消化した人生の先へ

Edward

Prologue

大好きな人が傍に居てくれるというのは嬉しいものだ。


家族でも恋人でもそうだが、基本的に人は生涯において愛に飢える事は無いと思う。


愛だけでなく、嫌いな人も環境によっては必ず居る事になるだろう。


でも、自分は人を好きになる事も嫌いになる事も無かった。


文字通り、そうなのだ。


この環境を喜ぶ事も当然のように無ければ、憂う事も無いのだ。


そんな自分は何もせず、何も感じずに死んだ。


殺された訳ではないが、殺されたとも言える。


死ぬ瞬間に思い出せた事は、生まれた瞬間に見た太陽のような母親の笑顔だった。


自殺という手段が思い付かなかっただけなのかもしれないが、気付かぬ内にそれを寄る辺にしていたのかもしれない。


いつかは会える、ではなく絶対に会う、だった。


それは可能性や祈りでもなく、決意の表明なのだ。


この人ならざる世界で自ら死ぬという道ではなく、この世界で生まれた自分の運命と敵対する決意。


いや、今ならそう言えるが俺は薄々それを感じていた。


結局会えなかったな、と安らかな顔をして死んだんだと思う。

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