第11話

 


 ルフェルの告白に、思わず頬が熱くなる。私はそれでも、一度咳ばらいをして、笑みを浮かべた。


「……それで、私の保護のために動いてくれていたのですか? 私の罪状は聞いているんですよね?」

「たとえそうだとしても、オレは構いませんでしたよ。オレはただ、あなたに惚れたんです。あなたが普段どれほど努力しているのかを、良く聞かされていました。とはいえ、相手が王子でしたのでさすがに声をかける機会もないとおもっていましたが……今ならばよいかと思いまして」


 悪戯っぽく微笑む彼に、私も苦笑を返した。


「それで、これから……えーっと私たちを保護してくれるということでよいのでしょうか?」

「はい。あなたと、あなたのご家族を私の家で保護しようと考えています。もちろん……あなたがここに残るというのであれば、お話は別ですが……そちらのフェンリル。この国を守る精霊……ですよね?」


 ルフェルは驚いた顔でフェンリルを見ている。

 今は私に頭を撫でられて喜んでいるこのフェンリルは、彼の言う通り本物の精霊だ。


「はい……」

「やはり、そうですか……ま、まさかそんな凄い精霊と契約をしてしまうなんて。さすが、アルフェア様ですね」

「そんなことありませんわ。……とにかく、状況は理解しました。ルフェル様には、家族の保護を宜しくお願いします」

「わかりました。これからおひとりで城に向かうつもりでしょうか?」

「……はい。そうですね。フェンリルとともに、私のケジメをつけに行きたいと思います」

「そうですか。無理をなさらないようにしてください。我々は王都の外であなたの帰りをお待ちしていましょう」


 これで、家族の心配はなくなったわね。

 これなら……ある程度、自由に動いても大丈夫よね?


「フェンリル、行きましょうか」

「うん」


 フェンリルとともに私は屋敷を出て、連れてきた騎士たちとともに王都へと向かった。


 〇



 馬車はすんなりと城へと入っていく。

 元々、城から派遣された馬車だったのもあるだろう。

 そして、庭についた私が外へと出ると、城に常駐していた騎士たちが驚いたようにこちらを見てきた。


「な、なぜおまえがここにいる!?」

「王子に面会をさせてください」

「ダメに決まっているだろう! 罪人が!」


 と、私の隣でフェンリルが騎士に一歩詰め寄った。

 騎士は剣に手を向けながら、フェンリルを睨んでいた。


「……ちょっと待ってよ。罪人っていうけど、精霊と契約できなかったから、ってことだよね?」


 フェンリルが声をあげたことで、騎士は一瞬驚いたようにしながらも、すぐに声を荒らげた。


「そ、そうだ……王子をだましていた罪は重いぞ、アルフェア」

「僕が精霊だから」

「は?」


 騎士が首を傾げたときだった。フェンリルは姿を巨大な狼へと戻した。

 騎士は目を見開き、腰を抜かし、がたがたと震えだした。

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