第21話


 王都に向かって、私たちの馬車は街を出発した。

 父と母は……なんだか私たちに気を遣ってか、別の馬車に移動してしまった。


 ……まったくもう。

 昨日の夜の出来事を思いだし、少し照れ臭くなってしまったが私はそれを表情に出さないようにしていた。

 

 ルフェルは……なんだか余裕そうだったし、変に意識してしまっていると思われたら恥ずかしいし。

 私が膝にのせたフェンリルの背中を撫でていると、再び馬車が止まった。


「また、魔物かしら?」

「たぶん、そうだと思うね」


 ルフェルが小さく息を吐いてから、馬車の外を見た。

 馬車の進行方向には、ルフェルの言った通り魔物がいた。

 ……結構な数だ。


 私はじっと遠くを見ながら、戦闘準備を整えている騎士たちを一瞥した。

 それから、抱えていたフェンリルとともに馬車の外に出た。


 すでに魔物たちを迎え撃つ準備をしている騎士たちに向けて、私は精霊魔法を発動した。


「『アタックプロテクション』『バリアプロテクション』」


 その二つを受けた騎士たちは、みるみる表情を変える。

 こちらを見た騎士たちがすっとお礼をするかのように頭を下げてくれてから、魔物を見据える。

 向かってきていた先頭の魔物と騎士がぶつかり、その魔物を切り倒した。


 ……戦闘は騎士たち有利で進んでいく。私も精霊魔法に慣れてきたので、攻撃魔法で援護しようかなぁ? なんて思っている間に、戦闘は終わってしまった。


「……本当に助かるね、キミの魔法は。怪我人が出なくて助かったよ」


 ルフェルが嬉しそうにこちらを見ている。


「いえ……このくらいは。結果的に護送してもらっているのだから、私もできることをしないといけないと思っているだけよ」

「そのできること、の範囲が凄いんだよ」


 ルフェルが微笑み、それを見て私も嬉しくなる。

 こうやって、誰かを笑顔にしたくて、私は一生懸命精霊学園に通った。

 それが今こうして実現していることが嬉しかった。


 と、その時だった。



「……まだ魔物いるよ」



 フェンリルがぽつりとつぶやいた。

 え? でも、周囲には何もいないけど――。そう思ったときだった。

 ルフェルもまた警戒するように周囲を見て、腰に下げていた剣に手を伸ばす。


 と、その時だった。ぴくり、とルフェルとフェンリルが反応した。


「下だねっ」

「地中だ! 全員気をつけろ!」


 ルフェルが怒鳴るようにそう叫んだ次の瞬間、大地が揺れる。

 私も遅れて状況に気づいたとき、ルフェルが私の体を抱きかかえるようにして、大きく飛んだ。

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