アイスを買いにコンビニへ行ったらトラックに撥ねられて超能力者に生まれ変わった私

鴻桐葦岐

第0話 アイスを買いにコンビニへ行った私

 八月。

 夏も盛りの夜は湿度と熱を孕んで生温い。そんな中、私は自転車を漕いでコンビニに向かっていた。

 突如としてアイスが食べたくなったのだ。

 私が住むのは田舎の為、コンビニに行くのも一苦労。徒歩だと十分はかかる。

 その道程を自転車で数分に短縮した私は、無事自動ドアを潜り、冷房でキンキンに冷やされた店内へと入った。

(は~天国かよ……)

 汗をかく程では無いが、暑く湿気った中を来た私には冷えた店内はまさしくそれだった。

 店内を真っ直ぐ進んで奥のアイス売り場を眺める。明日は私の誕生日。少し奮発して、ダッツを買おうか。それとも安心安定のMOWのバニラか、はたまた定番中の定番雪見だいふくか。

 迷いに迷って、私はダッツの期間限定品を掴み、レジへ向かった。

 夜、それも田舎のコンビニとあって客は私しか居らず、すぐに店員が商品のバーコードを読み取り、値段を告げてくる。私は財布を取り出してお金を払い、袋に入れられたアイスとお釣りを受け取って店を出た。

 自転車で自宅へとむかう。

 明日は二十歳の誕生日。

 酒やら何やらが解禁となる記念すべき日。

 大学は夏休みでお金の許す限り何でもやり放題!(犯罪は除く)

 私はうきうきで、気付かなかったのだ。

 信号が青は渡れ、赤は止まれ。そんなの幼稚園児だって知っている。

 なのに、その信号を無視して、私に突っ込んで来る存在がある事に、気付けなかったのだ。

 キキィ、と云う耳障りなブレーキ音。どん、と云う激しい衝撃。空を舞うアイスの入ったビニール袋、そしてアスファルトに横たわる自転車と私。長い黒髪が無造作に散って貞子の様だ。

 誰かが駆け寄って来る。必死に何かを叫んでいる。けれど私は、それを聞き取る事無く意識を手放す。

 不思議と痛みは無く、最後に思ったのは、(あ、アイス……)と云う、何とも間抜けなものだった。

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