掌握寄せ集め

空付 碧

絶対的な可能性なんてない。

 絶対的な可能性が特定するものなんて、知れ渡っている。

 

 例えば、たばこを燃やせば灰になり、煙となって消えていくくらいだ。

 どうしようとも、登って行った煙は、取り返しはつかない。

 

 私のベランダでタバコを吸う男を、私は許せはしないだろう。

 彼がしでかした事は、私を裏切り、許せはしないのだ。

 けれど、それすらも絶対的ではない。彼が、何かしらの動きを見せて、勘違いをさせようものならば、私は許してしまうかもしれない。

 そう思って期待をしているから、彼は私のベランダにいるのだ。


 彼が今晩決断することが、私の最後の審判だ。私が自分の心に、ナイフを立てているように、この男にナイフを刺す準備も整える。

 それしか、私にできる絶対的なことでしかない。


 それでも私はおそらく、この男を許すだろう。

 私の感情は、灰になって燃えるのだ。

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