第4話


スキルはわかるの。

おそらく、落ち着いたら連絡するように。っていう意味だよね、運営さんからの。

なにせ向こうはまだ実験が成功したかどうかわからないのだ。

うん。これが終わり次第すぐに連絡しよう。


だけど、レベルはなんでだろう。

確かにレベル1だったはずなんだけど…適性試験を受けて気絶していたらあら不思議。レベル3になっているではないか。


「どうしたんだい?嬢ちゃん。」


腕輪を見つめていたのを不思議に思ったのかグレンが聞いてくる。


「レベルが3になっていて、ステイタスも上がっているので驚いて…」

「あ~、そりゃあ俺相手に戦ったから経験値が一気に入ったんだろ。良かったじゃねえか。」


あー、なるほど。

レベルが上の相手と戦えば、それだけ経験値が多くもらえるあれですね。

倒すことでもらえる経験値とは別の、経験を積むことで手に入る経験値はほかのゲームでもよくある機能の一つ。そうしないとキルパクが大量発生しかねないから。


「ま、もう大丈夫そうだから俺は戻るわ。レベル3ならランクEのクエストを初心者でも簡単にこなせるだろ。この部屋を出てくのは準備ができてからでいいからゆっくりしてな。」

「ありがとうございます。」


お礼を言うと、グレンは右手を軽く上げることで反応して退室した。


「それでは、頑張ってくださいね。」


それだけ言うとミラもグレンの後を追って退出する。

部屋を出る時に振り返って礼をするのを忘れないのはさすがだね。


二人がいなくなったのを確認してから、私は新しいスキルであるコールを発動した。

スキルの発動の仕方はもうわかりましたよ。イメージするだけですね。

しばらくして通信が繋がる。


『あー、聞こえていますか?』

「はい。聞こえます。連絡が遅くなり申し訳ございません、先生。」


相手は先生。私の主治医であり、ⅤRMMOのゲームをおしえてくれた人でもある。また、精神転生の実験の協力を持ちかけたのもこの人だ。


『つながったのなら安心だ。実験は成功だね。協力してくれてありがとう。』

「いえ、どうせ死ぬ運命でしたから。まだ私としていられるというのがとてもうれしいです。」


これは私の素直な気持ち。


「ところで、その…」

『ん?…あぁ、親御さんもいるよ。変わろうか』

「はい。お願いします。」


こうして、実際には短かったけど、とても久々に感じる家族との再会を果たした。


~~~


『それで、もう一人客がいるんだが、いいかな?』


両親との再会を堪能した後、先生が告げる。


誰だろう?

ほかに知り合いなんて心当たりがないけど、とりあえず頷くか。


『はじめまして。私はこのゲームの開発担当責任者の三上みかみと申します。』


三上の話を要約すると、テストプレイヤーになってほしいとのことだった。

つまり、実際にプレイしてみたプレイ状況やゲームバランス、お問い合わせなどにあがらないプレイヤー目線の要望など。


『簡単に言えば監視役でもあるね。常時じゃなくて、何かあればこのスキルを使って報告してくれればいいよ。その代わりと言ってはなんだけど、テストプレイヤーを引き受けてくれるならお礼に特殊スキルをあげる。もちろん、受けなかったからといってコールスキルはそのままだから安心して。』

「やります!」


考える時間なんていらないです。なにせこちらには不利なことなど一つもないのだから。


『そっか、よかったよ。特殊スキルは[無属性魔法]だ。使い方はコマンドからヘルプを見てくれ。

それじゃあまた、これからよろしくね。ゲームの発売日は5日後。こっちの一日がゲームの世界の3日だから、君でいう半月後だね。それまでNPCしかいないが、まぁ、楽しんでくれることを期待しているよ。』


そこで連絡は途絶えた。

ふぅ、無意識に緊張みだいだ。私ははベットから起き上がり姿勢を変えて座りなおす。


「コマンド」


唱えると視界にメニュー画面が映った。

どうやら検索機能や、SNSも使えるらしい。

連絡機能はプレイヤーメニューと同じかな。ありがたいことに、既に連絡先に家族のアドレスが入っていた。


[ヘルプ]無属性魔法とは、本来スキルがないと扱えないコマンドや念話、それから探知、マップなどが扱える。また、自分のステータスの割り振りを自由に変えられる。無属性スキルを自由に扱うことが可能となる。


まさにチートだね。

だってこれがあればスキル全持ちとほぼ変わらないじゃん!!いや、自動で発動されるスキルも自分で発動しないといけないけどね??それだけじゃん!


ちなみにと言っても、探知スキル常時発動しておけば自動発動と何ら変わりない。


興奮が収まらないまま部屋を飛び出し、再び受付へと向かう。

今度はクエストを受ける為。早く試したいからね。


「ミラさん!クエストの発注をしたいのですが、何かいいクエストありませんか?」


勢いよく走ってきた私を見て、ミラさんはクスリと笑う。


こういうところを見ると本当に人間みたいだよね。

というか、本当にNPCなの?って疑ってしまうほど自然な言動にまたもや感心してしまったよ。


「それでは、シンプルにダンジョン攻略がオススメですよ。ダンジョンから溢れないようにするためにモンスターの討伐をするだけなので単純ですし、失敗もありません。討伐したモンスターは自動的に冒険者の腕輪に記録されるので、それ相応の報酬がもらえます。レベル上げもできて一石二鳥ですよ!ドロップアイテムも自動で腕輪に回収されますよ。」


なるほど。腕輪にはアイテムボックスの機能もあるのか。


「じゃあそれでお願いします!」

「はい。受注しました。私たちは貴方様の活躍を期待しております。」


最後の言葉はそう言うルールなのだろう。よくあるやつだ。

私はギルドを出るとその足でダンジョンへ向かった。

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