彼女が導く非日常な毎日。
柊 黒奈
プロローグ
「ほら桂馬くん、力を抜きたまえ。なに、痛いのは最初だけだから。」
普通の学校、普通の部活動ならば絶対にありえない光景だ。だが残念なことに目の前にいる人は非常識の塊のような人だ。それは今日初めて出会った俺でも分かる。
そもそもどうしてこうなったのか。なぜ俺は椅子に縛られ怪しい液体を飲まされそうになっているのか、話は今日の昼まで遡る。
俺、水無月
しばらく学校内を探したが見つからず、さすがにパンはもう売り切れているだろうと諦め自分のクラスに帰ろうと後ろを振り返った時、ソレらは落ちていた。具体的に言うと最近人気の鬼と戦う某マンガ本とか、最近発売されたどうぶつ達とほのぼの暮らす某人気ゲームとか、はたまた口上がやたらとカッコイイ某人気カードゲームの構築済みデッキとかだ。
夢でも見ているのかと思い自分の頬をつねってみる。じんわりとした痛みが右の頬を襲う。残念なことに、どうやら現実のようだ。
うん、どう考えてもこれはおかしい。新しく入学した如月高校は至って普通な進学校だったはずだ。
だが何故だろうか。今、目の前に拡がっている光景はおおよそ平凡とはかけ離れた非日常的な光景である。しかもそれらはどこかへと誘導するように奥の教室にへと続いている。罠に掛けようとしているがごとく……。
「・・・行ってみるか。」
友人と空腹を訴える俺の腹には悪いがこういう時の興味心には抗えない。そんな訳でそれらを拾っていくことにした。決して落ちてるものが欲しいとかいうしょうもない理由では無い…。・・・ないったらないのである。
そして道中に落ちていた様々なものを拾っていき、いよいよ最後に落ちていた某ライトノベル作品を拾……いや、これはまさか……、いや、この際気にしないことにしよう。今は目の前にある扉の先に何が待っているかの方が気になる。
手に持っていた様々な道具やら何やらを一旦地面へと置き、その扉に手をかける。目の前の扉には可愛らしい文字で『科学部』と書いてある。
(さぁ、鬼が出るか蛇が出るか…。いざっ!)
扉に手をかけ一気に開く、と思った次の瞬間、扉が勢いよく開いた。
「うわっ!!?」
思わず勢いよく後ろに飛び下がる。バランスを崩さなかったのは幸いだ。
そして目の前に現れたのは美少女だった。
腰まで伸びた銀髪に眼鏡をかけ、いかにも物語なんかに出てくる才色兼備の風貌を漂わす美少女は、こちらを見るなり一言。
「やっと1人目が釣れたぞ!!!」
・・・美少女だけどちょっと残念な人の気配がした…。
「そんな訳で、私は如月 香澄(きさらぎ かすみ)、2年生だでここの部長をやっている!」
ドンッ!!と誇らしげに胸を張る。が、悲しきかな。ソレは無に等しい絶壁であった。
「今なにか失礼なことを考えなかったかい?」
「・・・そんな事ないです。」
「…その不自然な間は気にしないことにして、それで君の名前は?どうしてここに?」
無理やり部屋へと連れ込まれてからの唐突な自己紹介からの質問攻め、無茶苦茶である。ちなみに食事の途中だったのか机には食べかけのカロリー○イトと飲み物が無造作に置いてある。
「えっと…1年の水無月 桂馬です。ここには道に落ちてたゲームやら何やらで釣られて来ました。」
「あ〜確かにそういえば仕掛けたままだったね〜…。どうりでさっきからゲームが見当たらないわけだ…。」
「おいコラ。」
すっかりマイペースな先輩こと、如月はそういうと廊下に置いてきたゲームやらなんやらを全て持ってきて
「それで君はどれに釣られてやってきたんだい?」
いかにも興味津々な目でこちらを見てきた。
「そうですね…一応全部知ってはいますけど・・・」
これでも桂馬は様々なものに手を出すタイプの人間でまぁ世間一般的にはオタクに分類されるゲームやらライトノベルやらも幅広く嗜んでいる。まぁそれ以外にも理由はあるがそれはここでは明かせない。
「強いていうならこれですかね?」
ゲームやらなんやらで溢れかえった中に1冊だけ異彩を放つ本が1つ、『化学辞典』だ。それ以外はどれもこれも娯楽関連なのだがこれだけはそもそもジャンルからおかしい。いや、普通の科学部ならあるのかもしれないが…。
「これだけなんかジャンルが違って不思議だったんですよね。」
「なるほど……よし、おめでとう!君は今日から科学部の一員だ!!」
少し考える素振りをした後に一言、とんでもないことを言い出した如月先輩。何がおめでたいのかは分からないがとりあえずこれに対する答えはもちろん
「丁重にお断りします。」
「なんでっ!?」
こんなふざけたやり取りが如月先輩との初めての出会いだった。
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