、最小値を求めればいい」
「……そのドン、カッ、バーンってなんだ」
「なんだって言われても、ドン、カッ、バーンだろ。それ以上もそれ以下もない」
一方、和樹が質問してもまともな返答が返ってくることはなかった。どうしてだ、と聞けば「どうしてもこうしてもあるか」と怪訝そうな表情を向けられる。
かと言って、それが全くヒントにならないわけではないので、穴埋めパズルをする感覚で問題に取り組めば、多少なり解き方を理解できるものもあった。
その後も和樹と真治は、何度か質疑応答を繰り返しながら、最終下校時刻15分前のチャイムが鳴るまで熱心にテスト対策を取り組んだのだった。
─────。
「あぁー、疲れたぜぇ」
「お疲れ様、真治」
「和樹もな」
靴箱で靴を履き替えながら、和樹と真治は座り続けて凝り固まっていた体をぐぐっ、と伸ばしていた。
「和樹、今日は放課後特に用事ないよな?」
「あ、悪い。今日は少し買い物を」
「そか。テスト対策手伝ってくれたお礼に荷物持ちぐらいなら手伝うぜ?」
「ありがとう。でも、別にそこまで買うわけでもないし大丈夫」
「りょーかい。それじゃ、また明日な」
そう告げると、真治は校門へと向かっていった。
やがて真治の姿が見えなくなると、和樹はポケットからスマホを取り出し、時刻を確認する。
「18時30分か……」
和樹が今日買い出しをするスーパーマーケットでは、19時30分からタイムセールが始まる。
走れば間に合うかな、と呟きながら、和樹は急ぎ足で買い出しに向かった。
〘あとがき〙
※飛ばしていただいても構いません
どうも、室園ともえです。
今回も読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
今週は何があったのか以前とは比較にならないぐらいにPVが増えていました。本当に謎です。
作品フォローは少なくとも200人は増えたと思います。理由は分からないですが、ありがとうございます。
(……両片思いに需要があるのかな?)
相変わらず週2投稿というノロい執筆ペースではありますが、その分内容は重厚に(多分できてない)なっておりますので、ぜひ次回も楽しみにしてくださると嬉しいです。
もしよろしければ、感想やフォロー、★評価や応援など、お願いします。
次回は明日投稿予定です。
それでは、また。
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