敵と味方の間で

 ディーンは三号機と四号機が自機に続いて来るのを見て、両目を見開き驚いた。


「Land, Mira! Why are you here!?」

「Ha! You're unreliable so we're come to help you」


 呆れ声で答えたランドに、ディーンは怒りの声を上げる。


「What!?」

「It's a fact. At least, we two think so, and Warren too. In other words, all of us without you」

「Don't meddle in my way!」

「So we're unreliable just the way!」

「I'll persuade her!」

「Persuade? Unbelievable! Huh, are you sane?」

「Whatever, don't disturb me!」

「What the hell, you have no chance!」


 無益な口論を続ける二人にミラが高い声で警告する。


「Land, move away! The enemy approaching!」


 それまで逃げていた五号機が宙返りから攻勢に転じ、アージェントランスを構え、炎の矢となって上空から二号機と三号機を襲ったのだ。

 ランドの三号機は僅か数メートルの差で回避に成功したが、ディーンの二号機はランスで胴を貫かれた。


「Soya!? Soya, you...!! Ooh, shoot! Thrusters are dead!?」


 そのまま二号機は玉突きの様に弾かれ、地上に突き落とされる。背面のスラスターが衝撃で故障して上昇できない。

 ランドはソーヤがディーンを撃墜した事に驚愕した。


「Merciless...」

「Look who's talking. You willingly made our enemies, didn't you?」


 ソーヤは皮肉を込めて言い返すと、ランスを三号機と四号機に向ける。彼女の適合者としての能力は、ランドやミラを上回っている。もしかしたらウォーレンよりも上かも知れない。



 一方、まだ純真はウォーレンに追われながら、雷山を追い続けていた。

 単純な機動力では雷山がビーバスターを上回っている。数も一機や二機ではない。更にウォーレンに妨害されながらなので、そう簡単には雷山を捕らえられない。

 雷山は確かにエルコンを搭載した最強の戦闘機だ。高機動力、高火力、高速演算能力、高度情報処理能力、四つの最高を極めた存在。しかし、あくまで既存の戦闘機の中で最高というだけ。ビーバスターに搭乗する適合者の能力次第では勝てる。

 だが、雷山もこれまでの戦闘データを元に、純真の能力を解析している。純真が発生させるエネルギー吸収フィールドの範囲内に入らない様に計算して移動する。複数機が常に純真の視界に入る様に行動して撹乱し、狙いを絞らせない。

 仲間のソーヤはランドとミラに対応している最中で、純真の応援に駆け付ける余裕は無い……。


 焦りの中で純真はエネルギー生命体の力の新たなイメージを思い浮かべていた。エネルギー吸収フィールドの範囲を狭めて、指向性を持たせる。以前ウォーレンの乗る一号機を攻撃した時よりも、もっと


(やれる! できるんだ!)


 純真はランスが伸びるイメージで、機体の右腕を雷山に向けて伸ばした。


「伸びろーっ!」


 アージェントランスの先端から不可視の槍が光速で伸び、約百メートル先の雷山のエルコンを貫いて、エネルギー生命体を吸収する。外傷こそ見られないが、エルコンの中枢を失った雷山は失速して地上に墜落した。

 これを見たウォーレンは歯噛みする。


「The monster...! Heh...? W...what's this?」


 直後に彼は自らの両手の震えを自覚して動揺した。怒りとは異なる、胸の奥から湧き上がる様な震えの正体は……。


(A...am I afraid!? What's the matter with me? Unallowable! I absolutely don't understand it!)


 彼は自らの内から生じた感情を必死に否定した。純真を脅威だとは認めていても、恐怖心を抱いているとは認められないのだ。

 そうこうしている間にも、純真は雷山を次々と不可視の槍で捉えては落とす。槍の最長延伸距離は三百メートルにも及ぶが、それが限界とは限らない。ソーヤと対峙していたランドとミラも、純真の新たな力の覚醒を感じ取って恐怖していた。

 都市の破壊は不十分だが、ここが引き際と考えてウォーレンは声を絞り出す。


「A...all units, draw off...draw off!!」


 彼の指示に合わせて、全機が撤退する。その背に純真は狙いを定めたが、もう届かないと感じて追撃は諦めた。

 戦闘が終わり、小さく息を吐いて脱力した純真に、ソーヤが声をかける。


「純真! ディーンを回収したいんだけど、良い?」

「ディーン?」

「彼は味方になってくれると思うの」

「分かった。手伝うよ」


 ビーバスター五号機と六号機は、墜落した二号機ごとディーンを回収してサイパン島に帰還する。二号機は全く動かないという訳ではなかったが、ディーンは移動中も抵抗しようとしなかった。

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